原稿料の話/(身辺雑記)
- 2016/12/09(Fri) -
 キュレーションサイトの不適切な記事やら、それに掲載をするために1文字1円以下の原稿料という、劣悪な条件で記事を書かされているライターさんたちのことがネットで話題になってる。

 かくいう私も、最近、雑誌や本の仕事がめっきり減ってしまい、webの仕事の依頼が多い。

 たとえばこの11月から12月にかけては、雑誌のインタビューが1本、製薬会社のパンフレットに載せる記事が1本だけで、あとの仕事はすべてwebに掲載する原稿である。

 感覚的には、この2カ月は仕事の8割がweb媒体という感じであった。

 それにしても、web媒体の仕事は紙媒体の仕事に比べると原稿料が安い。

 本当に安い・・・・・・。

 たとえば、私が毎月1回担当している医療経営者向けの月刊誌の巻頭記事は、1時間インタビューをし、それを6000文字の原稿にして、原稿料は6万円である。

 これは、1文字換算で10円の仕事だ。

 この仕事、お恥ずかしいことに、今私が抱えている仕事の中ではそこそこ単価の高い部類の仕事なのだけれど、数年前までは逆に、私のやっている仕事の中では、かなり原稿料の安いものであった。

 それがここ数年、一気に出版業界や医療広告業界の原稿料の相場が値崩れしてしまい、今や割合単価の良い部類の仕事となってしまったのである。


 私の感覚では、同じ文字数でも取材の手間や内容の専門性によって、原稿料やそれにともなう労働実感は様々なのだが、ものすごい大雑把な表現をすると、原稿料が1文字10円を切ると「安いなあ・・・」と感じ、1文字5円を切ると「取材しての原稿は書けない。これじゃあ食っていけねえ!」という感覚である。

 たとえば以下の記事は、先月に私がインタビュー取材をして原稿を書いたものなのだが、いずれも原稿料は1文字に換算すると6~8円だ。

『最先端の光学領域VRが比類なきイノベーションを生む』
https://frontier.bizreach.jp/vr-ar/optis-japan/

『製造業に自由をもたらす「モノづくりの民主化」を目指す』
https://frontier.bizreach.jp/business-model/kabuku/

『人工知能でニュースにスピードと質の革命を。報道機関向けソリューション「Newsdeck」』
https://frontier.bizreach.jp/artificial-inte/spectee/

『目覚ましカーテンから始まる日本発「メイカー」の挑戦』
https://frontier.bizreach.jp/business-model/robit/


1時間弱のインタビューをして2500~3000文字の原稿を書きあげ、1文字6~8円という値段は、取材をして原稿を書くギリギリのレベルであり、これよりも原稿料が安くなると、残念ながら同じ条件での仕事のクオリティを求められるのであれば、依頼を断らざるをえない。

 これらの仕事、紙媒体の感覚だと、どう考えても1文字10円以上の手間とクオリティなのだが、web価格だと1文字6~8円になってしまうのである。

 一方で現場取材なし、資料のみで書くweb向けの原稿執筆依頼の場合、現場取材やインタビューの手間が減る分さらに原稿料が安くなり、私の場合、1文字4~5円が受注できるギリギリ下限である。

 たとえば、今日の昼間書いたweb向けの観光記事は、1文字4.6円(!)だ。

 ちなみに、やはり今日の昼間書いた、雑誌向けの旅館の紹介記事は、1文字13円である。

 現時点で、webでも紙でも、1文字4円未満の依頼はお断りしているのだが、今後、仕事の発注量が減り、さらに業界全体の原稿料の単価が安くなるようであれば、もっと安くても仕事を受けなければならなくなるだろう。

 ま、これが、「高級ライター」でも「1円ライター」でもない、とあるキャリア22年のフリーライターの現実である。


 それにしても、くだんのキュレーションサイトの記事の原稿料が、なんと8000文字で2000円、1文字0.25円とか、それはもう著述業ではなく、web内職といったほうが適切だろう。

 その料金で、根拠のある、事実に基づいた、コピペや剽窃ではないオリジナルの文章、しかも専門性の高い医療記事を書けというのが、どだい無理な話であり、諸悪の根源は、そのような異常な料金設定で仕事を依頼しようという事業者側にあるのは言うまでもない。

 そういえば、ちょうど1年ほど前、私のところにもとあるネット関係者から、、「介護保険制度関連の解説記事を書いてもらえないか?」という依頼があったのだが、原稿料を聞くと記事の裏トリ込み1本600文字で500円とかふざけたことを言いやがるので、

 「その料金設定は常軌を逸していますね。絶対に無理です」

 と丁重にお断りすると、

 「ですよねぇ。ありえないですよね。はははは・・・・・・・」

 との答えであった。


 ま、ネットの普及で、情報はタダで手に入るものだと、多くの人が思い込んでしまっている以上、こういう風潮は、さらに加速していくのだろうし、そういう時代の中で、我々のような取材をし、裏をとり、『チェック、ダブルチェック』で原稿を書く、無署名のフリーライターなどというのは、遠からず滅びゆく、あらほましき一族なのであろう。

 というわけで、1円にもならないブログをこんなところで校正しながら2時間もかけてつらつら書いている暇があったら、今晩中が締め切りになっている、1文字4.6円のweb用の観光記事をあと7本、さっさと書けという天の声が聞こえてきそうなので、今宵はこれにて。

 なおちなみに、今回のこのブログの記事、合計約2000文字なので、原稿料にすると2万円くらいが私の相場における適正価格なのである・・・・・・(苦笑)。


「人生は過酷だ。生きていくためには金がいる」(サム・ペキンパー)

「生まれて初めて見た映画は朝鮮戦争のころだ。客の半分がGIだった。特ダネとモラルの話さ。都落ちした記者がカーク・ダグラスでさ。ニューヨークから流れ流れてアルバカーキ。砂漠の田舎町。連発するんだ。記事にするならチェック、ダブルチェック。憧れたね。チェック、ダブルチェック。こいつが言いたくて新聞社に入ったようなもんだ」(映画『クライマーズ・ハイ』より)



 (おしまい)
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