「鯉口」の話/(武術・武道)
- 2009/03/13(Fri) -
 過日、稽古帰りに地元にある、なじみの小料理屋Sで、いつものごとく地酒を片手に稚鮎の天麩羅などをつついていると、私と同い年の店主が問いかけてきた。

「市村さん、『鯉口を切る』って、なんのこと?」
「えっ、いきなりマニアな質問だねえ。やっとうの稽古でも始めんの」
「いや、この前、ようやく『鬼平』を読み終わってさ。今、『剣客商売』にはまってるんだけど、鯉口って意味がわかんないんだよねえ・・・」
「いやいや、まさに、『そのことよ』!」

 ということで、土曜深夜、私以外に客もいないことだし、おあつらえ向きに稽古帰りで居合刀をもっていたものだから、店の小上がりで居合の型を1~2本抜きつつ、鯉口を切る、という行為とその意味について、ひと講釈たれてきた。

 つらつら思うに、この「鯉口を切る」という行為について、一般の方はもちろん、武術・武道人でも、居合・抜刀術や剣術をやらない人には、その重要性や繊細さが、あまり実感できないのではないか?

 さらに言えば、居合・抜刀術人でも、居合刀しか使ったことのない者には、本気の実感として分からないと思う。

 かく言う私も、普段、居合や抜刀術の稽古は居合刀で行っており、そもそも現在、真剣はもっていない。おまけにお恥ずかしい話だが、普段、頻繁に稽古をするほど鯉口はすぐに緩んでくるので、若い頃はこまめに経木や古葉書の切れ端などで補修していたが、最近はもう面倒くさいのでいちいち直していない。

 よって、帯刀している際に下を向くだけで、刀がするすると抜けてしまう・・・(みっともないこと、このうえないが・・・)。

 ちなみに、鯉口が緩んでいて刀が不意に抜けてしまった場合は、絶対に!、手で柄を押さえようとしてはならない! 抜け落ちるままにすべし!! っと、刀匠でもあった旧師には、口をすっぱくして怒られたものである。

 あわてて刀身をつかんでしまい、指、飛んじゃうからね・・・。

 閑話休題。

 一方で、昨年、武友のたんだ氏を美濃に訪ね、刃引きの真剣による竹を使った「斬りの稽古(試斬)」をたっぷりと行ったのだが、ここで改めて実感したのが、鯉口の重要性である。

 とにかく、打刀の安全装置はここしかないので、鯉口はしっかりしていないとこまる。また、発剣の際にも、左手親指でしっかりと鯉口を切り、直前まで鍔を左手親指で保持せねばならない。

 ちなみによく、鯉口を切るのに、普通の切り方のほか、”押し切り”、”隠し切り”などもあるといわれるが、少なくとも立合での抜刀では、親指で鍔を抑えていない、これらの鯉口の切り方は、自傷事故防止という点で、大変不安である。

 あくまでも、”押し切り”、”隠し切り”などは、不意打ち用の特殊な切りかただと思っておいた方が良いだろう。

 いずれにしても、稽古に使うのが真剣でも居合刀でも、普段から「鯉口を切る」ことの重要性を念頭においておくことが重要である。

 ちなみに翠月庵の掲示板でも、ちょうど左手打剣と鯉口の話になったこともあるので、これに関する検討・検証は、今後、武友の皆さんの意見なども拝聴しながら考察していきたいと思う。


 それにつけも、一振りくらいは真剣がほしいですなあ・・・。

(了)


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