柳剛流二刀伝/(柳剛流)
- 2017/06/07(Wed) -
 以前から気になっていたのだが、ネット上にある柳剛流関係の記事で、二刀の技法にふれているものがある。

 「剣術流派紹介」
 http://www.geocities.jp/mb_records2004/ryuuha-ryuugouryuu.html

 このページは武術・武道関係のものではなく、1990年代に放映された時代劇ドラマに関するホームページに付随したもののようだ。

 こういったページの剣術関連の記事は、武術・武道の実践者ではなく歴史ファンが資料を基にまとめているケースが多く、技術的にも考証としても、残念ながらあまり質の高いものは多くない。

 ところが上記ホームページの柳剛流に関する記事については、これまでほとんど公開されたことのないであろう柳剛流二刀伝の技法について、ずいぶん具体的な記述がなされており、「いったいこの記事は、どういう人が書いたのだろう?」と、常々、不思議に思っていた。



 そんななか過日、松代の演武会に参加した帰路、水月塾関西支部長のY師範とお話しをしていたところ、柳剛流の話題となった。

 その際、2000(平成12)年に発行された田中普門氏著の『古流剣術概論』(愛降堂)という本に、紀州藩田丸伝柳剛流の記事があると教えていただいた。

 これについては以前、『幸手剣術古武道史』などの著者で、武州一帯に伝播した柳剛流に関する研究の第一人者である辻淳先生からも、教えていただいたことがあったのだが、すっかり失念していたのである。

 私はなにしろ「武術オタク」なので(笑)、武術関連の書籍などはそれなりに所蔵しているのだが、どういうわけか田中普門氏の著作は、これまで1冊も購入したことがなく、すべてパラパラっと立ち読みで済ましていたので、ま、不覚といえば不覚であった。

 そして後日、Y師範が同書の柳剛流に関する記述のあるページを送ってくださり、それを読んで上記の疑問が氷解した。

 

 同書には、紀州藩田丸伝柳剛流を伝える三重県在住の三村幸夫先生が仕太刀、著者の田中氏が打太刀となり、柳剛流二刀伝の技法が2本、帯刀した状態から脚斬りで始まる剣術形が2本紹介されている。

 そして、上記ホームページの柳剛流二刀伝に関する記述と、この『古流剣術概論』の記事がほとんど一致していることから、ホームページの筆者は、この本を基に当該記事を書いたのだと思われるわけだ。

 ま、ただそれだけの事なのであるが、柳剛流マニアとして、ここ数年来の疑問が1つ氷解し、今、私はたいへんすっきりとした気分である(苦笑)。

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▲田中普門氏著『古流剣術概論』(愛降堂)に掲載されている、紀州藩田丸伝柳剛流の二刀技法



 柳剛流における二刀技法は、角田伝にしても武州の系統でも、あるいは田丸伝においても目録で伝授されるものだが、いずれの場合も伝書上の記述は全て「二刀(伝) 口伝」となっており、形の名称などはどの系統の伝書にも記されていない。

 その上で、私たちが伝承している仙台藩角田伝柳剛流においては、いつの頃からか定かではないが、二刀伝は形ではなく純粋な口伝、つまり「口訣(くけつ)」として今に伝えられている。

 これに対して、紀州藩田丸伝柳剛流における二刀伝は、形としての技法群として伝承されているということで、その一端が上記の田中氏の著書で紹介されているわけだ。

 なお村林正美先生の論文『柳剛流剣術の特色』(武道学研究/1989)によれば、紀州藩田丸伝柳剛流の二刀技法については、先代の清水誓一郎先生から当代の三村幸夫先生への伝授において、形の名称は伝えられておらず、実技のみの伝承であり、個々の形の名称は不明なのだという。

 しかし幸いなことに、現存する唯一の流祖・岡田惣右衛門直筆の伝書と伝えられる、石川家伝来の目録に、二刀伝におけるすべて形の名称が記されてる。

 このため、石川家の目録伝書と田丸伝柳剛流の二刀伝の形の順序や本数を突き合せれば、それぞれの形の名称や技の異同などを確認することができるわけで、すでに田丸伝の先生方は、そういった検証をされているのではないだろうかと思われる。



 なおちなみに、流祖直筆伝書に記された柳剛流二刀の形名称は、以下の八カ条である。

 二刀
  上段防(ジョウダンボウ)
  青光刀(セイコウトウ)
  不乱刀(フラントウ)
  青眼破(セイガンハ)
  車水刀(シャスイトウ)
  利支剣(リシケン)
  心剛刀(シンゴウトウ)
  鷹羽剣(ヨウウケン)


 また、流祖・岡田惣右衛門が学んだ流派である心形刀流の二刀形も同じく、以下のような八カ条の伝承となっている。

 二刀
   向満子
   横満子
   横満子残
   刀合切
   相捲
   清眼破
   柳雪刀
   鷹之羽


 
 これら、柳剛流と心形刀流の二刀技法がどのように関連しているのかについても検証できれば、柳剛流研究において非常に興味深い考察のひとつになるであろう。

 (了)
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