新春妄言/(手裏剣術)
- 2013/01/08(Tue) -
 世間様も、いよいよ昨日あたりから、平成25年が本格的に始まったのだろうか。

 ま、私は(望んだわけではないが・・・)元日から仕事はじめ&稽古はじめだったので、今週もいつもの月曜であり火曜である。

 おまけに、大物の書籍の仕事2つと、ルーチン記事の仕事などが洪水のように押し寄せており、3月まで心が休まるときがなさそうだ。

 働かざるもの、食うべからずということか。

   *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 某武術研究家氏のブログを読んでいたら、「木の箸を手裏剣に打って、フライパンを貫通、云々・・・」という記述があった。

 「菜箸でフライパンを貫く・・・」、という話は、手裏剣術界隈(どんな界隈なのだ?)では、よく知られた話である。

 ただし、それが事実かどうかは検証されておらず、「・・・という話しがある」というエピソードのみが、都市伝説のごとく、繰り返し語られている。


 斯界の末席にいる者として、この話題については、一言明言しておかねばなるまいと思う。

 まず私自身は、「菜箸を手裏剣に打って、フライパンを貫通させる(させた)」という噂話は何度も聞いたことがり、読んだことがあるが、そうした演武なり動画なりを見たことは、一度もない。

 手裏剣術を稽古する者として、そんな優れた技が実際に可能であれば、ぜひ拝見したいと思う。

 一方で、手裏剣術者として、市村個人の見解を明言すれば、たぶん「菜箸や普通の箸を手裏剣に打って、フライパンを貫く」という話は、

 単なるデマ


 あるいは、

 妄想の産物

 または、

 姑息な旦那芸

 のいずれかであろうと思われる。


 一般的なフライパンの材料は、鉄のほか、アルミ、チタン、ステンレス、銅などが使われている。

 その厚みは、例えば日本を代表する鉄製フライパンメーカーであるリバーライト社のフライパンの場合、1.6mm、2.3mm、3.2mmなどのラインアップになっている。

 あるいは玄人好みの鉄打ち出しで知られる、山田工業所の中華鍋は、1.2mmと1.6mmだという。(『鉄の厚み考察』http://kpayas.exblog.jp/16446358より)

 一方で、菜箸は一般的に長さは一尺(約30㎝)程度で、主な材質は竹である(最近は、シリコン製などもあるらしい)。菜箸でない普通の箸は、長さ20㎝前後で、材質は竹や木などの木材が一般的であろう。


 では、ここで想定。

 リバーライト社製の鉄製フライパンで一番薄い1.6mmのものを、長さ一尺の竹製菜箸を手裏剣に打って貫通できるか?

 打法や距離は自由とする。

 「できる!」という人があれば、私がフライパンと菜箸を準備し、交通費も負担し、一般的な職業人の日当相当の謝礼も用意させていただくので、ぜひその妙技を見せていただきたいと思う。

 なお、ここで重要なのは、「フライパンと箸は、公平性を期するために、演武者以外の第三者が用意する」ということだ。


 何かを仕込んだかもしれない「特殊な箸」や、韓国料理などに供されるような鉄製の「一般的でない箸」を使ったり、厚さ1.0㎜以下で材質も不明の、「一般的なフライパン」とは到底いえない、ペラペラの「フライパンもどき」を、打ち抜いたというのであればそれは、厳密かつ普遍的な意味で、

 箸を手裏剣に打って、フライパンを貫通させたとは言えない

 だろう。

 
 「木太刀で、竹を斬った」などという、これまたいまだに耳にする、トンチンカンな妄想やデマと同様に、いい加減この手の妄言を流すのは、やめていただきたいものだ。

 ま、ざっかけに言ってしまえば、

 「ふつうの箸を手裏剣にして、本物のフライパンは貫けない」

 ということであり、

 「木太刀では、竹の試物は斬れない」

 ということである。


 武術を「実学」として捉え活かすためには、こうした武術界に蔓延してきた、根拠不明の「達人幻想」からの脱却が、必須であろう。


 なお蛇足ながら、「箸を手裏剣として打つ」行為そのものは、武術として十分に意義のある「術」であることは、言うまでもない。

 (了)
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