【新訳】早縄 活法 拳法教範図解~その6/(武術・武道)
- 2010/04/22(Thu) -
※本稿の凡例
 太字:原文意訳
 細時:意訳者の注


■柄搦


1 お互い間合いを詰めるまでは、これまでの形の通り。一歩踏み込んで手が届く距離で、自然体で相対す。受(負ける側)は右足を一歩踏み出して、取(勝つ側)が帯刀している刀の柄を両手でつかんで引き抜こうとする。


図1


2 取は、下腹に力を入れ気合を込め、受が刀を引き抜こうとする動きに合わせて、右足を一歩踏み出す。同時に、前~本図の点線のごとく受の両手を甲の側からつかみつつ、相手の体を後上方に押し上げて崩す。

図2


3 取は、受の体勢の崩れに乗じ柄頭を右に回すと、受の手が外れ、同時に受の右手首の関節が逆に極まる。取は右手を離して体を右に開きなが、受の右手首を両手と柄で制しつつ左ひざを着いて右足を開き、下腹に力を入れて制す。その後、双方離れて残心をとる。なおこの形は、立見流の中から選んだものに、故逸見宗助先生が修正したものである。

図3


■市村いわく。

 警視流の3本目、柄搦の形である。

 これも柔術諸流では一般的な手首逆の技・小手捻りを使った形である。

 最大のポイントは、まず我の刀を引き抜こうとする相手の動きを利用して、相手の体勢を後上方に崩す所にある。その際、拍子が合えば、このまま相手を後下方につぶす、あるいはさらに相手の反射を利用して前方下に投げ捨てることも可能であろう。

 しかし、この形の表現では、そのような形にはせず、後上方に体勢を崩された相手が、バランスを取り戻そうと重心を前下方に戻す動きを利用して、柄頭を回して手首の逆を取り、そのまま制する。

 さて、その際の手首逆の取り方であるが、原著では我の左手で彼の右手の甲をつかみ、我の右手は我の柄頭をつかんだ状態で体を右に開きながら手首逆に極めている。

 しかし、実際には、柄を右に回して柄逆にした後は、むしろ我の右手で彼の右手を小手捻り状に制し、我の左手は刀の鍔を抑えながら、柄の中心で補助的に彼の肘また前腕中間部を制した方が合理的だと思うのだが、いかがだろうか? 諸賢のご意見を承りたいところである。

 いずれにしても、この形も1~2本目と同様、我の刀を捕ろうとする相手の動きをそのまま利用して相手の体勢を崩す、柔道原理でいうところの「崩しの理」が最大の骨法となる点に留意されたい。

 また最終的な極めについても、手首への逆技で制するというよりも、手首を彼我の接触点として、我の重心(丹田からの力)で相手の全身を制するという意識が重要である。


 以上、3本で、警視流の柄捌きの形は終了し、4本目の「見合取」では、これまでの形とは逆に、素手の我が帯刀している相手を制する形となる。


■警視流の柄捌きの総評

 警視流の形における柄捌きは、1本目「柄取」が小手捻りからの投げ捨て、2本目「柄止」は脇固め、3本目「柄搦」は小手捻りとなっている。

 いずれも柔術諸流では、普遍的な技であるといえよう。

 柔道原理の「崩し理」から見ると、1本目は前方の崩し、2本目は左前への崩し、3本目が後上方への崩しとなる。いずれの形でも、この「崩しの理」が体得できていないと、自分よりも腕力のある相手には、技が効かないことは言うまでもない。

 また、3本の形の中では、1本目の「柄取」の逆投げが最も難しい技となる。

 この場合、実際には、よほど我と彼との拍子が合わない限り、あるいは馴れ合いでない限り、形のように手首逆に極めつつ投げ捨てることは難しい。しかし、我の柄にかかった相手の両手を切り落としてしまえば、あとは抜刀して剣で斬りつけるなり突くなりすればよいわけで、形の表現は、あくまでも原理(理合)の記号化にすぎない。

 ただし指導者がこの点を理解してきちんと指導しないと、教わる側が「実際には遣えない・・・」などという、皮相な理解に終始してしまうので注意が必要であろう。

 一方で、2本目と3本目は、原理の記号化というよりも、多少雑でも実際に使える具体的なスキル(技術)となっている。

 つまり、まず1本目を通して記号化された「自然体の理」、「柔の理」、「崩しの理」という柔術の普遍的原理=極意を体験させ、2~3本目で具体的な技である脇固めと小手捻りを体得する、という構成になっているわけだ。

 このように形単体ではなく、一連の構成としての「形の体系」についても、稽古者は十分に注意を払わねばならない。

 警視流は時代の要請に基づいた促成の体系であったとはいえ、編纂者はその限られた条件のなかでも、最大限、伝統的な日本武術特有の「形の体系」というマクロ的な理合を踏襲した点に、100年後の武術・武道人として大いなる敬意を評したい。

(つづく)

※2010.4.25 崩しの方向に関する記述の誤りなど、一部訂正
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