小柄は手裏剣に打てない?/(手裏剣術)
- 2013/07/20(Sat) -
 時折、半可通の時代劇ファンなどが、「小柄とは手裏剣のことなのだ」などと言ったりする。

 それに対して手裏剣術を知らない武術・武道人などが、「いや小柄は手裏剣ではないし、手裏剣として使うことはできない」などと言ったりもする。

1307_小柄小刀
▲「小柄」に入った小柄小刀。全長21センチ、重さ36グラム。打剣の検証用に新調した物。時代物の小柄小刀を、手裏剣に打つようなことはしてはならない。美術品、骨董品は大切に保管するべし。どんな刃物でも、手裏剣に打てば必ずダメージを受けるので、この小柄小刀も本当はあまり手裏剣に打ちたくはない。原則的に、手裏剣術の稽古は、専用の手裏剣で行うべきものである


 さて、実際はどうなのか? 手裏剣術者として答えれば・・・。

 「小柄は手裏剣である」というのは、たしかに間違い。小柄、正しくは「小柄小刀」は、武士が日常生活で使う携帯ナイフであり、武具として専用に作られた手裏剣ではない。

 しかし、「小柄は手裏剣として使えない」というのもまた、間違いである。

 正しくは、

 「手裏剣術の稽古をしていない者は、小柄を手裏剣として使えない」

 のである。

 そもそも小柄小刀は、一般的に全長150ミリ~200ミリ、重さは40グラム前後である。普通に稽古をしている手裏剣術者であれば、これよりも寸法が短く重さも軽い超軽量剣で3間を直打で打つことは、それほど難しいことではない。

 また小柄は手裏剣に比べるとバランスや重心が悪いという講釈もあるようだが、小柄小刀よりもバランスや重心位置の悪い棒手裏剣など、伝統的な剣にはざらにある(笑)。

1307_小柄と各種手裏剣
▲下から、当庵の翠月剣、小柄小刀、知新流手裏剣、香取神道流手裏剣、明府新影流手裏剣。小柄小刀は、伝統的な香取神道流や現代流派の筆頭である明府新影流の剣よりも長く、重量も重い。つまり、「小柄は軽く、短いので手裏剣に打てない」というのは間違いである。またバランスの悪さという点では、小柄小刀はやや後ろ重心であり、完全な後ろ重心である伝統的な知新流の手裏剣の方が、直打で打つにははるかにバランスが悪い

 
 では、実際に小柄小刀を打ってみよう。

 拙宅内なので距離がとれず、とりあえず座打で二間だが、直打で打って特段問題なく刺さる。それ以上の間合での打剣は、稽古場で検証してみるが、経験上、座打二間が通るということは、立打で三間は間違いなく通る。

 また立合での三間直打を想定して、座打二間で首落ちしないように的に当てるよう打っても、問題なく剣が立ったまま的に当たるので、座打、立打ともに、三間直打が可能なのは間違いない。

1307_小柄座打
▲二間座打、直打で小柄小刀を打つ。当然ながら、普通に刺さる。多分、三間でも十分刺さるだろう。小刀だけに刃がついているので、一般的な軽量の棒手裏剣よりも、むしろ殺傷力は高い。軽く滑走をかけて打っているので、小刀と小柄が離れないよう、撮影用のシュアテープで固定している


 このように検証すると、「いやしかし、四間では打てないだろう、だから小柄は手裏剣にならない・・・」などと、強弁する者がいるかもしれない。

 たしかに、小柄小刀を直打で四間というのは、ちと難しいだろうが、ある程度稽古すればできないことはない気がする。また、そもそも伝統的な古流の手裏剣術の間合は、根岸流を除けばその多くが最大で三間程度なのだから、三間で通れば武用の手裏剣として十分に通用するといってよい。


 というわけで、「小柄は手裏剣ではない」けれど、普通に稽古をしている手裏剣術者であれば、だれでも「手裏剣として十分に使える」ものである。

 一知半解で、「小柄は、手裏剣として使うことはできない」などと考えていると、思わぬ不覚をとるであろう。『子連れ狼 親の心子の心』の、岸田森みたいに(笑)。

 武芸の怖さとは、こういうところにある。

 もっとも手裏剣術者の立場で考えれば、むしろこうした誤謬が広がっていた方が、対敵の場では兵法として相手よりも優位に立てるのだから、術者以外の間違った認識は、間違ったままで良いともいえるだろう。


 今回の結語。
 ~本当の事は、やってみなくては判らない。(本部朝基)~

 (了)
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