感染症対策/(医療・福祉)
- 2016/01/23(Sat) -
 今週は、ず~~~~っと、一般読者向けに感染症を解説する原稿を書きまくっていた。

 手足口病、プール熱、黄熱病、とびひ、マイコプラズマ肺炎、RSウイルス、溶連菌、季節性インフルエンザ、新型インフルエンザ、ノロウイルス、おたふくかぜにみずぼうそう。本日は早朝から重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を書き上げ、ただいま入稿終了したところである。

 それにしても、世界はウイルスや細菌であふれているのだねえ。

 執筆のために厚労省や消費者庁、自治体などのペーパーを見ていると、いろいと興味深いことがある。

 たとえば昨年10月に消費庁が行った調査では、食事の前に手を洗わない人が52.6%、そしてトイレの後に手を洗わないという不浄の輩が15.4%もいるという。

 きったねえなあ・・・。

 そんでもって、この時期はノロちゃんの流行時期なわけで、これに感染した人のウンチには、1グラム(1キログラムではない、念のため)中に数億個のノロウイルスが含まれている。一方で、こいつは人の口からたった10~100個入るだけで感染しちまうというオソロシイものなのだ。

 とりあえず、トイレの後はちゃんと手を洗おうや、ほんとマジで頼む。

 あと、「咳エチケット」、これはもっと啓蒙が必要だ。

 この時期、都内などに出ると、電車の中でコンコン、クシュクシュ、ハクションしていながら、マスクをしていない輩が実に多いのは、本当に不快である。

 菌飛ばすな、菌を!!

 学校はもちろん、企業や地域でも、「咳エチケット」(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/cover-cough/)をもっと教育すべきだろう。

1601_感染症
▲感染症対策について熱く語るエルンスト・フォン・バウアー氏



 最近あまり騒がれなくなったが、新型インフルエンザの大流行(パンデミック)は、今も変わらず人類の恐怖である。厚労省の推計では、いったん流行が始まると、国民の25%320万人が発症し、17万~64万人が死亡すると想定されている。

 このため流行が始まった場合、可能な限り外出せず自宅に留まるようにとされており、感染症対策の専門家はそのために家庭でも2か月分の食料や水の備蓄を推奨している。

 って、2か月分・・・・?

 それは無理だろ、多分。

 普通の家庭では、そんな量の食料や飲料水を置いとく場所がそもそもねえよ!

 ということで、国は2週間分の備蓄を推奨している。ま、2週間分でも、かなり厳しいと思うけどな。



 西日本を中心に国内でも感染が広がっている、ダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)。国立感染症研究所によれば、2013年の国内での初確認以来、過去にもさかのぼって調査したところ、今月6日現在で169名が感染し、うち45名が死亡しているとのこと。これはかなり高い死亡率である。

 でもって個人的にびっくりだったのは、SFTSと同様にマダニが媒介する感染症である「つつが虫病」の患者が、今も毎年400件ほど報告されているということだ。つつが虫病なんて、とっくに制圧されているのかと思ったが、いまだにこんなに感染者がいるとは思わなかった。


 というわけで、インフルエンザもノロも、これからシーズン本番ですが、皆様、恙無く・・・。

 (おしまい)
スポンサーサイト
この記事のURL | 医療・福祉 | ▲ top
医療不信と情報源~ネット依存による視野狭窄/(医療・福祉)
- 2015/06/01(Mon) -
 日経メディカル・オンラインで、興味深い記事を読んだ。

「政府のワクチン接種推奨への不信感、その背景にあるのは」( 国立国際医療研究センター 国際医療協力局 和田耕治)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/flu/topics/201505/542269.html


 最近、オーストラリアの首相が、ポリオ(小児まひ)や破傷風など、子供への予防接種を拒否した家族への児童手当などを原則的に支給しないと発表したが、どこの国にも、陰謀論や偽医療のデマに惑わされて医療ネグレクトを繰り返す、無責任な大人が少なくないのだろう。

 残念なことである。

 上記、国立国際医療研究センター国際医療協力局の和田耕治氏は、ワクチン接種に対する不信感を持つ人がどれくらいいるのかとその要因について、20~69歳の日本人約3000人を対象に調査を行った。

 その結果、政府のワクチンに関する推奨に不信感が「ある」または「まあある」と回答した人は、全体の24%だったという。ここでたいへん興味深いのが、不信感と情報源の関連だ。

~以下、引用~

「不信感と情報源の関連を男女別に見たところ、次のような特徴が見られた。まず男性・女性共通して、最も信頼する情報源として医療従事者を挙げた群を基準とすると、友人やインターネット、書籍を挙げた群では不信感を持っている人が有意に多かった。

 また、男性においてはテレビを、女性においては家族や新聞を、それぞれ最も信頼している情報源と回答した人は、医療従事者を信頼している群と比較して有意に不信感を持っていた」

~以上、引用終わり~


 ようするに、ネットをはじめ、非科学的な書籍や興味本位で制作されたテレビ番組などを見ている人ほどワクチン接種=標準医療に対する不信感が強く、かかりつけ医や地域の保健師、看護師などの医療従事者から直接、医療に関する科学的で正しい情報を得ている人ほど不信感が少ないということが、有意に証明されたということである。


 これは医療に限ったことではないが、ネットや書籍の情報「だけ」に依存することは、とてもリスキーなことだ。

 なかには、ジャーナリストを自称しながら、「情報源はネットだけ」と言う、ちょっと常識では理解できない人も最近はいるそうなのだが、かれこれ20年ほど記者を生業としている私からしたら、到底、理解の範疇を超えている・・・・。

 取材とかインタビューとかしないの? 論文とか読まないの? 裏トリとかダブルチェックとかしないの? ジャーナリストなのに・・・。

 そしてこれも医療分野に限ったことではないが、このように「情報源はネットだけ」というような人たちほど、自覚のないうちに自分の都合のよい情報のみを選別し、断片的な情報のみで都合のよい解釈をし、最終的には自分だけが世界の真実を知っている!、と思い込んでしまう傾向があるようだ。

 しかし考えてみれば、ネットに世界の隠された真実や、国際的陰謀、薬害の事実などが、ゴロゴロ転がっているわけがなかろうに・・・、とは思わないのだろうか?

 ラーメンだって、ネットの口コミを読むだけでは、味が分からない。何はともあれ、自分で食べてみなきゃあね(笑)。


 ネット依存は、人の視野を狭める。

 自戒も込めて、しみじみと思う。

■参考文献
・Wada K, Smith DR. Mistrust surrounding vaccination recommendations by the Japanese government: results from a national survey of working-age individuals. BMC Public Health 2015; 15:426
http://www.biomedcentral.com/1471-2458/15/426
 (了)
この記事のURL | 医療・福祉 | ▲ top
ワクチンと水銀に関するデマについて/(医療・福祉)
- 2015/03/01(Sun) -
 以前のブログで、医療系トンデモの話を書いたのを読んだといって、昨夜、知り合い(二児の母親)から、こんな電話があった。

 「去年、子供にインフルエンザワクチンを打ったのだけれど、ネットを見ていたら猛毒の水銀が入っていると書いてあったんだよね。大丈夫なのかな。おまけにワクチンに入っている水銀が、子供の自閉症の原因になるともあったんだけど・・・」

 なるほど、ワクチンがらみの水銀デマというのは、いまだに信じて悩んでいる人がいるのだね。ここは医療記者の端くれとして、いたずらに不安をあおるデマを撲滅し、正しい医療知識の啓発をせねばなるまい。


 さて、まず結論から先に言うと、

 1.インフルエンザワクチンなどに含まれる水銀(エチル水銀)は、子供にも大人にも無害である

2.水銀を含むワクチン摂取と子供の自閉症などの発達障害には、科学的な関連性はない


 ということ。

 なので、心配することはありません。毎年ちゃんと、予防接種を受けましょう!

 むしろワクチン接種をしないことで、インフルエンザに罹って死亡したり、重い後遺症を患ったり、インフルエンザに罹った人がそれを拡散させ、結果として高齢者を死亡させてしまうリスクの方が、はるかに高いのだから。


 さて、ワクチンに含まれる「エチル水銀」が人体には無害であり、子供の発達障害にも関連性がないというのは、世界保健機関(WHO)、厚生労働省、米国科学アカデミー医学協議会( Institution Of Medicine : IOM )など、国際的に信頼性のある保健・医療機関共通の見解である(出典は文末に)。

 そもそもワクチンに含まれるエチル水銀は、細菌に汚染されたワクチンを接種することによって子供が死亡してしまった事例から、ワクチンの保存剤として60年ほど前から使われるようになったものだ。

 エチル水銀は体内に入っても非常に早く排出され、しかもワクチンに含まれる量はとても微量なことから、人体には無害なものなのである。

 医学的にエチル水銀の人体への毒性は、「局所の発赤や腫脹などの皮膚過敏症がみられる程度」で、それ以外の副作用などは認められていない。

 一方で「メチル水銀」は、非常に強い毒性を持つ。

 メチル水銀は、体内に摂取されると脳や神経系に移行し、重い中毒症状を示す。おまけに、なかなか体内から排出されず長期間体内に残存し、たとえば妊娠している場合など、母親が無症状でも子供に障害が現れることもある。

 その典型的な例が、みなさんご存知の水俣病だ。

 このように、エチル水銀とメチル水銀を混同することから、「ワクチンには、猛毒の水銀が含まれている!」というデマが、いまだに後を絶たないのだろう。

 ま、エチルアルコールとメチルアルコールを間違えて飲んじまう、粗忽な酔っ払いと同じような話なわけです、ワクチンと水銀に関するデマというのは(笑)。

 また、こうしたデマをさも真実のように伝え、人々の不安をあおる非常に悪質なホームページ(http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-240.html←あまりに悪質なので直リンはつけない/以下、悪質例については同じ)や、医療や環境に関する陰謀論を煽ることをメシの種にしている、記者の風上にも置けないエセジャーナリスト(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%B9%E7%80%AC%E4%BF%8A%E4%BB%8B)、反医学を標榜するホメオパシーを信じる人々などは、毎日の生活の中で真面目に医療に携わる医療関係者やジャーナリストに比べると、はるかに一般の人向けのデマ宣伝に熱心なので(なぜなら、それが彼らの商売=お金になるから!!)、異常な熱意で、デマを拡散させる。

 ゆえに、ネットや三流ジャーナリスムの世界では、悪質なデマの情報量が圧倒的に多数となり、こうした間違った情報を信じてしまう人が後を断たないのである。

 これは何度でも繰り返すけれど、

 このような悪質なデマを信じてまともな医療(標準医療)を拒否することは、結果として医療ネグレクトにつながり、助かるはずの命が失われてしまう危険性が高い。

 そして、こうした医療ネグレクトの被害者になるのは、多くの場合、子供や高齢者などの社会的弱者である。大切な人たちの命を守るためにも、まともな大人は、医療や健康に関する悪質なデマや陰謀論に惑わされてはならない。

 ことに子供を持つ両親は、適切で標準的な科学・医療の知識を持って、子供たちの成育を担っていく義務がある。


 さて、ワクチンに含まれるエチル水銀と発達障害の関連については、1980年代後半からアメリカで取りざたされたため、その後、多くの科学者や医師が調査と検討を重ねた。

 その結果、最終的に2004年、米国科学アカデミー医学協議会は、「チメロサール(エチル水銀)を含むワクチンの接種を受けることと自閉症との間の因果関係については、否認することが根拠によって支持される」、つまりエチル水銀を含んだワクチン接種と子供の発達障害には、関連性はないと発表した。

 このように、ワクチンに含まれるエチル水銀は人体には無害なのだが、近年、水銀を含まなくても細菌汚染のリスクが少ないワクチン摂取ができるようになってきた。

 そこでWHOも厚生労働省も、米国や欧州でも、「今後はなるべく、エチル水銀入りのワクチンは使わないようにしていくのがベストでしょう」という方向性になっているのである。

 現在、病院や診療所によっては、エチル水銀を含まないワクチンを接種してくれるところもあるので、「エチル水銀は無害と言われても、どうしても気になる」という人は、かかりつけの医師とよく相談するとよいだろう。


 最後に蛇足だが、まめ知識をひとつ。

 体重20kgの6歳の子どもに投与される、エチル水銀入りのインフルエンザワクチン1回分には、多く見積もって2μg/kgのエチル水銀が含まれている。

 これに対して、天然クロマグロの握りずし1貫には、その4倍以上(!)の8.25μgのメチル水銀が含まれているのである。

 つまり天然マグロの握り寿司を1個食べると、インフルエンザワクチンに含まれるエチル水銀よりも、はるかに危険なメチル水銀を、しかも4倍も摂取することになるのだ。

 (野暮を承知で書いておくが、いうまでもないことだが天然マグロの握り寿司を食べても、人体に害はない!)

 ワクチンと水銀のデマを信じる人は、きっと天然マグロの握り寿司は絶対に食べないのだろうし、もちろん自分の子供にも食べさせないんだろうな(苦笑)。

 なんてったって、エチル水銀よりも遥かに毒性の高いメチル水銀が、握り1個に4倍も含まれているのだからね。桶で食ったら、それこそ大変なことになりますぜ(嘘)。

 ちなみに私なら、天然マグロの握り、20個でも30個でも食べるぜ。誰かが、奢ってくれるならね。

1502_マグロ
▲個人的には、大トロよりも赤身の方が好き・・・


(出典)
■保存剤(チメロサール等)が添加されている新型インフルエンザワクチンの使用について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090918-04.pdf

■チメロサールとワクチンについて(横浜市衛生研究所)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/thimerosal1.html

■チメロサールについて(ふくはらこどもクリニック)
http://fukuhara-kodomo.com/yobo11.html

(了)
この記事のURL | 医療・福祉 | ▲ top
偽医学と陰謀論の種は尽きまじ/(医療・福祉)
- 2015/02/11(Wed) -
 先日、宝石屋が売っていた「がんに効く水」とやらについて、消費者庁が「根拠のない効能をうたった・・・」として措置命令をだしたという。

 この手の医療・健康系トンデモ話の種は、一向に尽きることがない。

 水を飲んで、がんが治るか?

 普通に考えれば、中学生でも分かるであろう。それかあらぬか、この水、これまで1億円以上を売り上げたという・・・。

 歴史上だれも経験したことがないという日本の急激な少子高齢化と、それによる死亡者数増加社会の中では、偽医学やインチキサプリは「金の成る木」なのだろう。


 最近の医療系トンデモ話の中でも、特に罪深いA級戦犯は近藤誠・内海聡の両医師であろう。

 この2人の医師のトンデモぶりは、多くのまともで良心的な医療関係者が各方面で告発しているのだが、いまだに騙され洗脳されてしまい、結果として医療ネグレクトに陥り、自分や大切な家族の人生を台無しにしてしまう人が後を絶たないことに強い憤りを感じる。

 近藤氏の「がんもどき理論」が、科学的にまったく根拠がないことは、多くの医療者にとってはいまさら指摘するまでもない事実である。また内海氏にいたっては、電波ゆんゆんの陰謀論者であり、医療以前に、健全な社会人としての資質に疑問がある。

 こうした人々が、自らの信ずる似非科学や陳腐な陰謀論に熱狂するのはご本人の勝手である。日本は自由の国なのだから。

 しかし「医師」という肩書きは、庶民にとっては侮りがたいインパクトがあるわけで、そういう人が「がん治療では、化学療法は無意味」だとか、「ワクチン治療は有害」だとか、「ユダヤに支配された製薬会社の陰謀」だとか、「児童相談所が子供を拉致している」などという、偽医学やデマ、陰謀論を流布させると、それを真に受ける人が現れ、結果として助かるべき命が失われてしまう。

 ここに、医療ネグレクトや医療系陰謀論の、社会的な高い害悪性があるのだ。

 たとえば、がんにかかっても普通に化学療法や放射線治療をうければ助かる人が、治療を拒否することで命を失ってしまう。

 たとえば、インフルエンザにかかってもワクチン接種をしていればどうということのなかったはずの人が、ワクチン接種を拒否することで肺炎を併発して死んでしまう。さらには感染を拡大させて、他の多くの人の命も奪ってしまう。

 たとえば、児童相談所に保護されていれば無事だったはずの子供が、虐待を繰り返す親に無理やり取り戻されてしまい、結果、親に虐待死させられてしまう。

 こうした事例は、「たとえば」ではなく、実際に後を絶たないのである。

 私自身、身近な人間が医療カルトにはまってしまい、その家族が医療ネグレクトによって死亡してしまった経験があり、こうした偽医療やカルト、陰謀論者には、心の底からの強い怒りを感じるのである。


 今の時代、多くの情報がネットで手に入る。

 ちょっと調べて、ごく一般的な常識(メディア・リテラシー)で考えれば、それがデマなのか、事実なのかは分かるものだろう。

 たとえば最近、医療記者仲間の間で話題になったのだが、「WHO(世界保健機関)が、抗がん剤の使用をやめるようにいいだした」という、ちゃんちゃらおかしいデマがネットで流布しており、しかも驚くことにそれを真に受ける人がいるのだという。

 あまりに馬鹿馬鹿しい話なので、調べるまでもないことなのだが、暇つぶしにその情報の出所をちょっと調べてみたのだが、そのようなWHOの発表は当然なく、その根拠となる論文なども見つけることができなかった(ま、最初から時間の無駄になるのは分かっていたのだが・・・)。

 これなど、別に医療関係者でなくとも、すぐにデマと分かることである。

 たとえばweb上で、「WHO(世界保健機関)が、抗がん剤の使用をやめるようにいいだした」と書いているHPやブログで、その情報の出典や引用元をたどってみればいい。すると、引用元はいずれも、同じようなブログやHPであり、そのいずれもが、情報の出所が伝聞に過ぎないのである。

 そもそも、そんな重大な発表をWHOがしたのであれば、プレスリリース出すだろうっつうの(笑)。


 「ところがね、そういう風に説明しても、信じ込んじゃった健康カルトの人は、納得しないんだよ」
 「なんで? バカなの?」
 「いやいや、そうじゃあなくって、・・・つうかその発言はまずいだろう(苦笑)」
 「だってさ、情報元がすべて伝聞って、『友達の友達には、誰も会ったことがない』ってやつと一緒じゃん。嘉門達夫かよ!」
 「まあね。しかし偽医学が大好きな人たちは、たとえWHOからはそういう記者発表が出ていないとか、それを証明する医学論文がないと指摘しても、『それは政府が圧力をかけて隠蔽している』とか、『ロックフェラーがもみ消している』とか言うのさ」
 「やっぱ、バカじゃん!」
 「だから、それはまずいって(笑)。いずれにしても、偽医学や陰謀論を信じる人たちにとっては、証拠や根拠などというのは意味がないんだよ。そんなことより、自分自身がその偽医学や陰謀論を信じたいんだから。信心ってやつは、理屈や論理で説得できるもんじゃないんだからね」
 「なるほどねえ。草葉の陰で、カール・セーガンさんや井上円了先生が泣いているな・・・」
 「ま、偽医療と陰謀論の種は尽きまじってことさ」


■偽医学や偽科学、陰謀論にだまされないための参考書

1502_ニセ医学
▲『ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』 NATROM (著)は、現役医師が書いた、偽医学や健康カルトのトンデモ話に騙されないために、必ず読んでおきたい名著!


1502_ニセ科学
▲『ニセ科学を10倍楽しむ本』山本 弘 (著)。「水からの伝言」「ゲーム脳」「脳トレ」「地震雲」「2012年地球滅亡説」「アポロ陰謀論」etc…。まことしやかに伝わる科学っぽいデマのどこが間違っているかを、楽しみながら学べる一冊


1502_陰謀論
▲『検証 陰謀論はどこまで真実か パーセントで判定』 ASIOS (著), 奥菜 秀次 (著), 水野 俊平 (著)。 政治や国際社会、仕事や日常生活等の場で様々に囁かれる陰謀の噂を検証することで、どう陰謀論に立ち向かったらいいかを探る

 (おしまい)
この記事のURL | 医療・福祉 | ▲ top
最近の偽医療や反医療・デマ・陰謀論について思うこと(その4)/(医療・福祉)
- 2014/10/15(Wed) -
■ポケットに、トンデモ話検出キットを!

~今日こそ我々は、世界を神秘主義と暴君から救う。どんな宝よりも光り輝く、未来をもたらすのだ!~(スパルタ人・ディリオスの言葉/300より)


 エセ科学やカルト、偽医療の蔓延を危惧し、市民向けの啓発活動にも尽力していた故カール・セーガン博士は、その著書『人はなぜエセ科学に騙されるのか』(新潮文庫)の中で、“トンデモ話検出キット”として、次のような考え方を示している。

・裏づけを取れ。
「事実」が出されたら、独立な裏づけをできるだけたくさん取るようにしよう。

・議論のまな板にのせろ。
証拠が出されたら、さまざまな観点をもつ人たちに、しっかりした根拠のある議論をしてもらおう。

・権威主義に陥るな。
権威の言うことだからといって当てにしないこと。権威はこれまでも間違いを犯してきたし、今後も犯すかもしれない。こう言えばわかりやすいだろう。「科学に権威はいない。せいぜい専門家がいるだけだ」

・仮説は複数立てろ。

仮説は1つだけでなく、いくつも立ててみること。まだ説明のつかないことがあるなら、それが説明できそうな仮説をありったけ考え出そう。次に、こうやって得られた仮説を、かたっぱしから反証していく方法を考えよう。このダーウィン主義的な選択をくぐり抜けた仮説は、単なる思い付きの仮説にくらべて、正しい答えを与えてくれる見込みがずっと高いはずだ。

・身びいきをするな。
自分の出した仮説だからといって、あまり執着しないこと。仮説を出すことは、知識を手に入れるための一里塚にすぎない。なぜそのアイディアが好きなのか自問してみよう。そして、ほかのアイディアと公平に比較しよう。そのアイディアを捨てるべき理由がないか探してみよう。あなたがそれをやらなければ、ほかの人がやるだろう。

・定量化しろ。
尺度があって数値を出すことができれば、いくつもの仮説のなかから一つを選び出すことができる。あいまいで定性的なものには、いろいろな説明がつけられる。もちろん、定性的な問題のなかにも深めるべき真実はあるだろうが、真実を「つかむ」方がずっとやりがいがある。

・弱点を叩きだせ。
論証が鎖のようにつながっていたら、鎖の輪の一つ一つがきちんと機能しているかどうかをチェックすること。「ほとんど」ではなく、前提も含めて「すべての」輪がきちんと機能していなければならない。

・オッカムのかみそり。
これは使い手のある直感法則で、こう教えてくれている。「データを同じくらいうまく説明する仮説が二つあるなら、より単純な方の仮説を選べ」

・反証可能性。
仮説が出されたら、少なくとも原理的には反証可能かどうかを問うこと。反証できないような命題には、たいした価値はない。たとえば次のような壮大な仮説を考えてみよう。「われわれの宇宙とその内部の一切は、もっと大きな宇宙のなかの一個の素粒子(電子など)にすぎない」。だが、この宇宙の外からの情報が得られなければ、この仮説は反証不可能だ。主張は検証できるものでなければならない。筋金入りの懐疑派にも、推論の筋道がたどれなくてはならないし、実験を再現して検証できなければならないのだ。

~以上、引用終わり~


 現在、世の中のすべてのことが、科学的に証明されているわけではない。多くの科学者は口をそろえて、科学で解明された事実は、いまだにこの宇宙の事象の一部に過ぎないと話す。

 また、俗世間で生きる私たちは、日常生活の何もかもを「科学的」「客観的」に思考して生きていくのだとすれば、それではいささか味気なく、面白くないこともまた事実だ。

 たとえば私は怪談話やオカルト映画が大好きだし、趣味でもう30年以上も周易やタロットなどの占いをたしなんでいる(笑)。ただしこれらは、人生においてはしょせんスパイスみたいなものだ。

 スパイスはけして、主食にはならない。

 荀子は“善く易を為(おさむ)る者は占わず”といい、易=哲学の十分な学習と理解があれば、占わずとも問題に関して熟考し、合理的にその疑問を解決する道が開かれると説いた。

 同様に21世紀に生きる我々は、標準的な科学的教養に基づいて、人生で直面する多くの問題に対することにより、そのリスクの多くを最小限に止める事ができるはずだ。

 ことに子供の生命と健全な発育に責任を持つ親権者=親は、カルトやデマに惑わされないバランスのとれた教養を常に持ち、子供を生命の危険にさらすような偽医学や反医学、いかがわしい陰謀論から守らなければならない。

 このような「大人/親としての社会的使命」を放棄するのであれば、そういう者は健全な社会を構成する大人にはなりえないし、親になどなってはいけないのである。

 (了)
この記事のURL | 医療・福祉 | ▲ top
| メイン | 次ページ