『月刊 秘伝』の手裏剣術特集
- 2008/09/18(Thu) -
 この世界になじみの深い者には、いろいろな意味で(?)おなじみの雑誌、『月刊 秘伝』。

 14日発売の今月号は手裏剣術の特集です。

 いちおう手裏剣道場の看板を揚げている者として、こんなことを冒頭から言うのもナニだが、武芸十八般のひとつに数えられると言われながら、同じ武術・武道関係者からも、ある種キワモノ扱いされることが少なくない手裏剣術、こうしたメディアで大きく取り上げられることは多くはない。

 そういう意味で今回の特集、末席とはいえ斯術に携わる者のひとりとしては、まずは慶事と喜びたい。

 ぜひ実際の誌面を読んでいただければと思うが、特に、当埼玉行田道場が普段からなにかと懇意にさせていただいている、鈴木崩残氏の無冥流については、今回の特集でたいへん大きく誌面が割かれていることに注目していただければと思う。

 内容としては、同流が提唱する「重心理論」のまとめ、飛刀術も含めた「異物投擲」、そして当道場もその研究の一翼を担わせていただいている「武術的な手裏剣術の対戦戦略と戦術」、以上、大きく3つのテーマが、第三者である同誌記者の客観的視点で、簡潔にまとめれている。

 それ以外の記事も、ハイスピード撮影による明府真影流・大塚師範の見事な打剣の数々、さらに私も一時ネット上の論争に加わったことがある、手裏剣による壜類への貫通の記録など、手裏剣術に関心のあるものなら、なかなかに見ごたえ・読みごたえのある特集であった。


 ところで個人的に、そして余談的に愉快だったのは、特集冒頭のQ&Aで、「手裏剣で狩猟か可能か?」という設問が示され、複数の斯術の第一人者が一様に、「現実的には難しいと語った」と、改めて示されたことである。

 これは個人的に、これまでネットでもSNSでも、あるいは直接的な会話・討論でも、私は再三、主張してきたことであるが、手裏剣で狩猟など、現実的にできるわけがなく、またたとえ時代が明治以前でも、実利的にもやる意味もないことである。

 いわばこれ、「武術的都市伝説」なのだ。

 そもそもは、近年の武術界における手裏剣術ブーム(?)の草分けのひとりであり、いまや古流武術界の権威(?)でもある武術稽古研究家K氏が、ずいぶん前に言い出したもので、いつのまにか斯術に関わる者の間に流布してしまったヨタ話だ。

 だいたい多少狩猟経験のある者ならだれでも分かるのだが、野生動物に手裏剣などどう考えても「当たらない」、「刺さらない」、「(仮に刺さったとしても)半矢にしかならない」ことは、自明の理である。鹿や猪は当然ながら、山鳥や雉、野うさぎすら、獲ることはできないだろう。

 仮にできるとしたら、スズメやドバトなど、人間に警戒心の薄い小型の鳥を普段から米粒などで餌付けしておいて、至近距離から手裏剣で打てば、「絶対不可能」ではないと思う。

 しかし、なにしろ「武者修行の途中の山野で、手裏剣で野生動物を仕留めて食料にする」らしいのだからなあ・・・。

 それはどう考えても無理でしょう。狩猟用空気銃どころか、散弾銃でもはずすことがあるのだがねえ。


 とにかく現代武道の世界と異なり、こと古流武術の世界には、指導者も弟子も、「いにしえの達人信仰」が大好きなオカルト君が少なくないものだから、こういうヨタ話がまことしやかに信じられてしまうのであろうし、そういった体質こそが、いつの時代にもインチキ武術屋がいっこうに無くならない温床になっているのだ。

 というわけで何度でも言うが、「(敵意を持った相手を)気の力で触れずに倒すこと」はできないし、「宮本武蔵の霊が乗り移って、その動きで闘う」とか「キリストや釈迦は空手をやっていた」とかいうのは、単なる妄想である。いや、平成の武道イタコか? また、「伝書は空襲で焼けた」とかいう流派には、なるべく近づくなと・・・。

 
 なにやら話は手裏剣術の話題からいささか脱線したが、まずはなにより、手裏剣術を稽古する者、関心のある者は、今回の特集、一読をおすすめする!
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