タイル針・コンクリート針を打つ/(手裏剣術)
- 2017/01/28(Sat) -
 工具としてして販売されているコンクリート針やタイル針は、代用手裏剣としてよく使われている。

 流派・会派ごとの手裏剣は、いずれも誂え物であり、あるいは最近は流派別の手裏剣のレプリカなども市販されているが、これらの多くも安価なものではない。骨董的価値のある時代のものの手裏剣にいたっては、言わずもがなだ。

 このため、特定の流派や会派に所属せず、武人の嗜みとして独自に手裏剣の稽古をしている人の多くは、コンクリート針やタイル針、あるいはタガネなどを代用手裏剣として使うことが多いだろう。


 私は手裏剣術の稽古に専念した当初から、専用の誂え物を使ってきたので、コンクリート針やタイル針は、あまり打ったことがない。

 加えて、翠月庵で通常使用している手裏剣は、長剣も翠月剣も、いずれも重さが100グラム以上ある重量剣であり、コンクリート針やタイル針に比べるとあまりに長さと重さが異なる。

 長さと重さが異なるということは、手の内をはじめとした打ち方が異なるため、これまではコンクリート針やタイル針は、そもそも代用品としても、あまり考えてこなかった。


 ところが過日、アマゾンで買い物をしていると、ふとタイル針が目について、「たまにはちょっと、打ってみるかな」という気になった。

 そこで、「イシイ 特殊タイル針 ローレット 大」(全長150ミリ、重さ29グラム、径6ミリ、丸型)と、「千吉 コンクリート針 大 NO.16」(全長160ミリ、重さ33グラム、径7ミリ、丸型)を購入して打ってみた。

 拙宅では、座打ちで2間、立打ちでは1間半しか取れないのだが、どちらも2間直打の座打ちで普通に刺さるので、立打ちであれば3間は通せるであろう。

 それにしても、このクラスのサイズの剣は、あまりにも軽く短くて打ちにくい。

 普段、私が使っている25年式翠月剣は、短刀型で全長255ミリ、身幅13ミリ、重ね6ミリ、重量144グラムである。これに比べると、コンクリート針もタイル針も、あまりに軽く短いため、手の内や手離れが全く異なるのだ。

 おまけに、普段の稽古では2~5間で打っているからか、2間座打ちはまったく違和感はないのだが、1間半の立打ちというのは間合いが近すぎてかえって難しい。

 超至近距離で、しかも剣があまりに軽いことから、普段の打ち方で打つとまったく首落ちがせず、剣が立ったままになってしまうのである。

 そこで、通常は禁忌としている手首のスナップを利かせ、滑走を大きくかけることで、ほどなく「板金を打つ心」で刺さるようになった。

 とはいえ、1間半というのは間合いが近すぎて、手裏剣術者としてはかえってストレスのたまる距離だ(苦笑)。

 やはり最低でも、立打ちで2間の間合いがとれるとよいのだが、我が家は間取りや欄間の関係で、立った姿勢ではこれ以上の距離はとれない。まあ、座打ちなら2間がとれるので、良しとするしかあるまいね。

 結局自宅での手裏剣の稽古は久々だったこともあり、気が付けば一刻ほども打剣に集中していた。

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▲「イシイ 特殊タイル針 ローレット 大」を、1間半から立打ち直打、足幅を広げない古伝の一足立ちの姿勢のまま、踏み込みをせず、順体・逆体を織り交ぜて打つ。剣が軽量でしかも短いため、普段とは手の内と指置きを変えないと刺さらない。軽量の剣は本当に難しいものだ



 思うに、これらコンクリート針やタイル針のメリットは、誰でも簡単に購入できること、そしてコストが安いこと、この2点に尽きよう。ホームセンターでも、ネット通販でも簡単に買うことができ、しかも1本の値段はわずか数百円である。

 伝統流派や現代流派の手裏剣の写しは、市販品でも1本数千円はするので、コンクリート針やタイル針のコストの安さは大きな魅力だ。

 また、手裏剣の稽古では、屋内でも屋外でも、外れたり跳ねたりした手裏剣を見失ってしまう事が少なくないのだが、この値段の剣であれば、最悪の場合紛失してしまっても、それほど負担にならない。

 耐久性についても、2時間打って、的に刺さっている剣の剣尾や側面などに、次に打った剣が度々当たったりしたが、剣先が激しくつぶれるなどのダメージは無かった。

 一方でコンクリート針もタイル針も、軽く、短いことから、打剣が難しくなることが最大のデメリットである。本ブログで以前から度々指摘しているように、手裏剣の打剣というものは、剣が軽く短いほど難しいのだ。

 できれば全長200ミリ、重さ40~50グラムほどのものがあれば、もう少し打ちやすくなるだろう。こうした点で、「イシイ 特殊タイル針 ローレット 大」よりも、「千吉 コンクリート針 大 NO.16」の方が、若干だが打ちやすかった。

 もっとも、中級以上の業前の手裏剣術者であれば、このような軽量で短い手裏剣でも、慣れれば立打ちで3間までは十分に通せるだろうし、稽古で間合い3間が通るのであれば、武術としての実践に耐えうると考えられる。

 ただしこの重量で、しかも刃の無い針型の手裏剣ゆえ、武芸としては二星を中心とした顔面部のみを打剣部位としなければならないだろう。

 ちなみに地稽古の経験上、顔面、ことに両目や眉間に投擲物が当たった場合、超軽量の物体(毛筆の筆など)でも十分に、相手の動きを一瞬止めることができる。

 そして相手の動きが一瞬居着けば、あとは斬るなり突くなり、蹴るなり殴るなり、投げるなり極めるなり、あるいは走って逃げるなりすればよいのは言うまでもない。

 逆に言えば、ただ手裏剣を打っただけで、こちらがその場で居着いているようでは、護身にも制敵にもならないということを、武術としての手裏剣術を志す者は忘れてはならない。

 いずれにしても、手裏剣術を看板のひとつにしている以上、たまにはこうした軽量の代用手裏剣も、打っておかねばならないなと改めて思った次第である。

 (了)
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