銃に対する護身術?/(武術・武道)
- 2012/12/21(Fri) -
 米国で起きた乱射事件の影響か、ここ数日、複数の人から「銃に対する護身のコツは?」などという質問をいただいた。

 ・・・・・・。

 無駄な抵抗をしないことデス。

 以上。



 で、終わってしまうとさすがに何なので補足を少々。

 まず第一に、今の日本人で、散弾銃でも狩猟用ライフルでも、自動小銃でも拳銃でも、なんでもいいけれども、射撃の経験がある人がどれくらいいるのか?

 あるいは、今の日本人で、散弾銃でも狩猟用ライフルでも、自動小銃でも拳銃でも、なんでもいいけれども、自分に向かって「発砲された」経験のある人がどれくらいいるのか?

 いずれも、非常に少ないかと思う。

 こうしたレベルで、銃に対する護身のコツもヘチマもなかろうというものである。

 射撃の経験の無い者が語る銃に対する護身術など、童貞が語る性行為みたいなもんだ。

 (たとえが下品でスミマセン・・・)


 たしかに武術・武道には、対銃器を想定した技(型)がある。

 特に中国武術では、空手奪槍(「槍」とは、小銃のこと)などといった技が、よく研究されている。また日本武道でも、たとえば講道館護身術や八光流柔術などには、拳銃取りの型がある。

 がしかし、上記のように、撃つにしても撃たれるにしても、あまりにも現代日本人にとって、「銃」という存在が現実離れしているために、正直、日本武道の対銃器の護身技に、どれほどの効果があるのか、多いに疑問だ。

 もっともこうした問題は、近代に対銃器の技を編纂した先師の方々も、十分承知だったろう。

 たとえば、講道館護身術を制定した富木謙治師範は、著書『講道館護身術』(ベースボール・マガジン社/1958年)で、次のように述べている。

「拳銃についての護身の技は、従来日本武術としていろいろ発達している他の武器の場合とは異なり、外来のものである」

「(背面付の解説において)要するに、この技は実際問題として冒険に属するものといわなければならない」

 警察官をはじめとした法執行機関職員は、銃器の少ない日本においても銃火の危険にさらされる蓋然性が、われわれ民間人より高い。ゆえに武芸の先師の方々が苦心惨憺し、最大限の努力で対銃器の技を編纂したのである。

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  ▲講道館護身術21本目「背面付」の型


 とはいえ最近は国内でも、残念ながら一般の人が、銃犯罪に巻き込まれることが皆無ではない。

 そこで重要なことは、

1.そもそも、銃犯罪に巻き込まれないように暮らす(日常生活における、「位取り」と「先」、そして「間合」を考えよ!)
2.それでも、不運にして銃犯罪に巻き込まれたら・・・・。
  a.銃の打ち合いに巻き込まれたら、姿勢を低くして伏せる。遮蔽物に身を隠す
  b.銃が自分に突きつけられたら、基本的に抵抗しない
3.どうしても、抵抗しなければならない場合
  a.相手が自分の手の届く位置まで接近したときに、動作を起こす
  b.最初の一挙動で銃口をそらす
  c.一度行動を起こしたら、断固として相手を制圧する(さもないと死ぬ)

 などである。


 私自身の「銃体験」を思い返すと、初めて銃に触れたのは小学生のころ。

 生まれ育った伊豆の山奥は狩猟の盛んなところで、毎年11月からは「てっぽうの季節」であり、よく近所のおじさんに山に連れて行ってもらったものだ。そこで、銃の重さ、発砲音、そして圧倒的な破壊力を知った。

 20代から30代にかけては、仕事で海外に行くことが多く、米国や豪州、タイなど射撃練習が可能な国では業務の合間をぬって、できるだけ射撃の稽古をした。

 こうした限られた経験からいっても、銃を知らない日本人による武術・武道を用いた対銃器の護身術など、ある意味でちゃんちゃらおかしいのである。

 なんなら、私レベルの「初歩的な射撃経験者」に、おもちゃのガスガン(拳銃でも、小銃でも、短機関銃でも可)を持たせて、距離5ヤード(約2間半)程度で対峙してみればいい。ほとんどの武術・武道人が、ölüm(オェルュム)、間違いなしだろう。

 間違っても、抜刀術や手裏剣で、銃と戦おうとか考えないように!

 5ヤード以内の至近距離でも、動作の起こりを捉えてキルゾーンにダブルタップで、やっぱりölümだ。


 ゆえに誤解を恐れずに言えば、銃に対する最も手っ取り早い護身は、こちらも銃で武装することなのだ。

 だから街中に銃器があふれている米国では、それらの銃から自分や家族の身を守るために、さらなる銃器が必要とされており、結果としてガン・コントロールが一向に進まない、悪循環が繰り返されているのである。

 銃から身を守るために、銃で武装する。

 なんとも、むなしいことだ・・・。


 ひるがえって日本において、かつて人殺しの道具であった「刀剣」は、先人たちの努力により、技芸としては“殺人刀”から“活人剣”に昇華され、武具たる刀剣そのものは精巧かつ美麗な美術工芸品として、現代に至っている。

 「神武不殺」という日本武芸の思想の崇高さを、今改めて実感する。

 (了)
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