バイソングラスの香る酒/(身辺雑記)
- 2013/10/17(Thu) -
l_11865-1.jpg


 たいへん不覚なことに、「ズブロッカ」が、ポーランド産ということを、つい最近まで知らなかった。不惑を過ぎても、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥である。

 ここのところ仕事が重なり、酒が翌日に残るといろいろと問題になるので、食後酒や寝酒には、もっぱらこいつをやっている。

 ズブロッカは、ポーランド北東、野生のバイソンが生息する世界遺産「ビャウォヴィエジャの森」に自生しているバイソングラスを使った世界的ブランドのウオッカだ。バイソングラスの不思議な芳香と、トロリとした飲み口が、なんとも個性的だ。

 こいつを瓶ごと冷凍庫に入れておき、キンキンに冷えているのを、ストレートで飲む。ふわりと香る、バイソングラスの芳香が、なぜか郷愁を感じさせる。


 若いころ、北極圏からボルネオまで、いろいろな国を旅したけれど、実は欧州には足を踏み入れていない。

 ボスボラス海峡を船で渡った先、ヨーロッパ側のイスタンブールには、90年代の中頃、イラク領内のクルドゲリラ解放区に入るための準備として、なんだかんだと長期間滞在したけれど、トルコ人は異論があるだろうが、そこは欧州ではない。やはり中東である。

 このため、ヨーロッパの国々について、私には映画や写真で見た印象しかないが、ポーランドという国には、なにか悲劇的なイメージがつきまとう。

 古くはアンジェイ・ワイダ監督作品の『灰とダイヤモンド』、近年では押井守監督作品の『アヴァロン』、あるいは縄のれんの片隅で、団塊の世代の人々が、いささか得意げに遠い目をしながらつぶやく『ワルシャワ労働歌』・・・。

 また歴史的には、第二次世界大戦後半、いまだ圧倒的な火力を誇るナチス・ドイツの占領軍に対して、ワルシャワ・ゲットーのユダヤ人レジスタンスたちが立ち上がるも、儚く鎮圧されたワルシャワ・ゲットー武装蜂起・・・。

 そんな印象の断片が、私にとってのポーランドのイメージを、悲劇的なものにしているのかもしれない。


▲『ワルシャワ労働歌』

(歌詞)
暴虐の雲 光を覆い
敵の嵐は荒れ狂う
ひるまず進め我らが友よ
敵の鉄鎖をうち砕け

自由の火柱 輝かしく
頭上高く燃え立ちぬ
今や最後の闘いに
勝利の旗はひらめかん

起て同胞(はらから)よ 行け闘いに
聖なる血にまみれよ
砦の上に我らが世界
築き固めよ勇ましく



 ズブロッカの良いところは、とにかく翌日に酒が残らないことだ。

 日本酒やワインなどの醸造酒に比べ、ズブロッカや焼酎などの蒸留酒は、二日酔いが少ないと言われる。体験的には、たしかにその通りで、ズブロッカを飲んだ翌日は、ほとんど二日酔いを感じることがない。

 もっともこれは、医学的にはまったく根拠のない迷信だそうで、二日酔いの度合いは単純に摂取したアルコール量によるものであり、蒸留酒だからといって二日酔いがしにくいというのはありえないという。

 しかし、はや四半世紀、酒を飲み続けている者の実感としては、確かにズブロッカや焼酎は二日酔いが少ないんだよな・・・。


 おそらく、私がポーランドという国を訪ねる機会は、今後もないだろうが、ズブロッカを満たしたストレートグラスを傾けて、バイソングラスが香るたびに、私の心は彼の地・ビャウォヴィエジャの森を旅する。

Poland_Bialowieza_-_BPN.jpg
▲ポーランド・ビャウォヴィエジャの森


 さて、今夜も飲むか。

 (了)
スポンサーサイト
この記事のURL | 身辺雑記 | ▲ top
| メイン |