ニセ医療にご注意! ~武術家の眼から見たインチキ検査/(医療・福祉)
- 2010/03/11(Thu) -
 過日、とある医療関係の編集者と話しているとき、「最近こういうのがはやっているらしんですが・・・」と話題になったものがある。

 ”Oリング・テスト”なるものだ。

 このテストは次のようなものだという。

 まず被験者は、右手の親指と人差し指で”輪”を作り、残りの3本の指を伸ばす。

 そして左の手のひらに、薬なり、食品なり、携帯電話なり、まあとにかく何でもいいので、調べたいものを載せる。

 この状態で、検査者は、被験者が作った右手の輪に、自分も指で輪を作って指と指を鎖状につなぐ(写真)。

DSC_3788.jpg
▲この写真は、一人でやっているので、左手のリングに右手のリングをつないでいるが、実際には右手同士でやるらしい・・・。ま、実際には、右手だろうと左手だろうと関係ないが

 この状態から、検査者は自分の指で作った輪を引っ張り、被験者は相手の指が外れない(自分の指で作った輪が開かない)ように力を入れる。

 すると、被験者の左手の上に載せたものが、その人の健康にとって良いものであれば、自分の指で作った輪はなかなか開かず、逆に健康に害のあるものであれば、輪が簡単に開いてしまうそうな・・・。

 ・・・。

 ま、これが子供の手慰みだとか、飲み屋のカウンターでの軟派の小技というなら、別にどうでもいい。

 おそろしいことに、このOリングテストを真に受けている医師や歯科医などがいて、実際の治療の場で、薬剤の選択や食事・栄養指導などに取り入れているというのである!

 医療記者の端くれとして、日々、医者や看護師、介護職などに接することが多い私としては、「まさか、冗談でしょ?」と思ったのだが、このテストの創始者(笑)という人物が運営する協会のホームページを見ると、うそかまことか医者やら歯医者やらの実名や体験記、このテストを絶賛するコメントが、ざくざく書かれているのである。

 さらにいくつかのwebを見ると、本当に内科の診療所とか歯科医院のページなんかで、このOリング・テストのことが紹介されているのだ!


 EBM(根拠に基づいた医療:Evidence-based medicine)が提唱されて久しいなかで、医者や歯医者とはいえ、教養が欠如した人物は一定割合いるのだろうが・・・。

 こんなニセ医療で、薬を選ばれたり、医学的な食事・栄養指導をされた日には、治る病気も治らないというものである。それどころか、このインチキ検査が原因で病状が進行し、結果として生死にかかわる重篤な状態になってしまったり、回復不能な障害が残ってしまいかねない。

 だからこそ、ニセ医療は厳しく追及されねばならないのである!


 さて、このOリング・テスト、武術とくに古流柔術のたしなみのある人なら、すぐにピンとくるのではないだろうか?

 ようは手解(てほどき)系の技とまったく同じ原理なのだ。

 輪が解ける場合は、親指と人差し指の接触点を水平方向にひっぱっているはずだ。こうすると、どんなに指に力が入っていても、簡単に輪は解ける。

 逆に輪が解けない場合は、親指と人差し指の接触点ではない部分を引っ張っているか、あるいは接触点でも水平方向ではなく、上下いずれかの鉛直方向に角度をかけて引っ張っているはず。こうすると、ほとんど力を入れなくても、指で作った輪が解けることはない。

 初歩の柔術で教わる、手首などのはずし技と同じなのである。

 この場合、検査をする者自身が自己暗示にかかっているので、被験者が左手に載せているものを見て無意識のうちに、

「左手に載っているのがタバコだから(健康に悪そうなので)、相手の指をはずしやすい方へ引っ張る」、

 あるいは、

「左手に載っているのが有機野菜だから(健康に良さそうなので)、相手の指をはずしにくい方へ引っ張る」

 などと、選択的な動きを行ってしまうのである。


 ここで疑似科学に詳しい人なら、さらにピンとくると思うが、これってあの昔なつかしい、コックリさんと同じ原理でもあるわけだ。


 いずれにしても、このOリング・テストなるものは、疫学的調査で有意なデータが示されているわけでもなく、その検査の機序(しくみ)が客観的に示されて、科学的に検証されているわけでもない。

 つまりインチキな検査法であり、それに基づいて行われるニセ医療なのである!

 コックリさんのトリックが科学的に解明されて、すでに100年以上がたっているというのに、いまだこんなインチキが社会でまかり通り、それどころか本来、最も科学的でなければならない医療の現場に病原菌のように侵食を続けているというのは、実に恐ろしいことだ。

 皆さんも、かかりつけの医者や歯医者が、「左手にこの薬を載せて、右手の親指と人差し指で輪を作ってください」とか言い始めたら・・・、ご注意されたし!!


注意

このOリングテストといっけん似たものに、形成外科の医院で行われるフロメンテストがある。

フロメンテストは肘部管症候群の診断などに用いられるもので、紙を患者の親指と人差し指の間に挟んで検者が引っぱるというもの。

このテストは、生理学的・医学的な根拠に基づくもので、Oリングテストとはまったく関係のない、正しい検査法なので誤解されないように!

(了)
スポンサーサイト
この記事のURL | 医療・福祉 | ▲ top
| メイン |