平安三段についての一考察~日本柔術の視点から/(武術・武道)
- 2013/09/11(Wed) -
 今年の夏は、無限に灼熱地獄が続くのではないかと思うような陽気であったが、それでも天地は着実に運行しているらしく、さすがに朝晩は秋めいて、日暮れとともに聞こえはじめる虫の音が心地よい・・・。


 本日は空手道の稽古で、みっちり汗をかいてきた。指定形の平安三段の稽古で、初心者の皆さんが、第2挙動の交差受け(外受けと下段払いの同時受け)で苦労をしていた。

 以前、このブログで、「観空小の第7挙動や第36挙動(右掌中段つかみ受け、左掌右手首上添えて)は、古流柔術の視点でみれば、ごく基本的な手首逆の技である」と指摘した。

 同様に、この平安三段の第2挙動も、柔術の視点でみれば、腕絡みの技として分解できる。この形は、普通、空手4級とか3級くらいで習う初心者向けの形だが、この第2挙動の分解について、逆投げの技として分解指導している指導者は、あまりいないのではあるまいか。


▲平安三段の形。最初に猫足立ちで外受け(第1挙動)の後、閉足
立ちで外受けと下段払いの同時受けを連続して二回繰り返す(第二
挙動)


 2005年に発表された『隠されていた空手』(桧垣源之助著/チャンプ)では、この挙動の分解を腕がらみの逆手(同書では『絡み手投げ』と記している)として解説しており、当時本書を読んで、「ようやく、まともな解説が世に出たなあ」と思ったのは、いまも私の記憶に強く残っている。

 差し手などで、相手の両腕を強制的に×の字形に交差させて、それをねじって逆に極めながら投げる技は、古流柔術ではしばしば見られる。私はこの技を、27年前に旧師から、T流の骨法の一つ、捕手(我から仕掛ける柔術の技)技法としてご指導いただいた。

 具体的には、

1.我の右差し手を、相手が右手で受ける(受けさせる)
2.我は相手の右手を左手で受け外して当身(当身の打ち方と運足に口伝あり)
3.相手がさらに左拳で中段をついてくる
4.我は左手でつかんでいる相手の右腕で、相手の左突きを遮るように抑え受ける。この状態で、相手の両腕は×の字形に交差する状態になる
5.我はさらに右手で相手の左手首をつかみ、相手の腕を絡めるように捻りながら投げ極める

 というものだ。

 こうした知見がすでにあったため、15年ほど前、伝統派空手道の稽古で平安三段を初めて指導された際、「この第2挙動は、絡め手の技の表現なのだろうな・・・」と直感することができた。しかし、上記の『隠されていた空手』が発表されるまでは、この挙動の分解について、絡め手系の技の表現であるという解説は、まったく見聞きすることがなかった。

 思うに、『隠されていた空手』の著者である桧垣氏は、空手道はもちろん、大東流も稽古されていたとのことで、大東流というと、この手の相手の手足で相手自身をがんじがらめに絡めて固め極めたり、投げたりする技が少なくないので、そのあたりからも平安三段第2挙動分解のインスピレーションを得たのかもしれない。


 いずれにしても、空手道というとどうしても突き蹴りの武道という認識が強いだろうが、柔術の視点から見れば、実は伝統的な空手の形には、逆手や投げなどの接触技法が数多く含まれていることが分かる。

 たとえば、指定形平安二段の最終挙動、四股立ちでの下段手刀受け。これは単なる突き蹴りに対する受け技ではなく、相手の腕を引き込んで背後に入り身しながら金的に手刀で当身、そのまま後ろ腰に掬い投げで投げ捨てる技に分解できる。そしてこの系統の投げ捨て技は、日本の古流柔術では浅山一伝流をはじめ、諸流によく見られる普遍的な投げ捨て技だ。なお柔術では、投げ捨てかたに口伝がある。


 このように、日本柔術の視点から伝統的な空手道の形を見直せば、空手の形=技は実に奥深いなとしみじみ思った、秋の夜の稽古であった。

 (了)
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