特別稽古 指導備忘録/(武術・武道)
- 2010/10/11(Mon) -
日時/2010年10月10日 12~17時
生徒/M・S氏(米国在住)
履歴/幼少時、短期間、抜刀術の指導を受ける。以後、20数年間、書籍などを頼りに独学で斬りの稽古(試斬)を行う。
特徴/M氏は、ほぼ完全な試斬専門の独習者。同様の経歴の者や、外国人に見られがちな「力み」や「けれん」は、意外に少ない。
目的/剣術、居合・抜刀術の基本的な所作、普遍的な理合を知る。
指導内容/翠月庵の基礎剣術(正面斬り、左右袈裟斬り、突き)、基礎抜刀術(刀礼、抜付、正面斬り、袈裟、逆袈裟、横払い、納刀)、初級剣術/組太刀5本(一、摺上 二、切落 三、袈裟 四、胴突 五、波斬)
指導要綱/基本的所作の確認。構え・太刀筋の確認、形稽古による「間合」「拍子」「残心」「位取」などの普遍的な理合の理解。
指導/市村翠雨
助教/翠月庵・K氏
協力/鈴木崩残氏(無冥流)


■所感

●「基礎剣術」編の課題
・袈裟斬りの稽古に偏向していたため、剣の振り上げ時に、剣全体が左に傾く。まっすぐ振り上げ、まっすぐ切り下ろすことに習熟していない。
・居着いた状態での斬りに特化しているため、運足と斬り下ろし、体幹の移動が一致していない。
・袈裟斬りの際、切下しとともに上体と剣先が流れ、軸が崩れる。
・真っ向正面斬りに習熟していないので、斬り下ろしの際、剣先がぶれる。
・有声の気合に慣れていないため、気・剣・体の一致がない。
・晴眼の構えの際、肘が伸び、上体が硬い。
★改善
・基礎剣術(素振り)の習熟。気・剣・体の一致に留意すること。

●「初級剣術」編の課題
・間合の見切りが未熟なため、物打での斬撃にならない。
・斬撃の際、腰が折れ軸が崩れる。
・残心の意識が薄い。
・有声の気合が未熟。下丹田からの発声ができていない。
・「エイ(ei)」という発声が、気を抜くとつい「キアイ(kiai)」となってしまう。(ただし、「気合(kiai)」という単語が名詞であることは、本人は理解している)。
★改善
・初級剣術(組太刀)5本の習熟で、間合の見切り、体幹の移動、残心の取り方と意味、武技としての有声の気合を学ぶ。

●「基礎抜刀術」編の課題
・収刀の際、親指・人差し指・中指で刀をせめるクセがある。
・抜付の際、剣先が右に流れ、正中線が開きすぎてしまう。
★改善
・当初は収刀の際、刀をせめない方法を指導したが、本人がせめる方法に習熟していること、普段から真剣を用いていることから、収刀法を変えるとかえって指を傷つけてしまいそうなため、あえて修正をしないこととする。
・手之内の締めと「残心」の意識で、抜刀時の剣先の流れを防ぐ。

●雑感

 全体的に斬りの稽古に特化した者特有の、斬り下ろし時の剣先の流れ、上体の崩れ(不要なねじり)、晴眼の構えの際の硬さ(肘が伸びてしまう)、真っ向正面斬りの未熟さが目立った。

 これらについては、基礎の素振りを反復しながら、入念に問題点を指摘。改善に努めた。

 「気合は武技である」という意識がなかったため、斬撃に合わせて有声の気合を反復させた。しかし下丹田からの発声は、なかなか難しく、ともすると胸からの発声になってしまった。「気合(発声)は武技である」という点を、十分に説明し、理解を促した。

 「エイ(ei)」と気合を掛けるということは頭で理解しているものの、斬り下ろしや運足、形の所作、下丹田からの発声に気をとられてしまうと、どうしても「キアイ(kiai)」と発声してしまうようであった。

 擦上げや受け流し、勝太刀(切落)など基本的な「技」については、形の反復で、比較的容易に理解させることができた。

 本人の性格もあり、思ったよりも力みやけれん味がなかったため、指導そのものはたいへんスムーズに行うことができた。

 「位」という理に導くための入口としての、「残心」について、形やその応用、拍子も含めて入念に指導し、理解を促した。

 身近に稽古相手がいないということで、組太刀の稽古が日常的にできないというのが、今後の継続的な課題である。次善の策として、基礎剣術・初級剣術の所作を、動画撮影し、以後の教材とした。

 指導においては、指導者以外に助教がいることで、たいへん効率的な指導ができる。

 組太刀指導の際、木太刀に鍔は必須である。

(了)
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