打根小論/(武術・武道)
- 2013/02/10(Sun) -
 昨夜、鯨の刺身を肴に深夜の時代劇専門チャンネルで『子連れ狼(第二シーズン)』を見ていた。

 その際、拝一刀が、

「打根だ。手投げで3間、弓を使えば倍は飛ぶ」とのたまっていた。

 打根とは、長さ30cmから50cmぐらいの矢の形をした物に、手槍の矛先のようなものを付けた武具だ。

無題1
▲『図解 手裏剣術』藤田西湖著/名著刊行会より(以下、同)


 私は打根を使った演武というのは拝見したことがないのだけれど、現在も日置流弓術の別伝として伝わり、日置流印西派摂津系同門会が現在も伝承しているという。

 同会のホームページ(http://settsu-insai.net/uchine.htm)には、打根術の演武の写真が3枚掲載されている。

 1枚は、弓の先端に小型の穂先(はず槍)をつけたものでの対剣術の技、残りの2枚は上記のようないわゆる打根(演武では代わりに木の短棒を使っているようである)での対剣術の技のようだ。

 おそらく打根の刺突武器としての使い様は、たとえば当庵における長剣を使った掌剣術に近いものであろう。

 つまり武具としては一尺ほどの長さと手さばきの良さを生かし、刺突を中心に、打つ、払う、などの動きを用いる。身体の運用は、間合の短さを入身や捌きをもって補い、対剣術の攻防を術技の中心とする。場合によっては、短棒術や鼻捻術のように、ある程度の極めや逆技もあるのかもしれない。

 機会があればぜひ、同会の演武を拝見してみたいものだ。

無題3
▲この持ち方で使うとすれば、やはり「斬り手」がポイントになるであろう。というか、柔術の当身にしても、打刀の手之内にしても、短棒や鉄扇の握りにしても、「斬り手」などあまりに当たり前のコツすぎて、ことさら教えることですらないか(笑)。そのわりには、「斬り手」ができていない人が、少なくないのだよねえ・・・


無題4
▲「七 打落」や「九 受留」は、日本剣道形の小太刀の形の3本目(打太刀の斬りを、擦上げて摩落とし、さらに擦流して、相手に寄り身して剣先を喉に附けての位勝ち)などの動きを参考にすると、理解しやすいだろう。いずれにしても、剣術や小太刀、柔術の素養があれば、十分に遣うことのできる武具だ(逆に言えば、それらの素養がないと、遣うことは難しかろうね・・・)


 さて、ここまでは打根の刺突武器としての面について述べてきたが、投擲武器としてはどうか?

 威力については、両刃状の穂先とその大きさ・重さから、手裏剣よりもはるかに殺傷力の高い武器であろうことは、論ずるまでもない。おそらく、われわれが的に使っているような畳など、5間間合いでも余裕で貫通するのではないだろうか。

 打ち方についても、手裏剣術の直打のような相当の修練が必要な難しい打法ではなく、投げ槍のように打つので、だれでも簡単に打てるはずだ。

 間合について、冒頭、拝一刀は、「片手で3間・・・」と言っているが、このサイズと重さを考えれば、もっと遠くまで打つことができるはず。なにしろわれわれは、打根よりもはるかに小さくて軽い手裏剣で、5間とか7間とか打ってるのだから(笑)。

 ただし、ここで問題となるのが、打根の特徴である矢に結ばれた「紐」である。

無題2
▲手裏剣と違って、打根は投げ槍のように構えて打つ。技術的には、手裏剣の直打よりもはるかに簡単に、そして遠くまで打つことができるだろう。一方で2間くらいの近距離であれば、翠月庵の飛刀術のような打ち方も可能だ


 この紐を使い、「打根を敵に打ちつけては、手元に引き戻す」とのことだが、実際にはどうだろう?

 打根を打たれる側になって考えれば、打ちつけられた打根をかわした後、相手がノコノコ紐を手繰って引き戻しているなら、その間に一気に踏み込んで斬り伏せる。あるいは紐を踏んづけてやってもいいし、その場で紐を切ってしまうこともできる。

 逆に打つ側に立って考えても、打ちつけた打根を紐を手繰って回収する暇があったら、次の打根を打つか抜刀して斬りつけたほうが、よほど合理的ではなかろうか?

 またこの紐の長さによって、打根そのものの飛距離が制限されてしまうというのも、武具としてはマイナス点であろう(この紐の長さについては、たぶん古伝で定められた寸法があるのだろう。おそらく3間前後の長さなのではあるまいか?)。

 こうして考えると、この紐はあまり有意なものではないように思える。

 ただし、古流の武芸というのは基本的に秘密主義でえげつないので、表向きには「回収するための紐」としているが、実際には「使うときは紐を結ぶな・切っておけ」などという口伝があったり、あるいはこの紐を使った固めや極めの技があったりするのかもしれない・・・・。


 いずれにしても、手裏剣術を稽古する者としては、打根はかなり気になる武技であり、武具である。

 機会があれば実際の打根を手にとって、検証してみたいと考えている。

 (了)
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