偽医学と陰謀論の種は尽きまじ/(医療・福祉)
- 2015/02/11(Wed) -
 先日、宝石屋が売っていた「がんに効く水」とやらについて、消費者庁が「根拠のない効能をうたった・・・」として措置命令をだしたという。

 この手の医療・健康系トンデモ話の種は、一向に尽きることがない。

 水を飲んで、がんが治るか?

 普通に考えれば、中学生でも分かるであろう。それかあらぬか、この水、これまで1億円以上を売り上げたという・・・。

 歴史上だれも経験したことがないという日本の急激な少子高齢化と、それによる死亡者数増加社会の中では、偽医学やインチキサプリは「金の成る木」なのだろう。


 最近の医療系トンデモ話の中でも、特に罪深いA級戦犯は近藤誠・内海聡の両医師であろう。

 この2人の医師のトンデモぶりは、多くのまともで良心的な医療関係者が各方面で告発しているのだが、いまだに騙され洗脳されてしまい、結果として医療ネグレクトに陥り、自分や大切な家族の人生を台無しにしてしまう人が後を絶たないことに強い憤りを感じる。

 近藤氏の「がんもどき理論」が、科学的にまったく根拠がないことは、多くの医療者にとってはいまさら指摘するまでもない事実である。また内海氏にいたっては、電波ゆんゆんの陰謀論者であり、医療以前に、健全な社会人としての資質に疑問がある。

 こうした人々が、自らの信ずる似非科学や陳腐な陰謀論に熱狂するのはご本人の勝手である。日本は自由の国なのだから。

 しかし「医師」という肩書きは、庶民にとっては侮りがたいインパクトがあるわけで、そういう人が「がん治療では、化学療法は無意味」だとか、「ワクチン治療は有害」だとか、「ユダヤに支配された製薬会社の陰謀」だとか、「児童相談所が子供を拉致している」などという、偽医学やデマ、陰謀論を流布させると、それを真に受ける人が現れ、結果として助かるべき命が失われてしまう。

 ここに、医療ネグレクトや医療系陰謀論の、社会的な高い害悪性があるのだ。

 たとえば、がんにかかっても普通に化学療法や放射線治療をうければ助かる人が、治療を拒否することで命を失ってしまう。

 たとえば、インフルエンザにかかってもワクチン接種をしていればどうということのなかったはずの人が、ワクチン接種を拒否することで肺炎を併発して死んでしまう。さらには感染を拡大させて、他の多くの人の命も奪ってしまう。

 たとえば、児童相談所に保護されていれば無事だったはずの子供が、虐待を繰り返す親に無理やり取り戻されてしまい、結果、親に虐待死させられてしまう。

 こうした事例は、「たとえば」ではなく、実際に後を絶たないのである。

 私自身、身近な人間が医療カルトにはまってしまい、その家族が医療ネグレクトによって死亡してしまった経験があり、こうした偽医療やカルト、陰謀論者には、心の底からの強い怒りを感じるのである。


 今の時代、多くの情報がネットで手に入る。

 ちょっと調べて、ごく一般的な常識(メディア・リテラシー)で考えれば、それがデマなのか、事実なのかは分かるものだろう。

 たとえば最近、医療記者仲間の間で話題になったのだが、「WHO(世界保健機関)が、抗がん剤の使用をやめるようにいいだした」という、ちゃんちゃらおかしいデマがネットで流布しており、しかも驚くことにそれを真に受ける人がいるのだという。

 あまりに馬鹿馬鹿しい話なので、調べるまでもないことなのだが、暇つぶしにその情報の出所をちょっと調べてみたのだが、そのようなWHOの発表は当然なく、その根拠となる論文なども見つけることができなかった(ま、最初から時間の無駄になるのは分かっていたのだが・・・)。

 これなど、別に医療関係者でなくとも、すぐにデマと分かることである。

 たとえばweb上で、「WHO(世界保健機関)が、抗がん剤の使用をやめるようにいいだした」と書いているHPやブログで、その情報の出典や引用元をたどってみればいい。すると、引用元はいずれも、同じようなブログやHPであり、そのいずれもが、情報の出所が伝聞に過ぎないのである。

 そもそも、そんな重大な発表をWHOがしたのであれば、プレスリリース出すだろうっつうの(笑)。


 「ところがね、そういう風に説明しても、信じ込んじゃった健康カルトの人は、納得しないんだよ」
 「なんで? バカなの?」
 「いやいや、そうじゃあなくって、・・・つうかその発言はまずいだろう(苦笑)」
 「だってさ、情報元がすべて伝聞って、『友達の友達には、誰も会ったことがない』ってやつと一緒じゃん。嘉門達夫かよ!」
 「まあね。しかし偽医学が大好きな人たちは、たとえWHOからはそういう記者発表が出ていないとか、それを証明する医学論文がないと指摘しても、『それは政府が圧力をかけて隠蔽している』とか、『ロックフェラーがもみ消している』とか言うのさ」
 「やっぱ、バカじゃん!」
 「だから、それはまずいって(笑)。いずれにしても、偽医学や陰謀論を信じる人たちにとっては、証拠や根拠などというのは意味がないんだよ。そんなことより、自分自身がその偽医学や陰謀論を信じたいんだから。信心ってやつは、理屈や論理で説得できるもんじゃないんだからね」
 「なるほどねえ。草葉の陰で、カール・セーガンさんや井上円了先生が泣いているな・・・」
 「ま、偽医療と陰謀論の種は尽きまじってことさ」


■偽医学や偽科学、陰謀論にだまされないための参考書

1502_ニセ医学
▲『ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』 NATROM (著)は、現役医師が書いた、偽医学や健康カルトのトンデモ話に騙されないために、必ず読んでおきたい名著!


1502_ニセ科学
▲『ニセ科学を10倍楽しむ本』山本 弘 (著)。「水からの伝言」「ゲーム脳」「脳トレ」「地震雲」「2012年地球滅亡説」「アポロ陰謀論」etc…。まことしやかに伝わる科学っぽいデマのどこが間違っているかを、楽しみながら学べる一冊


1502_陰謀論
▲『検証 陰謀論はどこまで真実か パーセントで判定』 ASIOS (著), 奥菜 秀次 (著), 水野 俊平 (著)。 政治や国際社会、仕事や日常生活等の場で様々に囁かれる陰謀の噂を検証することで、どう陰謀論に立ち向かったらいいかを探る

 (おしまい)
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