事故防止/(武術・武道)
- 2014/05/05(Mon) -
(■2014.5.5.PM、※部分の注釈を加筆)

 過日、抜刀術の稽古中、Aさんの居合刀がやけに撓るなあと少し気になる。

 最初は手之内が甘いのかなと思ったのだけれど、なにか少しこれまでに比べて「違和感」があるので、ちょっと点検させてもらう。

 その居合刀は、ごく一般的な稽古用のものなのだけれど、やけに撓る。以前は稽古中に見ていても、これほど撓っていなかったように思う。

 居合刀(正式には模造刀)の場合、金属疲労で鍔元から折れてしまったという話を時折聞くので、どうも気になる。明らかに折れかかっているとか、ひびが入っているという感じではないのだが・・・。模造刀は、基本的には柄を外して中心を点検するようにできていないので、こういうときにはちと不安だ。(※)

 とりあえず今後、この刀は周りに人がいる所では振らないこと(折れた刀身は、前方にだけ飛んでいくとは限らない)、念のためできるだけ早く新しいものに買い換えるように促す。

 あくまでも、「以前より、撓るようになった?」という「違和感」がするだけで、鍔元や刀身などに明らかなひびや折れの兆候のようものは今のところないのだけれど、日常的に武具を扱う者として、こういうことには慎重の上にも慎重を期したい。

 模造刀や真剣が折れたり、中心から抜けて、飛んでしまうということの危険性は、剣術家以上に、手裏剣術者は十分理解している。なにしろ、刃物をほおるのは、こちとら専門家なのだ。


 私の場合、たとえば他流の演武を拝見するときも、なるべく演武者の斬りの軌道上には立ちたくないと思うし、そういう位置から見ざるを得ない場合は、ちょっと覚悟はしておく。

 また抜刀術の指導の際、どうしても相手の目の前に立って教えたり、自分自身を仮想敵の位置に置いた状態で指導することも多いのだが、そういうときには「万が一の場合、相手の刀が、折れたりすっぽ抜けたりして、こちらに飛んでくることはありうる」と覚悟はしている。

 なにより門下の扱う武具、ことに刀については、事故防止のために当人以上に、こちらがその状態に気をくばるようにしている。


 それにしても意外かつ遺憾なことに、刀を扱っているにもかかわらず、鍔鳴りや目釘の点検、刀身の損傷に無頓着な人、あるいは演武や稽古中の事故防止に関心が薄い人が少なくないことには驚いてしまう。

 最近も、ある居合家のブログで、斬りの演武で真剣が物打ちから折れて見物人の方へ飛んでいったり、緊張して手之内が甘くなったため、振り上げた真剣がすっぽ抜けて後ろにほおり投げられたりする動画が示され、注意を促している記事を拝読した。

 いや本当に、冗談抜きで危険である。

 ここ数年、斬りの演武や稽古をする流儀・会派が急激に増えているように感じるが、このレベルの人たちが人前で真剣を振るい試物をしているのだから、いつ大事故が起きてもおかしくないし、おそらくそのうち大事故が起きるだろう。

 日常的な目釘の点検はもちろん、鍔鳴りへの対処などは、武具を扱うものの最低限の心得である。また演武や稽古に際して、安全管理に十分留意するのは、指導者として当然のことだ。

 そんなこともできない者が、人前で武具を扱うべきではない。

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(※)
 居合刀(模造刀)も構造上は、真剣と同じように、目釘を抜いて柄が外せるが、実際にはつけっぱなしが原則で、真剣のように柄をはずして中心(なかご)を鑑賞したりはしない。

 メーカーも模造刀については、鍔鳴りがする場合など、個人が柄を外して調整するのではなく、そのまま修理に出すよう告知しているのが一般的だ。

 当然ながら真剣の場合、鍔鳴りの調整などは、所有者が責任をもって自分で行うものであることは、言うまでもない。

 (了)
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