戸井十月とオレの90年代/(身辺雑記)
- 2013/08/28(Wed) -
 先月28日、作家の戸井十月氏が亡くなっていたことを、先ほど知った。

 訃報を読んで、戸井十月という人はオレにとって、「90年代」という時代そのものだったのだなと、しみじみ思う。


 10代後半から30代初め頃まで、プライベートにせよ仕事にせよ、自分が「旅」や「辺境」、「バイク」という領域にこだわり、それを仕事にしてきたのは、多分に戸井氏の影響が強かった。

1308_クルディスタン
▲1996~98年のクルディスタン取材は、オレの“旅”の集大成だった


 当然ながら、伊豆の田舎から上京して無名の売れないライターとなり糊口を凌いでいたオレが、著名な旅する作家である戸井氏と面識があるわけはなかったのだが、読者として、またモノ書きという職業に携わる者として、「戸井十月という生き方」は、ある意味でオレの青春だったように思う。

 30歳を過ぎ、2000年の介護保険制度施行をきっかけに、オレは介護や医療という領域の取材・執筆に携わるようになり、仕事の中心も「旅」から「医療」へシフトしていった。そしてこの頃から、オレは「本格的な辺境の旅」や「バイク」から遠のきはじめ、同時に戸井氏の著作を読むことも少なくなっていった・・・。


 80年代後半から90年代の半ばまで、いわゆるバブル前後という時代の評価は、人それぞれであろう。

 オレにとってこの時代は、「世界の涯てを旅する」ことが可能な時だった。アラスカ、シルクロード、パミール高原、そしてクルディスタンへ。

 またバイクという「鉄の馬」で、自分の心のおもむくままに旅ができた時代でもあった。

1308_バイク
▲戸井十月、東本昌平、横浜ケンタウロス、ミスター・バイク。ラッキーストライクとダイドーの缶コーヒー。オレの90年代の断片・・・


 あの頃、旅先で出会う同年代の若き旅人たちの多くは、沢木の『深夜特急』を懐にしていたが、オレのボロボロのフレームパックやダッフルバックの中にあったのは、戸井十月の『荒野へ』や『闘いの詩』、『爆裂都市』であり、これらの書物と共に、いくつもの国境を越えた。


 オレに「バイク」と「旅」の扉を開いてくれた作家・戸井十月は、肉体が消えた今も、また新しい旅に出ていることだろう。

 Vaya con dios. Mi héroe.



戸井1
  ▲ 『荒野から―男をみがく冒険旅行のすすめ 』戸井 十月 (スコラBOOKS 1989.11)


戸井2
▲『爆裂都市』戸井 十月(トクマノベルズ 1982.2)

 (了)
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