稽古場の広さ/(武術・武道)
- 2014/07/25(Fri) -
 武術としての手裏剣術を稽古しようという場合、基本的には的までの間合三間以上がとれる広さの稽古場が必要になる。

 当庵では最大五間までを必修とし、それ以上の中・長距離打剣は研究課題としているので最低五間、実際には五間直打を「活きた業」にするためには、稽古では六間での打剣に習熟する必要があるので、稽古場は六間以上の広さがあることが望ましい。

 このように手裏剣術の稽古をしていると、「稽古場の広さ」というのは、重大かつ悩ましい問題だ。

 たとえば本ブログでも度々書いているが、私の場合、自宅での稽古では的まで二間しか取れず、天井の高さの関係もあるので、やむをえず座打(正座または跪坐)での稽古が中心となる。なんとか座打でも三間が取れるとよいのだが、なにしろ集合住宅なので難しい。

 この点、柔術はよいなと思うのは、最低限、畳一畳の広さがあれば稽古ができるということである。

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▲夏季合宿の朝のひとコマ。基本的な手解の一手。両手取りから片手を抜いての当身


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▲初歩的な手首逆。この場合、真下に極め潰すほか、写真のように手首を極めながら相手を斜め後ろに崩し、肘も極めつつうつ伏せに固めるなどの応用もある


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▲うつ伏せに固めて当身。拳の形に口伝あり


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▲手首を極めながら踏み固めるので、これだけで受けは身動きができなくなる


 もっとも柔術の場合、畳一畳の広さがあれば稽古ができるとはいえ、相手がいないと稽古にならないのが難点である。この点、手裏剣術や居合などは、一人稽古ができるのが利点だ。

 ちなみに柔術の一人稽古の方法として、私が旧師から教えていただいたのは木太刀を用いた素振りや手之内の鍛錬であった。特に「骨法」という捕手業の稽古(奈良時代から伝わるナゾの武術ではない、念のため・・・)では、木太刀での手之内の締めを十分に稽古するよう教えていただいたものだ。

 居合・抜刀術も、最低限畳二畳の広さがあれば座業の稽古ができる。私も自宅での稽古では、もっぱらダイニングで座業を遣う。天井の高さも重要なのだが、たとえば立合の業でも、斬上げの抜き打ちなどは狭い屋内でもできるものだ。同様に空手道の稽古も、その場基本であれば、畳一畳の広さで稽古ができるというのは、言わずもがなであろう。


 ところで最近、『剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む』(永井義男著/朝日新聞出版)という本をたいへん興味深く読んだ。本書の書評はまた別の機会に書こうと思うが、読んでいてなるほどなと思ったのは、江戸時代の道場・稽古場の「狭さ」である。

 個人の剣術道場の稽古場は、二間×四~五間が多く、狭いところでは二間×三間程度(!)というものもある。藩校の稽古場も一部を除けば多くが三間×五間程度である。この広さの稽古場で、現代の剣道とほぼ同じ防具と竹刀を用い、五人や十人、はたまたそれ以上の人数で地稽古をしているというのだから、たいへん興味深い。

 床についても板張りなどは一部の藩校や江戸の有名大道場のみの例外的なもので、多くの場合、土間かあるいは土間に筵や藁を敷いたものだったという。


 現代の手裏剣術者は、稽古場の環境や広さに頭を悩ますことが少なくないが、往時の武術人たちが意外に狭く質素な環境で稽古をしていたと思うと、あまり贅沢はいえないし、与えられた環境の中で業を磨く工夫が大切ではないかと思った次第である。

 (了)
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