アメリカン・スナイパー/(映画)
- 2015/07/17(Fri) -
1507_アメリカンスナイパー

 戦争を美しく語るものを信用するな、彼らは決まって戦場に行かなかった者なのだから。(クリント・イーストウッド)


 遅ればせながら、クリント・イーストウッド監督作品である『アメリカン・スナイパー』をオンデマンドで鑑賞。

 WWⅠを描いた『西部戦線異状なし』からイラク戦争が舞台の『ハート・ロッカー』まで、戦場体験の過酷さを描いた映画には名作が数多いが、本作もそれらと並び映画史に残る作品となることは間違いないだろう。

 帰還兵と心的外傷後ストレス症候群(PTSD)の問題は、古くはシェル・ショックや戦争神経症への対応として始まり、ベトナム戦争後、米国精神医学界で本格的に研究されるようになった。

 日本でも、PKOやPKFが実施されるようになって以降、紛争地から帰還した自衛官のPTSDや、それに伴う自殺数の増加が問題となっている。


 1992年、私はアラスカのユーコン河流域を1ヶ月ほどぶらつき、その後グレイハウンドでポートランドからL.A.まできままな旅をしたのだが、この旅で初めて親しくなった友人が、ベトナム帰還兵であった。

 当時、すでにベトナムからアメリカ軍が撤退して19年が過ぎていたにもかかわらず、彼はいまだに定職に就かず酒びたりで米国各地を放浪していた。

 アンカレッジの安宿で、ブコウスキーよろしくだらだらと酒を飲みながら2日間ほど共に過ごしたのだが、彼の語るベトナムでの戦争体験が、私が始めて接したリアルな戦争のよすがであり、「veteran」という言葉が、退役軍人を意味することを初めて知ったのも、このときであった。


 昨日、安全保障関連法案(安保法案)が、衆院本会議で可決された。

 (了)
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ATG的昭和世界/(映画)
- 2015/06/26(Fri) -
 先日、某KO大学でルーチンのインタビューをした際、カメラマンのOさんと黒澤映画の話で盛り上がった。

 Oカメラマンは私よりも半世代かひと世代上の人だからか、「黒澤の『どですかでん』とか見ると、子供のころ過ごした昭和の景色のイメージを感じるんだよね」と話していた。

 そういう意味では、私が自分の少年時代(昭和40年代後半から50年代)を感じるのは、ATGの映画の数々だ。

 なかでも名作の誉れ高い『祭りの準備』や『遠雷』などを見ると、昭和時代の地方特有の閉塞感ややりきれなさを、とてもリアルに感じることができる。

祭りの準備
▲『祭りの準備』。1975年製作・公開。黒木和雄監督、江藤潤主演。昭和30年代の高知県中村市(現:四万十市)を舞台にした脚本家中島丈博の半自伝的作品。芳雄ちゃんの小汚さがいい。ラストシーンの「ばんざ~い! ばんざ~い!」にぐっとくる


 あの汗臭さというか、ねっとりとした人間関係とか、性しか関心のない田舎の生活のつまらなさとか、それらの総体としてのある種の「湿気」が、いかにも昭和の地方なんだよな・・・、などとと感じるのである。

 若いころは、こうした昭和の田舎特有の湿気的世界が嫌で嫌でしょうがなかった。さりとて、「オラ、東京さいくだ」というほど東京への憧れもなかった、というかそういう「東京にあこがれる感性」そのものが、湿気にまみれたイケてない生き方だとも思っていた。

 結局、学校を出て就職した某アルソックを辞めて、ユーコン河やタクラマカン沙漠、パミール高原など海外の辺境をほっつき歩く生活をはじめたのも、こうした日本の湿気的世界が嫌で、浅井慎平風に言えば「乾きたかった」からなのだ。

遠雷
▲『遠雷』1981年製作・公開。根岸 吉太郎監督、永島敏行主演。都市化の波が押し寄せる東京近郊の農村地帯を舞台に、トマト栽培をする青年の姿を描く。石田えりの真っ白い下着のイケてなさが、昭和を切なく感じさせる。ま、そういう時代だったんだよ、バブルの前の昭和ってのは


 ところが五十路も目の前にならんとする今、改めてこれらの作品を見ると、なんだかそこに描かれる湿気や閉塞感、イケてなさがとても懐かしいのである。

 そこには、私が少年時代をすごした昭和の風景と匂い、あの湿気のある世界がそのままに残っている。郷愁とは、いつも優しいものだ。


 ま、私も年をとったということか・・・。

 それにしても、『竜馬暗殺』、『祭りの準備』、『遠雷』、『田園に死す』を立て続けに見ると、さすがにお腹いっぱいになるね。

 昭和は遠くなりにけり。

 (おしまい)

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Rock 'n' Rollの御伽噺/(映画)
- 2015/03/02(Mon) -
 むかし、むかし、あるところで、黒ずくめの悪~いバイク乗りが、ロックの歌姫をさらい、平和な街を荒らしたんじゃ。
 
 ところが、その歌姫の昔の恋人だった流れ者が、街に帰ってきたんじゃよ。

 そしておとなしい街の人々も、銃を手に平和のために立ち上がったんじゃ。

 いつの時代も、暴力で、自由を奪うことなどできないのじゃよ。





 それから28年後。

 流れ者は再び街に戻ってきた。そこで恋人と同じ歌を、娘が歌うのを見守っていたんじゃ。




 お若いの、これが20世紀の、本物の男ってもんなんじゃよ。

 (おしまい)
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6月の映画短評/(映画)
- 2014/07/13(Sun) -
 6月って・・・、何の映画見たんだっけ・・・、というぐらいボーっとしていた。

 歳はとりたくないものですな。


【評価】
★★★(必見)
★★ (まずまず)
★  (ヒマならどうぞ)
(初) (初見の作品)

■『ゼロ・グラビティ』/★(初)
 今、この文章を書くまで、主演はヒラリー・スワンクだとばかり思っていたのだが、サンドラ・ブロックだったのだね・・・。ちなみに私は、西郷輝彦とあおい輝彦の区別が、いまだにちょっとあいまいだ(爆)。シチェーション一点もので、最終的にヒロインが生還できることは最初から分かっているだけに、この手の映画は3Dで映画館で見ないと意味がないかも。

■『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』/★★(初)
 原作小説の大ファンとして、映画の第一作目は、札幌と埼玉の映画館で二度鑑賞。第二作目も、安定のできばえ。古きよき昭和の映画を彷彿とさせる絵作りが微笑ましい。小説とはまた一味違った、役者とキャラクターとのマッチングも安定してきた。次はぜひ、『消えた少年』を映画化してほしい。

■『スノーピアサー』/★(初)
 永久機関の列車の中で生きる人類の、階級闘争という設定がユニーク。車両の扉を開けるごとに、新たなステージが現れるというのは、「バイオハザード」風のゲーム的感覚か。『ナルニア国物語』シリーズの白い魔女でおなじみ、ティルダ・スウィントンの怪演は必見!

■『県警対組織暴力』/★★
 監督・深作欣二、主演・菅原文太&松方弘樹という設定がすべてを物語る、東映実録ヤクザ映画の一本。情婦の池玲子に挑みかかる弘樹の、「ドォー!、ドォー!」には爆笑。70年代って、こういう時代だったんだよなと、しみじみ思う。ラストの弘樹&文太の惨めな死に様と、のうのうと社会の上層で生き残る梅宮辰夫のラジオ体操風景が対照的。

番外
■「春風亭小朝独演会」/★★★
 この人には、なんとなく「金髪豚野郎」(海老名泰葉談)というイメージがあり、またどちらかというと軽薄な芸人のイメージがあって敬遠してきたのだが、落語に造詣の深い友人から、「一度、高座に行ってみるべき!」と勧められて独演会へ。いやはや、先入観で敬遠していた私が馬鹿でした。意外なほど気っ風のいい江戸言葉といい、洒脱なくすぐりといい、脱帽です。

 (おしまい)
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5月の映画短評/(映画)
- 2014/06/12(Thu) -
 5月も多忙で、あまり映画を見られず。

 しかし、親しい人の勧めで見た初見の2作がよい作品でだったので、数を見られない分を補って得した気分。とくに『ハリーとトント』は、この先もなんども見るだろうなと思う、良質のロードムービーだった。


【評価】
★★★(必見)
★★ (まずまず)
★  (ヒマならどうぞ)
(初) (初見の作品)

■『ハリーとトント』/★★★(初)
 40年も前の作品ながら、ここで描かれる、老い、家族、孤独、死などは、2014年の日本にダイレクトに通じる重いテーマだ。NYからシカゴ、そして西海岸を目指す長い旅路のなかで、ハリー老と愛猫トントの前を、さまざまな人々が通り過ぎて行く。あくまでサラリとした出会いと別れが魅力の、良質のロードムービー。なんどでも見たい名作だ。

■『グラン・トリノ』/★★★
 戦場でのトラウマを抱え続けて生きてきた頑固な老人と、アジア移民の家族との出会い。少年やその姉との交流で、老人のかたくなな心も少しずつ開かれていく。しかしそこに影を指す理不尽な暴力と、その報い・・・。派手なアクションも、動き回るカメラワークも、騒々しいBGMもない。カメラは淡々と、人々の変化を見つめる。本当の強さとは、やさしさとは、誇りとは何かを考えさせてくれる。これが本物の映画だ!

■『ハンガー・ゲーム2』/★(初)
 メリケン版バトルロワイヤルのパート2。今回は若者たちの殺し合いよりも、むしろそのような理不尽な体制に対するレジスタンスが、ストーリーのメインとなる。前作をみていないとあまり楽しめないかも。性格俳優だったフィリップ・シーモア・ホフマンは、これが遺作となった。

■『恋は魔術師』/★★(初)
 カルロス・サウラとアントニオ・ガデスのコンビによる、スペインミュージカルの傑作。ざっくり言えば、スペイン版牡丹灯篭。ダンスにはまったく疎い私だが、アントニオ・ガデスの巨大な円柱のごとき体軸の通りかたは、一見の価値あり。ジプシーの情念を感じさせる音楽も魅力。ティオペペを飲みながら、鑑賞したい佳作。

■『座頭市 鉄火旅』/★★★
 あと一人斬ると、仕込みが折れる・・・。自慢の逆手念仏逆さ斬りを封じられた市の運命やいかに! 初代水戸黄門が、わけありの刀鍛冶を好演。水前寺清子が意外にかわいい(笑)。そしていよいよ、破折覚悟の最後の抜刀。その結果は・・・、見てのお楽しみ。

 おまけ。

▲イーストウッド御大自身の歌声が渋い・・・

 (おしまい)

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