【新訳】早縄 活法 拳法教範図解~その4/(武術・武道)
- 2010/01/28(Thu) -
※本稿の凡例
 太字:原文意訳
 細時:意訳者の注


■柄取


捕(勝つ側)は木太刀を帯刀して進みでる。受(負ける側)、取ともに気合を十分に満たして歩み寄り、自然体で相対する。(互いの間合は、一歩踏み込んで手が届く程度)

双方同時に、左足を30センチ超ほど左斜め後方に引き右半身となる。捕は左手親指で木太刀の鍔を押さえ、下腹に力をいれて構える。

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受は、右足を一歩踏み出すと同時に、捕の柄を両手でつかみ、左足を引きながら(寄り足)木太刀を引き抜こうとする。

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受の動きにあわせ、捕は右足を一歩踏み込み右の手刀の指先で、受の目を横から払うように「霞(目潰しの当身)」を入れる。

受は、捕の霞をよけるために左へ顔をそむける。

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捕は右手で自分の木太刀の柄を下からつかみ、やや腰を沈めるようにして柄頭を、自分の右膝へ引きおろすようにして、受の体勢を崩す。

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捕は右手で受の左手を甲の側からつかみ、左に転身して右足を自分の左足に寄せて両足をそろえつつ、木太刀の柄部分を自分から見て、反時計回りにまわし、受の左手首を極める。

この際、自分の左手は、木太刀の鍔をしっかりと抑えておくこと。

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捕は左足を大きく引いて身体を左に開くと同時に、受けの手もろとも木太刀の柄を下げ落とし、投げ放つ。
受けは受身を取りつつ起き上がり、互いに残心をとる。

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この技は、受の手首が極まっているために投げ放つことができるものであり、稽古時には捕も受も無駄な力をいれたりせずに、気合と技の理合で、技をかけることが重要である。これは、その他の形も同様である。

なおこの形は、天神真揚流と真蔭流を修正した形であり、久富鉄太郎先生と今泉栄作先生と著者・井口松之助の演武を図としたものである。




 市村いわく

 警視流拳法の1本目、柄取の形である。

 警視流の形では、1~3本までは、帯刀した状態で相手を制する、いわゆる「柄捌き」の形となっている。

 この技のポイントは、柄を下げて相手を崩し、崩されまいと踏ん張る相手の力を利用して柄を回して、相手の手首を逆に極める点が第一である。なおこの極めは、現在の合気道で言うところの二教の手首逆と同じ状態(手首の小指側を極めることで、肘関節と肩関節も極まっている)といえば分かりやすいだろうか?

 もう1つは、手首を極めた状態のまま柄を斜め下方向に押し下げることで、極めるのではなく投げ放つ、いわゆる投げ捨てで終わるという点にある。

 実際に試してみると分かると思うが、単に手首を極めて制するよりも、手首を極めたまま、相手を柔らかく投げ捨てるには、柄を通した力を、相手の手首→肘→肩→体幹に伝え、制しつつ崩し、投げ捨てるという点に習熟しなければならない。

 なお力任せに柄を下げてしまうと、逆に相手の手首が裏返ってしまって極めがほどけ、相手から右裏拳や右肘当てなどの反撃を受けてしまうので、「制しながら極めつつ投げ捨てる、適切な力の方向とは?」、という点に習熟することが大切である。

 このため受は、稽古の上では無理に踏ん張ったりせずに、柔らかく捕の技を受けてやり、より効果的な極めと投げの方向を、捕に学ばせようという姿勢がなければならない。

 ゆえに、受=剣術で言うところの打太刀(負ける側)は、上位者が受け持たなければならないのである。

 指導者や上位者が、ばったばったと下位者を投げ捨てるような稽古は、本来の日本武術・武道の伝統的な指導法からは逸脱していることにも留意されたい。

 こうした点も踏まえてか、著者の井口は、「力任せに稽古をするな」とくどいほど強調している。

 ちなみに、投げ捨てた後は、彼我の間に十分な間合ができるので、形の想定としては、もし投げ放った後でも受に敵意があるのなら、捕は抜刀して斬ればよいというのは、言うまでもない。


 いずれにしてもこの形は、警視流の1本目にふさわしく、当身からの崩し、手首逆を極めるための運足、引き足で体を開くことによっての投げ捨てなど、日本柔術らしい合理的な身体の運用がよく表れているといえよう。

 ちなみに関口流(天羽流)柔術の柄捌きのひとつ「柄落」という形は、これとほぼまったく同じ動きを座技で行っているのも興味深い。

 (つづく)

参考文献
『図解コーチ 合気道 技法の修得法』(植芝吉祥丸/成美堂出版)
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