手裏剣術と多敵の位/(武術・武道)
- 2013/05/31(Fri) -
 「雨が降らんのう・・・」とつぶやいたら、ここ武州も梅雨に入った。めでたいことだ。


 明日から明後日は、恒例の夏季合宿だ。今年のテーマは、「四方打ちと多敵の位」である。

 普段の稽古では、基本的に正面の的のみの設置であり、時折、向かい合わせに的を立てて「前後打ち」や「左右打ち」を行うが、稽古場のスペースの関係もあり、頻繁にはやっていない。そこで今回は、前後や左右の打ち、そしてこれらの組み合わせである四方打ちを、みっちり稽古しようというわけだ。

 前後打ち、左右打ち、四方打ちは、ひいては「多敵の位」に通じる業であることは、いうまでもない。

 多敵の位については、これまでの本ブログでたびたび言及してきたが、

 武術の稽古では、ことさら多敵に特化した稽古をする必要はない。なぜなら根本的に、相手が何人であろうと、瞬間としての対敵行動は、我も彼も常に「1対1」になるからである。つまり、「多敵の位」とは、連続する1対1の攻防にすぎない。ゆえに日常の稽古では、1対1の攻防に十分習熟することで、多敵に応ずることが可能となる。

 逆に、定型的な多敵の「形(型)」や「技」は、その形式に居着いてしてしまい、変幻自在に変化する彼我の動きに、柔軟に対応できなくなってしまうので、むしろ害が多いのである。


 というのが、旧師の教えであった。


 とはいえ、多敵には多敵の「コツ」や「方法」というものがある。

 ゆえに、抜刀術などでは、「前後斬り」や「左右斬り」、「四方斬り」などといった、1対複数を想定した形(型)があり、また多敵の位に関する口伝も数多く伝えられている。

 私が旧師から学んだ「多敵の位」に関する主な口伝を要約すると、次のようなものになる。

・先制主導すること
・縦に追うこと
・拍子を外すこと
・「場」に居着かないこと
・「頭」を押さえること


 とはいえ実際に1人で、しかも心得のある相手を向こうに回しての攻防がどれだけ難しいかは、たとえば体術でも剣術でも、稽古の合間に「遊び」がてら、1対2や1対5といった形での地稽古でもやってみれば、容易に分かることだ。

 そこで、「多敵の位」を容易ならしめる武技のひとつが、「手裏剣術」なのである。

 なお、ここでいう手裏剣術とは、名詞としての「狭義の手裏剣術」だけではなく、形而上下のあらゆる事物を相手に投擲する、動詞としての「広義の手裏剣術」であることを忘れてはならない。


▲脇差を「手裏剣に打つ」業の一例。鉄人流の「手裏剣打ち様・第一の型」。堤寶山流では
「飛龍迫」、未来知新流では「飛龍­剣」と呼ぶ。正二刀・上下太刀の構えから、左手の脇差
を∞形に振りながら左横より脇差を手裏剣に打­ち、右足を踏み込んで太刀にて横面を片手に
て打つ。

 (了)
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