インチキ武術・武道による「武術・武道ネグレクト」/(武術・武道)
- 2013/12/03(Tue) -
 昨日、出先で時間つぶしに書店に立ち寄った。特に目的もないので、雑誌売り場で武術雑誌の『H』を手に取ったのだが・・・。

 もうね、「気」で飛ばすとか、宙に浮くとか、がんが治るとか、やめようよ、ホント。

 表紙と巻頭特集はあのN流。対談で語っているのは、空中浮遊ができるという(笑)ヨガの導師。これじゃあ武術雑誌ではなくて、カルト雑誌だぜ、本気(マジ)で。



 その昔、この雑誌が『H伝K流武術』というタイトルで創刊されたばかりの頃、私はずいぶんと愛読していたのだけれど、次第に奇妙な人々が誌面に登場するようになり、購読するのをやめたのはいつ頃だったか・・・。

 私も、医療や情報誌関連のフリーの記者・編集者として、出版・新聞業界で仕事をしているので、商業出版の難しさや本音は分からなくはない。しかし、それにつけても、気で人間を吹き飛ばしたり、地上1メートルに空中浮遊したり、イタコのように過去の武芸者の動きを再現して戦うなどいった怪しげな人々が、誌面を飾る雑誌というのは、客観的に考えていかがなものだろうか?

 しかもそれが、日本の伝統文化であり、最もシビアな実証主義が要求されるべき、武術・武道に関する雑誌なのである。

 数年前、自称・合気柔術の大家で、触れずに気で相手を倒すという「達人」が、総合格闘家のパンチ一発で戦意喪失した「事件」があったけれど、そんな分かりきったことを何度も繰り返さなければ、日本の武術・武道界は自浄効果が発揮できないのであろうか・・・。

 こうした点で、一部武術・武道系マスコミの罪は、実に重いと言わざるをえない。



 本ブログでも度々書いているが、何度でも指摘するけれど、「気」や「呼吸」なるものに、重さ数十キロに及ぶ人体を動かしたり、浮遊させることが可能な物理的力があるのであれば、ぜひ私の打つ手裏剣を、「気」なり「呼吸」なりの力で、触れずに止めるなり打ち落とすなりしてもらいたいものだ。

 あるいは、「気」や「呼吸」なるものに、重さ数十キロに及ぶ人体を動かしたり、浮遊させることが可能な物理的な力があるのであれば、ぜひ私の斬り下ろす打刀(真剣)を、「気」なり「呼吸」なりの力で、触れずに止めるなり打ち落とすなりしてもらいたいものである。

 ま、1億パーセント、無理だけどな(笑)。



 ひるがえって手裏剣術の世界も、伝系の捏造やら、妬み嫉みによる誹謗中傷やら、他の武術・武道と同様、醜い事例や諍いが絶えない世界だけれど、1つだけまともな点があるとすれば、少なくとも打剣の結果に関しては、諸流・諸会派いずれも、「ウソ」は稀であるということだ。

 手裏剣術というと、「卑怯な飛び道具」であるとか、「所詮は隠し武器」とか、「併習武術」とか、あるいは「忍者(笑)」などなど、なにかと武術・武道界の徒花的に扱われるが、少なくとも打剣に関しては、

 能書きやトリックの通用しない、刺さってなんぼ、通してなんぼの、きっちりとした実力主義が保たれている世界

 である。

 これは古流、現代流派を問わず、また会派の大小を問わず、日本の手裏剣術者の矜持である。

 そして、こうした手裏剣術ならでは清々しさを、私も誇りに思う。


 さて、ではなぜ「気」や「呼吸」を騙るようなインチキ武術・武道が問題なのか? それは結果として、「武術・武道ネグレクト」につながるからである。

 たとえば・・・。

 ここに武術・武道を学んで強くなりたいと願うA君(仮名)がいるとしよう。

 もともと運動が苦手で、きつい稽古は嫌なA君は、「気」や「呼吸」で相手を倒し、弟子に「気」を入れて強くしてくれるという有名な師匠にめぐり合い、師事することとなる。

 師匠は雑誌にも載っている有名な先生で、A君はひたすら先生を信じ、安くない月謝を10年以上も払い続け、「気」や「呼吸」の稽古を積み重ね、なんとなく強くなったような気になる。何しろ稽古場では、後輩たちがA君の「気」や「呼吸」の技で、「わ~~~~~~」とか言いながら、いとも簡単に転げまわったり、何人もの相手が数珠繋ぎになって倒れたりするのである!

 そんなある日、飲み屋のカウンターでチンピラに絡まれたA君は、師匠直伝の自慢の「気」や「呼吸」で身を守ろうとするが、当然ながらしょせんは「暗示」や「感応」、「集団ヒステリー」に過ぎない、インチキ武術・武道の「気」や「呼吸」なるものが実際に通用するわけもなく、A君はボコボコにされてしまう。

 結果、A君は体に重い後遺障害を負ってしまい、さらにPTSD(心的外傷後ストレス症候群)も患い、長く苦しい闘病生活を送ることとなる・・・。

 しかし、もしA君が、まともな空手道場や柔道教室、合気道の稽古会や剣道の道場、真面目な武術稽古会、あるいは格闘技のジムなどで、同じように10年間、痛い思いやキツイ稽古を地道に続けていたとすれば、同じように飲み屋のカウンターでチンピラに絡まれたりしても、結果はまったく違ったものになったであろう。


 このように、インチキ武術・武道の問題は、

 弟子をだまし、(幅広い意味で)強い人間に育てない

 ことにある。

 その結果、まっとうな武術・武道を稽古していれば避けられたはずのトラブルに巻き込まれてしまったり、怪我をしたり障害を負ってしまう蓋然性が高いのである。

 このように、本来、強く育てるべき弟子を、あえて強く育てないのが、インチキ武術・武道による「武術・武道ネグレクト」なのだ。

 上述のたとえ話で、A君が心と体に重い後遺障害を負ってしまうことになった責任は師匠に、そしてインチキ武術・武道を煽った一部の武術・武道マスコミにもあると言えよう。


 さて、実際にこんな事故が起きてしまったとき、いったい誰が責任を取るのであろうか・・・。

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▲むかっ腹がたったので、今日の稽古ではいつもより強く打ち込んだよ、まったく・・・

 (了)
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