人はなぜエセ武芸に騙されるのか
- 2009/01/06(Tue) -
 指一本で触れただけで、相手が吹っ飛んでいく! 数珠繋ぎになった相手が、次々と倒れて動けなくなる! 触れずに離れた場所の相手を、ばったばったと投げ飛ばしていく! 距離15間で手裏剣が標的を貫通する!!!!!

 ・・・。 

 まあ、インチキ系の見世物武芸でよくあるパフォーマンスの数々。youtubeなどに、こうした「旦那芸」の動画は山ほどあるわけだが、今も昔も、武術・武道には、こうしたヤラセやトリックというものは、つきものである。

 そういう意味で、先日、無冥流の鈴木崩残氏が、12間距離から手裏剣でスプレー缶を射抜く! という超絶技・・・の「トリック」を、タネあかしも含めて披露されていたのは、非常に楽しく拝見した。

デモンストレーション
http://jp.youtube.com/watch?v=Hl0WDehMPro&sdig=1

タネあかし
http://jp.youtube.com/watch?v=HgWfVv1GwNM&sdig=1

 はじめ、私は上記の動画を、前後の順番や並び順の意図など顧慮せずにアットランダムに見ていたので、なおさら素直に「12間! なんと!」と、たまげてしまった。さらに、上記動画の前に、女性がやはり10間くらいの距離で缶を打つ動画があるのだが、これも「す、すげ~!」と、まじめに感動してしまったのである。

 いやはや、トリックとは恐ろしいものだ(笑)。

 
 私も未熟ながら手裏剣術の普及・啓発、あるいは自己の稽古記録の一貫としてyoutubeなどに動画をアップしているけれど、映像やデモンストレーションというのは、たいへん難しい問題をはらんでいるものである。

 まず前提として、特に手裏剣術やナイフ・スローイングの場合、「刺さってナンボ」という大命題があるので、だれでも簡単に動画撮影ができるようにった現在では、他の武術・武道以上に、動画での記録とその発表というのは大きな意味を持つ。

 直打で10間通すと「クチで言うだけ」なら、小学生のオトモダチでも出来るわけだ。

 だからこそ、手裏剣系の動画では、

1 術者と的までが、ワンフレームで映っていること
2 打剣から刺中している的の様子の確認映像まで、カットなし、編集なしで撮影されていること
3 術者の全身がすべて映っていること

 以上の3点が、撮影の際の基本となる。もちろん、部分的な解説映像などでは、この限りではないのは言うまでもない。さらにできれば、距離についてはメジャーなどを引いて目印を設置しておき、目に見える形で距離を示すことが出来れば、なお良い。

 こうした配慮をせずに、10間直打とか、標的を貫通とか、時速360km/hで飛ぶとか、朝鮮のニンジャとか、電話で気を入れるとか、精妙な身体操作とか(なんだか違う方向か?)、ああだこうだと言われても、「ふ~ん、で?」、としか言いようがないわけである。

 しかも上記の1~3の条件をクリアしても、先述の崩残氏の解説映像のように、騙す気になればトリックはいかようにもなるところが、「映像」や「演武」の恐ろしいところだ。そういう意味では、むしろ証拠映像や実演ほど怪しいものはない、ともいえるのである。

 一方で、武術・武道人というのは、基本的にイノセントな人種なので、デフォルトで「演武や試技には、やらせはなし」と、頭から思い込んでいる風潮がある。基本的に善人というか、単純というか、まあそういう人が少なくない(笑)。

 だからこそ、超絶的な技の(トリック)映像、あるいは実技でも暗示的、感応的な「旦那芸」に自分自身が一度ひっかかると、とたんに信者化、そしてカルト化してしまう傾向があるわけだ。

 こうした点からも、武術・武道人には、もっと科学的、懐疑主義的な視点や手法が必要であるし、普段の稽古、生活から、こうした「科学的なアプローチ」を心がける必要があろう※。まあ、「脳みそまで筋肉」なのが多い世界なので、難しいだろうけども・・・。

 さもないと、10年15年師事した後で、「結局、私の師匠はインチキでした」などということになり、人生の貴重な時間を無駄にすることになりかねないし、すでにそういう人が山ほどいるのが、この武術・武道という世界なのである。

 いつの世もトリックは、「見て、驚いて、楽しめる」、娯楽であってほしいものだ。


※参考:科学的アプローチのための"トンデモ話検出キット”

・裏づけを取れ
・議論のまな板に載せろ
・権威主義に陥るな
・仮説は複数立てろ
・身びいきをするな
・定量化しろ
・弱点をたたき出せ
・オッカムのかみそり
・反証可能性

(『人はなぜエセ科学に騙されるのか』カール・セーガン著/新潮社より)

  
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