最近の偽医療や反医療・デマ・陰謀論について思うこと(その2)/(医療・福祉)
- 2014/10/11(Sat) -
■デマや陰謀論ではなく、「期待される効果と想定されるリスク」で判断しよう

~最初から全てを成り行きに任せる者がおろうか? 全力を尽くし、しかる後、宿命を待つ!~(拝一刀の言葉/子連れ狼 三途の川の乳母車より)


 ファイスブックやネットなどを見ていると特徴的なのが、偽医療・反医療をとなえる人や陰謀論者の多くが、その主張や意見の根拠を示さないこと、あるいはその根拠とすることの多くが、単なるデマや憶測にすぎないということだ。


 たとえばインフルエンザのワクチン接種について、効果がないと主張する人たちがいるのだが、彼らがよく根拠として挙げるものに「前橋レポート」というものがある。

 これは1980年代に前橋市で行われたインフルエンザワクチンの効果を検証することを目的とした調査である。その結果、「インフルエンザワクチン接種は、効果がなかった」という結論を出し、以後、ワクチン接種反対論者の“錦の御旗”になっているというものだ。

 ところがこの「前橋レポート」は、その後の学術的な検証によって、予防接種の効果を低く見せるための意図的と思われるようなデータの操作がされていることが明らかになり、現在はワクチン摂取肯定派はもちろん、まじめなワクチン摂取否定派からも、その信憑性を否定されている。
(インフルエンザワクチンは有効か?安全か?(1)有効性とindirect protection/http://drmagician.exblog.jp/21377410/
(インフルエンザ予防接種ワクチンは打たない派の方へ・・・なんで判ってもらえないんだろう?/http://www.gohongi-beauty.jp/blog/?p=7503



 さて、ネットなどでインフルエンザのワクチン接種を否定する人たちの言い分を見ていると、正直、頭がクラクラしてくる・・・。

 たとえば、彼らは「インフルエンザでは死なない」(だからワクチン接種は必要ない)という。

 その根拠は、

 「インフルエンザはかぜの一種です。『インフルエンザはかぜじゃない』というポスターは、インフルエンザ・ワクチンを打たせるための宣伝なのです」

 だそうな・・・・・・。
(インフルエンザワクチンは打たないで/http://anatanoibasyo.mo-blog.jp/ibasyo/2013/11/post_0b9c.html

 つうかそれ、死なない理由になってねえよ!!


 厚生労働省の発表では、例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1,000万人、国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1,818(2005年)人。

 さらに問題なのは、直接的なインフルエンザによる死亡だけでなく、たとえばインフルエンザに起因して間接的に生じた死亡を推計する「超過死亡概念」というものがあり、この推計によるインフルエンザの年間死亡者数は、毎年世界で約25~50万人、日本では毎年約1万人と推計されているということだ。

 毎年1万人が、インフルエンザによって死亡しているという事実を、重く受け止めてもらいたいものである。
(新型インフルエンザに関するQ&A/http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html

 また、インフルエンザワクチン接種に反対する人々は、「インフルエンザワクチンは効かない」「重症化を防げない」という。しかし、国立感染症研究所感染症情報センターでは、

「(インフルエンザワクチン接種は)感染や発症そのものを完全には防御できないが、重症化や合併症の発生を予防する効果は証明されており、高齢者に対してワクチンを接種すると、接種しなかった場合に比べて、死亡の危険を5分の1に、入院の危険を約3分の1~2分の1にまで減少させることが期待できる。現行ワクチンの安全性はきわめて高いと評価されている」

 としており、厚生労働省もこうした効果に基づいて、インフルエンザワクチンの予防接種を広く勧めている。
(インフルエンザとは/http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html

 さらに、インフルエンザに限らず、病気に対するワクチン接種に反対する人たちの多くは、重い副作用(副反応)が起こる危険性を根拠に、ワクチン接種反対を訴えることが多い。

 そこでインフルエンザの予防接種をみると、たとえばギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎などといった重い副反応の発生する確率は、5,024万735人の内53人、その内の4名が死亡している(平成24年シーズンのインフルエンザ
ワクチン接種後の副反応報告について/http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/306-1.pdf

 これをパーセンテージで示すと、重い副反応が起こる割合は0.0001%、死亡例は0.000008%である。

 さらにこれらの死亡例については、9症例のうち8例について、ワクチン接種以前に他の重い病気を患っており、それらの悪化や再発によって死亡した可能性が高く、ワクチン接種と死亡との直接的な因果関係は見られなかったという。

 つまり、平成24年度のインフルエンザワクチン接種における確実な死亡例は、5,024万人のうち1人、死亡する割合は0.000002%ということになる。

 ちなみに、ここ数年議論になっている、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種をみると、たとえば 呼吸困難やじんましんなどを症状とする重いアレルギー(アナフィラキシー)は、約96万回の接種で1回、外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気(複合性局所疼痛症候群)は約860万回の接種で1回、起こる可能性があると報告されている。
 一方で現在、日本で子宮頸がんに罹る人は毎年1万人ほどおり、そのうち死亡する人は毎年約3,000人となっている。(子宮頸がん予防ワクチンQ&A/http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html


 ここで1つ確認しておきたいが、現在、インフルインザや子宮頸がんについて、ワクチン接種は法律に基づいて行われているが、接種を強制されてはいない。

 だからこそなおさら、ワクチン接種による

「期待される効果と想定されるリスク」

 をよく理解した上で、ワクチン接種をするかしないかをしっかりと考え、選択すればよいのである。

 問題なのは、効果やリスクについての正確で科学的な知識・情報を持たず、根拠のないデマや、特定の人物が声高に叫ぶ陰謀論、ネットにあふれる流言蜚語に惑わされ、だまされてしまうことだ。

 その結果、特に子供の場合、予防や治療を拒否することで、結果として防げるはず、治るはずの病気で子供を死なせてしまったり、重篤な後遺症を残してしまうようなこと、つまり

 「医療ネグレクト」につながる可能性が高い

 という事実を、もっと真剣に考えてほしい。


 よく吟味して家族で話し合い、接種を受ける本人自身も可能な限り理解・納得した上であれば、たとえばインフルエンザについて5,024万735回の接種につき53回=0.0001%の確率で起きる重い副反応のリスクを避けるために、あえてワクチン接種を拒否するという選択は、あってよい。

 なぜなら我々の暮らすこの国は、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国と違い、自由と民主主義の国であり、医療においても患者自身が治療法を選択する自由があるからだ。

 しかし子供を養育する義務を負う親権者たる親が、陰謀論者や偽医療・反医療を信奉する人々の流すデマ、根拠不明のいかがわしい情報に惑わされて、科学的に証明されている「期待される効果と想定できるリスク」を考えず、ただ闇雲に副反応などを怖れて治療を拒否するのであれば、それは治療選択の自由以前に、子供に対する「医療ネグレクト」である。

 またインフルエンザの流行は、小学校で始まりそこから地域で蔓延し、療養中の高齢者への感染、そして重症化や死亡につながるということも、子供をもつ親はよく覚えておいてほしい。

 「自分や自分の子供がインフルエンザに罹っても、自然治癒させるからかまわない」などとという人は、自分がウイルスを周囲にばら撒いて流行を後押しし、結果として病弱な高齢者を死に至らしめているという可能性を、よく考えるべきである。

 ちなみに一般的には、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は、感染者は周囲にウイルスを排出するといわれている。


 私には子供はいないが、もし自分の子供にインフルエンザワクチン接種をさせるかを問われたらどうするか? 接種させるだろう。では、HPVワクチンについてはどうか? これはいささか考えるところがある。

 “てめえ事”として真剣に考えると、860万回の摂取で1回=HPVワクチンの接種は1人3回なので、286万人に1人の確立で現れる重篤な副反応というのは、めったにないことではあるが、けして安易に見過ごせるものではない。宝くじでもそうだが、どんなに天文学的な確率でも、当たる時には当たるものなのだから。

 ワクチン接種に限らず、どんな薬にも副反応があり、どんな治療にも効果とリスクがある以上、子供を守るべき親にとって病気やケガの治療選択というのは、実に難しく重い決断である。効果とリスクをよく推し量って、最終的にどちらが子供の生命と将来にとって、安全・安価・有効であるかを考えて判断するしかないだろう。

 だからこそ、強い心でデマや陰謀論、偽医学や反医学の偏った考え方に惑わされず、客観的で正しい知識=適切な教養を武器に、子供の生命と将来を守ってもらいたいと切に願う。

 なお、多くの陰謀論者や偽医療・反医療の人々が、こうしたワクチン接種の問題について、「製薬会社や医療業界による、カネ儲けのための陰謀」とかいいだす。

 しかし、ワクチン接種で病気を予防するのと、予防をせずに病気を蔓延させるのと、どちらが製薬会社や医療業界にとって儲かるのだろうか?

 考えてみればすぐに分かると思うのだが・・・。病気を未然に予防するより、ガンガン流行らせて、薬を大量に処方して、診察もバンバンするほうが儲かるんじゃね?

 「ワクチンは儲からない」というのは、業界の常識なんだけどねえ(苦笑)。

 国(厚生労働省)の方向性としては、子供も大人も高齢者も、病気はできるだけ未然に防止することで、膨大に膨らむ医療費を少しでも抑えていきたいと考えているのが事実だ。

 医療問題に限ったことではないけれど、いい歳をした大人が安易で陳腐な陰謀論に惑わされるのは、いいかげんやめようぜ。

 (つづく)
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