後味の悪い夢/(身辺雑記)
- 2014/08/12(Tue) -
 時折、「普段から刀とか振り回していると、人が斬りたくなるでしょう?」などと聞かれることがある。

 こういうのはたいがい素人さんからの質問だから、「しょうがねえなあ・・・」と思いつつも、内心、実に無知で愚かな、そして人を愚弄した馬鹿な質問だなと思う。

 私が初めて抜刀術の手ほどきを受けたのは13歳の時で、柔術の師であったI先生にK流の形を教えていただいた。以来、なんだかんだと足掛け30年に渡って「刀を振り回して」いるが、当然ながら人間を実際に斬りたいと思ったことは一度たりともない。

 むしろ稽古をすればするほど、「こんなもんで斬られたら、たまらんな・・・」との思いを強くするものである。武芸をたしなむ者であれば、「人を斬る」ということはイコール「人に斬られる」ということでもあることを忘れてはならない。

 
 なぜこんな、わかりきったことをつらつら書いているかというと、昨夜の夢が、ひどく後味の悪いものだったからだ。

 夢の中で私は、抜き身を構えて殺意を持った複数の男たちに囲まれている。

 時代も状況も分からない。場所は屋内である。そして私は、自分の差料である市原長光を手にしている。

 止むを得ず先をとって、抜打の小袈裟で正面の相手の顔面に斬り付ける。やや重い手ごたえとともに、相手の顔面が両断され、すさまじい勢いで鮮血が噴出す。断ち割られた相手の顔面は、奇妙な形でゆがんだように斜めにばっくりと裁断されている。

 気配を感じて振り返ると、別の男が斬りかかろうとしているので突きを入れる。先ほどの袈裟斬りとはうってかわって、今度はほとんど手ごたえがなく、長光の切先は吸い込まれるように相手の水月に差し込まれる。刀を引き抜くと、相手の傷口から湧き出すように、黒っぽい血が流れ出す・・・。

 ここではっと目覚めたのだが、最初の袈裟斬りのやや重たい手ごたえ、それとは対照的にまったく手ごたえがなく吸い込まれるように刺さる突きの感触が、妙にリアルに(といっても、もちろん実際に人を斬ったり突いたりしたことはないので、それがリアルかどうかは分からないのだが・・・)残っており、実に後味の悪い気分で、その後も朝まで寝つけなかった。

 それにしても夢とはいえ、人を斬るというのは嫌なものだなと、しみじみ思った次第である。

1408_tsuka_toushin.jpg
▲我が愛刀・市原長光。夢の中で操刀していても、実にリアルな感触だった。ま、日々稽古の度に手にしているのだから、感触がリアルなのは当たり前といえば当たり前か・・・

 (了)
スポンサーサイト
この記事のURL | 身辺雑記 | ▲ top
| メイン |