風雪流れ旅 '10冬 その2 さすらい旅情編/(旅)
- 2010/01/19(Tue) -
 移動すること、それが私の仕事だ・・・。

 な~んて書くと、ちょっとアメリカン・ニューシネマのロードムービーのようだが、実際のところはそんな格好の良いものではない。

 一夜を長野で明かした翌朝、町は粉雪が舞う雪模様。とりあえず、今日1日の過酷な移動と飯代節約のために、ビジネスホテルの朝食バイキングを、詰め込めるだけ詰め込む。1泊朝食付き4200円の宿だけに、朝飯の内容に期待していなかったのだが、なんとここは、本物のベーコンがあるではないか! エライぞ長野市の『ホテル日興』。

 「40も過ぎると、意外に食いだめもできんもんだ・・・」と中年の悲哀を感じながら、粉雪の舞う長野市を後に、9:03発の篠ノ井線松本行きに乗り込む。松本からは中央本線に入り、中津川で乗り換えて名古屋へ。ここからは東海道本線となり、大垣、米原を経由、京都に着くのは16:42の予定だ。

 乗り換え5回、約8時間の移動である。やれやれ・・・。

 とりあえず、京都までは記事に書くコースというわけでもないので、ぼんやり車窓を眺めるか、あるいは本を読む、そして時々、いや、しばしば寝る。

 今回の旅には、『尾崎方哉句集』(池内 紀 編/岩波文庫)、『武士道』(新渡戸稲造/岩波文庫)、『茶の本』(岡倉天心/岩波文庫)、『ヘミングウェイ全短編3 蝶々と戦車 何を見ても何かを思いだす』(高見浩訳/新潮文庫)の4冊をザックにほおりこんできた。

 一方で、取材がらみの長旅で大切なのは、いかに荷物を少なく、そして軽くするかである。ことに私のように、撮影もするし取材もするというタイプの場合、機材が重くなると取材のフットワークが悪くなる。さらにそれが、列車やバスなど、公共交通機関のみを使って移動する旅(取材)ともなればなおさらだ。

 ということで、北はアラスカ・ユーコン川から南はボルネオの熱帯雨林まで、17年間のトラベルライターとしての経験が凝縮された、究極の軽量化の結果が、「ザック1個の原則」である。

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▲軽量化の極み(笑)。3泊4日の取材旅まではザック1個で行く


 街中にしても、辺境地にしても、とにかく歩き回る取材ではフットワークが命。さらに1か所に何日も滞在する場合は、着替えや日用品は宿に置いておくことができるが、毎日移動しなければならない取材の場合は、撮影や取材の道具以外の日用品も全て持ち歩きながら歩きまわらなければならない。

 こうした場合、カメラバッグとザックの2個編成になると、実に行動しにくいのである。

 ゆえに、3泊4日までは「ザック1個」にまとめるのが原則なのだ。それも、できるだけ小さなザックが良い。なぜなら、いくら旅ものの地方取材とはいえ、60リットルとか70リットルの馬鹿でかい本格的な登山用のザックを背負って料亭とかレストランに入るのは、さすがに気がひけるというものだから。

 なお、カメラ機材を入れるための専用のカメラ・ザックもあるのだが、これはそれ以外の日用品があまりたくさん入らず、フィット感も悪いので個人的にはあまりおすすめしない。

 というわけで、17年間のさまざまな試行錯誤の結果が、上記の写真である。

 20リットルのシンプルな1本締めのリュックに、デジカメ2台、レンズ2本、レフ板1個、ストロボ1個、予備バッテリー1個、三脚、バッテリー充電器、単三電池4個、取材用資料、見本誌、ノート1冊、手帳2冊、筆記用具が収められている。これらに加えて、2日分の着替え、手ぬぐい、サバイバルキット、ファーストエイドキット、本4冊、時刻表1冊が入る。

 ちなみにサバイバルキットは、

・アーミーナイフ、マグライト(ソリテール)、ソーイングキット、絆創膏×3枚、解熱剤×6錠、滅菌ガーゼ1枚、外科用メス刃1枚、救難用ホイッスル、キャラメル3個、コンパス

 を、文庫本よりもひとまわり小さいケース(11.5センチ×8センチ×3センチ)に収めたものだ。

 これが国内及び短期海外用サバイバルキットで、長期の海外や辺境地取材の場合は(最近めっきり減ったが・・・)、これに加えて熱帯なら熱帯、寒冷地なら寒冷地にあわせた装備が追加されるので、もう少し大きなケースとなる。ファーストエイドキットには、一般的な救急用品のほか、自分の常備薬を入れ、これも小型のケースに収める。

 これだけ軽量化にこだわっているのだが、それでも長旅になるほど本はどうしても欠かせない。さすがにハードカバーを持ち歩くのは無理なので、上記のような文庫本中心の編成となる。

 ちなみに、3ヶ月とか半年の海外取材ともなると、決定的に日本語の本に飢えるのだが、たいがい持っていった本は最初の2週間くらいで読みつくしてしまうことになる。そこで詩集や句集など、何度でも読み返すことのできる本を、必ず1冊は持っていくようにしている。あとは、日本人の旅人同士で、本の物々交換をするのもいいだろう。


 ・・・とまあ、そんな旅のうんちくを解説しているうちに、列車は雪に埋もれた木曽の谷間を越え、名古屋をすぎ、予定通り16:42、夕暮れの京都に到着。あらためて長野から京都まで、丸1日かかることを実感した。

 都は遠いのう。


 京都では、おばんざいの撮影・取材。しかし約束の時間は19:30。2時間半も待つのもばかばかしいので、取材時間の前倒しをお願いしてみたところ、快く承諾してもらい、八坂神社近くにある「いもぼう」(エビイモと棒タラの炊き合わせ)が名物の老舗へ。

18 095いもぼう
▲ちょうどいま時分は、エビイモの旬


 京の正統派おばんざいを撮影&取材した後、試食。

 おいしいどすえ。

 8時間移動、1件取材の過酷な1日を終え、四条のビジネスホテルにチェックイン。そしてカップ酒を飲んでとっとと寝る。睡眠は明日の活力だ。


 最終日。

 嵐山で世界遺産の名刹を撮影&取材。そして境内にある精進料理の店で、料理撮影。ただし、ここでは試食はさせてもらえなかった。

 ま、そういう事も、時々ある。

 この場合、記事には単なるメニュー紹介だけで実際の味については記述しないか、あるいは書く場合は妄想で書かなければならない。というわけで、なるべく取材の際には、記者には試食させてほしいもんデス。とくに経費で別途食費が出ないような取材の場合は・・・。

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▲世界遺産で名園を眺める恋人たち・・・、ま、
ユージン・スミスもどきである


 こうして昼過ぎ、2泊3日の過酷な旅は終わった・・・わけではない。

 18きっぷの有効期間は今日中なので、日付が変わるまでに、各駅停車で東京に戻らねばならないのである。京都から東京まで、乗り換え9回、およそ10時間の移動。

 飛行機だったら、成田発でニューヨークを経由、ボストンに着いてるぜ・・・。

 (おしまい)
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