「剣術教習のための手裏剣術~正面斬り」
- 2008/10/27(Mon) -
 「剣術の教習において、気・剣・体を一致させた正しい真っ向正面斬りの刀筋や刀勢を学ぶための補助教習として、手裏剣術を盛り込むことはできないか?」

 武友である戸山流抜刀術の遣い手・棚田勘兵衛氏から、こんな言葉をいただいたのは、先月の交流稽古の後であった・・・。

 戸山流の稽古の後、中津川稽古会の皆さんに、手裏剣術体験として、3間直打や飛刀術などを体験していただいた。その際、戸山流の基礎居合・正面斬りの体動で、2~2間半から直打で打ってもらったところ、手裏剣術初体験ながら、比較的良い刺中がみられた。

 これは、皆さんが、普段の稽古から正しい正面斬りを鍛錬していることから、軸の立った適切な体動の基盤ができているため、手の内や腕の振りが一致し、なおかつ比較的近距離ならば、初心者でも直打での刺中が可能になったと思われる。

 そこで棚田氏より、冒頭のような問いが発せられたわけである。


 さて、ここで思い出していただきたいのが、以下のポイントである。

「3間以内であれば、どんな剣でも、どんな打法でも、直打で打つことができる(無冥流投剣術・鈴木崩残氏)」

 (だからこそ無冥流や当道場では、中距離以上の打剣を目指す初学者の稽古や、剣の性能などを確認する場合には、3間以上での打剣を推奨している)。

 一方で手裏剣術は、3間以上の打剣距離においては、剣術そのままの動きでは的中が困難になる。なぜなら、この辺りの距離から、手裏剣術特有の動きが必要になってくるからである。

 昔からよく言われる、「剣術の体動(手の内)のまま打つ手裏剣術=剣先がちぎれていくように打つ・・・」などという動きは、2間内外、せいぜい3間が限界であろう。5間、6間の距離になると、本人が意識していようがいまいが、必ず剣術とはまったく異なった動きが必要になってくる。

 もっとも分かりやすいのは、手離れのポイントである(詳しくは、『中級手裏剣術 第三版』(鈴木崩残著/無明庵)を参照のこと)。あるいは手の内の操作、振り下ろしの際の手の最終位置など、剣術とはまったく異なってくる。


 しかし以上の点を逆説的に考えれば、「3間未満であれば、剣術の動きそのままで、直打で打剣ができる」ともいえるわけだ。

 そこで今回、戸山流抜刀術の基礎居合・正面斬りの体動を使った手裏剣のメソッドを構築してみた。

 なお、こうした剣術の体動を活かした打剣については、先行研究としてやはり無冥流の「剣術者用の打剣法」や「両手打ちのための鍛錬法から派生した、剣術的な打剣法」などがある。

 今回はこれらの先行研究も踏まえた上で、行田道場オリジナルとしての、剣術の稽古のための手裏剣を使った「稽古術」を組みたててみた。


■「剣術教習のための手裏剣術~正面斬り」

目的/日本剣術の基礎であり極意でもある、真っ向正面斬りの習得に資するため、手裏剣術の鍛練を通して正中線に沿った、正確な腕の斬り下ろしを学ぶ。同時に手裏剣術特有の一打必倒という打剣の「位」を通して、剣術者に必須の「気・剣・体の一致」を普段の稽古とは違った立場から学ぶ。

使用推奨剣/200ミリ・断面6角・径6ミリ・重さ45グラム剣

推奨理由/ネット販売などで入手容易である、比較的安価であること。さらにこの打剣では、極力手の内のことを「考慮しない」ので、スナップなどの操作が必要な、15ミリ以下の短い剣は不適。一方で、長剣は大きさや重量のため、必要以上に手裏剣を意識してしまい「手裏剣術」っぽくなってしまう。以上の点から、重心位置までの滑走距離ができるだけ短く、しかし長剣ほど大きく重くない、200ミリの軽量剣を選んだ。

手の内/一般的な手裏剣術の持ち方で可。

体動/戸山流抜刀術の基礎居合・正面斬り。右正眼から左足を踏み出し、さらに右足を踏み込んで斬り下げる。

その他/手の内の操作(滑走・無滑走など)などは考えずともよい。木剣の素振りとまったく同様に腕を振れば、遠心力で自然に滑走打法となるはずである。手離れの位置も、あまり考える必要はない。的の刺中位置は、上段でも中段でも下段でも可。大切なのは、剣が縦位置・正中線上に正確に沿って集まっているかである。

距離/最初は2間から踏み込んで打剣。なれれば2間半から踏み込み、打剣位置が2間からで稽古を行う。


 これらのメソッドについて、youtubeの埼玉行田道場登録チャンネルに、「剣術教習のための手裏剣術~正面斬り」その1~12として、動画をアップしている。

埼玉行田道場の登録チャンネル
http://jp.youtube.com/profile?user=bugakuclubsaitamagyo&view=videos


動画例




動画タイトル・内容は以下の通り。

その1
素振りと打剣の比較

その2
素振り

その3
2間からの打剣1

その4
2間からの打剣2

その5
2間からの打剣3

その6
2間半からの打剣1

その7
2間半からの打剣2

その8
3間からの打剣

その9
手の内の解説

その10
剣の解説

その11
2種の剣で打剣(2間)

その12
2種の剣で打剣(2間半)

 以上、順番にそって視聴していただくと、分かりやすいかと思う。


 長々と解説してきたが、このメソッドはあくまでも「剣術に資する」ための稽古法であり、手裏剣術の上達のための稽古を目的としていない。だからこそ、あまり難しく考えず気軽にためしてもらえれば、剣術や居合、剣道などの稽古者ならば、おそらく2間から踏み込む打剣ならば、2~3時間もあれば、数本程度の刺中が出てくるだろう。

 これを厳しく突き詰めて自らの稽古に役立てるもよし、あるいはちょっと目先を変えた、気分転換的な稽古法として用いても良いかと思う。

 最後に、こうした興味深いテーマをくださった戸山流の棚田勘兵衛氏、またこの方面において貴重な先行研究を示してくださった無冥流の鈴木崩残氏に、あらためて感謝申し上げます。

市村翠雨 頓首

●2008/10/27 一部修正。

 画面が重くなりすぎるというご指摘があったので、動画をサンプル1点のみとし、後は登録チャンネルへのリンクを張りました。

 また、稽古法の名称について、『「気・剣・体一致のための剣術教習」のための手裏剣術』から、「剣術教習のための手裏剣術~正面斬り」にあらためました。

 
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