「非人捕」と関節蹴り/(武術・武道)
- 2013/05/02(Thu) -
 連休前半は、俗世間を離れて過ごしていた・・・。


 どういうわけか眠れないので、未明から朝まで稽古。時間が時間だけに、近隣の迷惑にならぬ程度に、手裏剣を打ち、居合を抜き、体術を少々。

 以下、本日の備忘録。


 体術の稽古で、関節蹴りに関して少々、思うところあり。

 それに関連して、関節蹴りを用いる古流柔術の技に「非人捕」(※注1)というのがあったはずなのだが、これの所作が思い出せず、稽古後、武芸関連の書架をごそごそとあさる。

非人捕1
▲『極意図解柔道新教範』(菅原定基著)で解説されている「非人捕」。本書は大正14年発行の関口流柔術の教本で、小佐野淳先生の解題・解説と合わせて、平成3年に復刻出版されたもの


非人捕2
▲関口流の「非人捕」は、相手の後襟を掴みながら、ひかがみ(膝の裏)に蹴りを入れて後ろに引き倒し、裏拳で眉間に当身を入れて極める業である


 子供のころ、後ろからトモダチの膝裏に自分の膝頭をこっそり押し付けて「ガクン」とさせる「ヒザカックン」なる遊びが流行ったことがあったのだが、関口流のこの技、同じ原理である。

 ただし武技なので、相手に後ろから近づき、膝裏に下段前蹴りをぶち込みながら、同時に後襟を掴んで引きずり倒し、さらに当身で極めるという、えげつない技だ。

 著者の菅原定基も、「これは誠に素早き捕り方なり。(中略)この捕り方は後ろより不意にかかるゆえ、卑怯にもあれば・・・」と書いている。

 
 空手道を中心に稽古をしていた頃、他流ながら出稽古で私たちを熱心に指導してくださったT先生がいた。この先生は、私に「抜き胴式の回し蹴り」や「内捻式の前蹴り」などを教えてくださった、蹴り技の名手であった。

 そんなT先生が、「市村さん、試合には使えないけどね、こういう蹴りも覚えておきなさいよ」と教えてくれた技のひとつが、関節蹴りであった。

 先生の指導してくださった関節蹴りは、すれ違いざまに右手で相手の右奥襟を引き下げながら、相手の右膝を横や斜め後方、あるいは後ろから足刀で蹴り潰すというものだ。

 この際、足刀を膝の横や斜め後方から蹴り込むと膝が壊れてしまうので、地稽古の際には、先述の「非人捕」のように、真後ろからひかがみに軽く蹴り込まれるのだが、これを食らうと、思い切り「ヒザカックン」状態になったものである。

 若い頃は、どうしても派手な上段蹴りなどに夢中になるものだが、歳を重ねてくると、こうした玄人好みの冴えた小技に惹かれるようになる。


 そんなこんなで、朝まで「バッサイ大」の掛手から関節蹴りの挙動(※注2)をいろいろと考察しているうちに、夜が明けてしまった。

 さて仮眠してから、今日も仕事だ・・・。

 (了)


(※注1)

 「非人」という言葉とその意味は、いまだに差別や人権に関するデリケートな社会問題を孕んでいる。

 本稿においては、タイトルおよび本文で、伝統的な技芸である古流柔術の技術を考察・解説するために、伝承されたままの「往時の技の名称」を表記しているが、筆者に差別を助長・肯定する意図は一切無いことを、ここに明記しておく。


(※注2)

 形の挙動は、左の掛手と同時に右の流し受け、そして右足での踏みつけとなる。

 この動きは、一般的には相手の左中段突きを捌きながらの技として解説されるが、実際には我の左手を相手が左手で掴んできた場合に対する、接触技法として考えた方が、より合理的であろう。

 つまり我の左の掛手は、相手の左突きを受けるというよりも、合気道の二教のごとく掴んできた相手の左手首に掛手によって瞬間的に逆をかけるものであり、同時に我の右手は相手の左肘を押しながら、相手の体を我の左方向へ崩す。この状態で、相手の右膝を横あるいは後ろ方向から蹴り潰すのである。

 空手道の形の挙動は、、相手の突き蹴りに対する攻防「のみ」だと考えてしまうと、たとえば、カンクウ小の添え手のある掛手からの前蹴りなど、理合に矛盾が多くなるので注意が必要だ。

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