柳剛流殺活術 五ヶ所大當/(柳剛流)
- 2017/05/19(Fri) -
 総合武術である柳剛流には、流祖以来、免許秘伝として殺活術が伝えられてきた。

 しかし残念ながら、仙台藩角田伝柳剛流においては現在、活法のみが口伝として伝承され、殺法については失伝している。

 ただし幸いなことに、仙台藩角田伝柳剛流や幕末から明治にかけて武州で興隆した師範家である岡安家系統の柳剛流については、文久年間から昭和初期にいたるまでの、複数の殺活免許の伝書や添え書きが残されている。

 ご存じのように、日本武芸における殺法=当身口伝には、多くの先達による豊富な先行研究の成果があるため、柳剛流の殺活術についても、各派各時代の伝書を突き合せ、それをさらに柔術諸流の当身殺法の伝承と比較することで、比較的容易にその術技内容を類推することができる。



 まず、仙台藩角田伝柳剛流における殺活術をみると、文久2(1862)年に斎藤数衛が氏家丈吉に伝授した柳剛流殺活免許巻には、

1.松風 2.村雨 3.水月 4.明星 5.面山 6.二星 7.骨当 8.玉連 9.剛耳 10.天道 11.稲妻 12.右脇 13.心中 14.雁下 15.虎走 16.玉水 17.高風市 18.虎一点

 以上、18ヵ所の殺が図解入りで示されている。

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▲文久2年に記された、仙台藩角田伝柳剛流の殺活免許巻


 同じく仙台藩角田伝柳剛流において、昭和14(1939)年に斎藤龍三郎が斎藤龍五郎に伝授した柳剛流殺活免許巻にも18ヵ所の殺が示されており、その全てが文久年間の伝書と一致している。

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▲昭和14年に記された、仙台藩角田伝柳剛流の殺活免許巻


 この2つの伝書は、歳月としては77年、伝承者の世代としては4代もの隔たりがあるのだが、両者を比較すると、術としての殺法は変化することなく脈々と伝承されてきたのが分かる。


 一方で、武州で大きな勢力を誇った師範家である、岡安家系統の柳剛流では、免許において口伝として、以下、13の殺法が伝授されていた。 

1.天車 2.面山 3.人中 4.村雨 5.二星 6.掛金 7.音当 8.女根 9.水月 10.脇腹 11.心中 12.玉水 13.亀之尾

 さらに岡安伝では、こうした当身殺法のなかでも、特に重要な当てを「五ヶ所大當」とし、天見、人中、秘中、水月、気海の5ヶ所の殺を示している。

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▲柳剛流岡安派の「五ヶ所大當」


 さて、岡安伝の「五ヶ所大當」を、角田伝の殺法、さらに当身の妙で知られる柔術流派である天神真楊流の殺法と対照させると、以下のようになる。


 天見(岡安伝)=天道(角田伝)=天道(天神真楊流)

 人中(岡安伝)=虎一点(角田伝)=人中(天神真楊流)

 秘中(岡安伝)=玉連(角田伝)=秘中(天神真楊流)

 水月(岡安伝)=水月(角田伝)=水月(天神真楊流)

 気海(岡安伝)=明星(角田伝)=明星(天神真楊流)



 このように、岡安伝も角田伝も「五ヶ所大當」にあたる殺点は、いずれの部位・名称も非常に天神真楊流に類似していることが分かる。

 従来、柳剛流の殺活術は、流祖・岡田惣右衛門が学んだ三和無敵流からきていると解説されることが多かった。

 しかし、上記のような柳剛流の殺法と天神真楊流の殺法との類似点を見ると、柳剛流の殺活については天神真楊流の影響もあったのではないかと考えたくなる。

 もっとも日本武芸全般において、殺活術については楊心流系の影響がたいへん大きいことを考えれば、これはいささか穿ちすぎなのかもしれない。



 いずれにしても、「五ヶ所大當」という柳剛流殺活術の当身秘伝は、古流武術はもとより、柔道や空手道、拳法や合気道などの現代武道を学ぶ者も含め、武術・武道をたしなむ者であれば誰もが最低限覚えておくべき、普遍的かつ基本的な急所だといえるだろう。


 ■参考文献
 『日本柔術当身拳法』(小佐野淳師著/愛隆堂)
 『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』(南部修哉/私家版)
 『一條家系譜探訪 柳剛流剣術』一條昭雄/(私家版)
 『幸手剣術古武道史』(辻淳/剣術流派調査研究会)

 (了)
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