武技としての体当たり/(武術・武道)
- 2016/12/28(Wed) -
 昨夜、寝る前に昭和11(1936)年発行の園部ひでを著『学校薙刀道』をつらつらと読んでいたところ、試合形15本のうちの8本目に当身業が組み込まれていて、「ほほう・・・」と思った。

 「ほほう・・・」というのは、なんだかとても偉そうな表現であるが、他意はない、念のため・・・・・・。

 というか、先週で年内の取材は終わったはずが、昨日急きょ、都内でインタビュー取材、しかも政府関係者への1時間にわたる1対1の対面取材という超ヘヴィーな仕事を依頼され、あまつさえ年内に原稿をあげろという過酷なミッションにより、31日まで休めなくなってしまったことから、今の私はとてもナーヴァスなのである。

 閑話休題。

 武具を用いる武芸の形(業)に、当身などの体術的技法が含まれるというのは、古流武術においては特段珍しいことではなかろう。

 しかし、剣術なり居合なりの形に突きや蹴りなどの当身が入っていると、「武具を用いた術に、そのようにして体術の技を組み入れているのか!」と、目からうろことなることが少なくない。

 加えて、たとえば荒木流抜剣の蹴当てなどは、術理の学びはもちろんだが、有体にいえば「カッコイイ」のである(笑)。



 柳剛流剣術の中でも、目録で学ぶ柳剛刀6本のうちの一手に、このような体術的接触技法が含まれている。

 具体的にどのような技なのかは、師伝のためここでは伏せるが、実際に学び稽古をしていると、「なるほど、これは使えるな」と実感できるものだ。

 ルール未発達な幕末期の試合剣術で勇名を馳せた柳剛流だけに、この技は相当試合でも使われただろうと思う。

 過日、翠月庵の稽古納めの際、この形を指導するために私は打太刀をとっていたのだが、不覚にも少々右膝を痛めてしまった。幸い軽症で今日の段階で痛みはほぼないのだが、接触技法には気をつけねばならんね。



 ところで、剣術によく含まれる接触技法として、最も一般的なのがいわゆる「体当たり」であろう。

 私が10代の頃、旧師に学んだ剣術には、隠し技としてこうした体当たりでの当身が多く含まれていて、以来、それが私の得意技のひとつになったというのは、以前、本ブログでも書いた。

 (「当身の指導」/http://saitamagyoda.blog87.fc2.com/blog-entry-270.html

 また現代の剣道でも、体当たりはある種の「崩し技」として認知・活用されているようで、「剣道 体当たり」でwebを検索すると、現代剣道における体当たりの使い方を解説したページが多数ヒットする。

 そのなかで剣道6段の師範が解説している、

 「剣道の体当たり!コツを知って有効打突に繋げよう! 」,剣道中毒(http://剣道中毒.com/archives/3015.html

 というページを読んでいて、なるほどなあと思った。

 そこでは、剣道競技では危険な体当たりは反則になってしまうので、体当たりをするときには、「下から突き上げるような動きをしてはならない」という点が強調されている。

 これを武芸の視点からみると、「下から突き上げる」というのは、たいへん有効な体当たりの技化の方法のひとつであると言えよう。

 なお、剣術における接触技法としての体当たりについて、最も端的かつ実践的な教えは、『五輪書』にある「身のあたりと云うこと」だろう。

 また、現代の剣道における体当たりのように、向身で当たるのではなく、半身あるいは一重身で、かつきちんと相手の水月や電光(稲妻)などの急所を狙って、我の肩をぶつけることが重要だ。

 ちなみに『五輪書』では、我が左肩を、彼の胸に当てるよう教えている。この際、狙う急所は、壇中や雁下、水月などとなろう。

 ところで最近、伝統派空手道の稽古に参加していると、突きにしても蹴りにしても、「急所に当てる」という意識が希薄な者が多く、それどころか中段なのか上段なのかすらあいまいな突きをしている者が少なくないのは、たいへん残念なことだ。

 もちろん、激しく自由に動き回る相手の急所を的確にとらえることは、容易でないのは当たり前なのだが、だからこそ基本稽古や移動稽古、約束組手や形などで、拳足をしっかりと当てるべき部位=急所に向けて当てる稽古を心掛けるべきであろう。

 またまた閑話休題。

 話を体当たりに戻すと、現在私が、小佐野先生より柳剛流と合わせてご指導をいただいている柳生心眼流でも、技としての体当たりをよく用いる。それだけでなく、体当たりの技を練るための鍛錬法もあり、体当たり好き(?)の私としては、たいへん興味深く学ばせていただいている。



 さて、このような武技としての体当たりについて、現在、最もそれを練り上げているのは、やはり相撲であろう。

 横綱白鵬による至芸に達した「かち上げ」を見ると、まさに体当たりが一打必倒の技であることが実感できるはずだ。

 もっとも横綱が使う技としては、「かち上げ」はいささか品格に欠けるということも忘れてはなるまい。

 
 一 身のあたりと云事。
 身のあたりハ、敵のきはへ入込て、
 身にて敵にあたる心也。
 すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、
 敵の胸にあたる也。
 我身を、いかほども強くなり、あたる事、
 いきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。
 此入事、入ならひ得てハ、
 敵二間も三間もはけのく程、強きもの也。
 敵死入ほども、あたる也。
 能々鍛錬有べし。


出典:「武蔵の五輪書を読む 五輪書研究会版テクスト全文 現代語訳と注解・評釈」(播磨武蔵研究会「宮本武蔵」ホームページhttp://www.geocities.jp/themusasi1/index.htmlより)

 (了)
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