ワクチンと水銀に関するデマについて/(医療・福祉)
- 2015/03/01(Sun) -
 以前のブログで、医療系トンデモの話を書いたのを読んだといって、昨夜、知り合い(二児の母親)から、こんな電話があった。

 「去年、子供にインフルエンザワクチンを打ったのだけれど、ネットを見ていたら猛毒の水銀が入っていると書いてあったんだよね。大丈夫なのかな。おまけにワクチンに入っている水銀が、子供の自閉症の原因になるともあったんだけど・・・」

 なるほど、ワクチンがらみの水銀デマというのは、いまだに信じて悩んでいる人がいるのだね。ここは医療記者の端くれとして、いたずらに不安をあおるデマを撲滅し、正しい医療知識の啓発をせねばなるまい。


 さて、まず結論から先に言うと、

 1.インフルエンザワクチンなどに含まれる水銀(エチル水銀)は、子供にも大人にも無害である

2.水銀を含むワクチン摂取と子供の自閉症などの発達障害には、科学的な関連性はない


 ということ。

 なので、心配することはありません。毎年ちゃんと、予防接種を受けましょう!

 むしろワクチン接種をしないことで、インフルエンザに罹って死亡したり、重い後遺症を患ったり、インフルエンザに罹った人がそれを拡散させ、結果として高齢者を死亡させてしまうリスクの方が、はるかに高いのだから。


 さて、ワクチンに含まれる「エチル水銀」が人体には無害であり、子供の発達障害にも関連性がないというのは、世界保健機関(WHO)、厚生労働省、米国科学アカデミー医学協議会( Institution Of Medicine : IOM )など、国際的に信頼性のある保健・医療機関共通の見解である(出典は文末に)。

 そもそもワクチンに含まれるエチル水銀は、細菌に汚染されたワクチンを接種することによって子供が死亡してしまった事例から、ワクチンの保存剤として60年ほど前から使われるようになったものだ。

 エチル水銀は体内に入っても非常に早く排出され、しかもワクチンに含まれる量はとても微量なことから、人体には無害なものなのである。

 医学的にエチル水銀の人体への毒性は、「局所の発赤や腫脹などの皮膚過敏症がみられる程度」で、それ以外の副作用などは認められていない。

 一方で「メチル水銀」は、非常に強い毒性を持つ。

 メチル水銀は、体内に摂取されると脳や神経系に移行し、重い中毒症状を示す。おまけに、なかなか体内から排出されず長期間体内に残存し、たとえば妊娠している場合など、母親が無症状でも子供に障害が現れることもある。

 その典型的な例が、みなさんご存知の水俣病だ。

 このように、エチル水銀とメチル水銀を混同することから、「ワクチンには、猛毒の水銀が含まれている!」というデマが、いまだに後を絶たないのだろう。

 ま、エチルアルコールとメチルアルコールを間違えて飲んじまう、粗忽な酔っ払いと同じような話なわけです、ワクチンと水銀に関するデマというのは(笑)。

 また、こうしたデマをさも真実のように伝え、人々の不安をあおる非常に悪質なホームページ(http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-240.html←あまりに悪質なので直リンはつけない/以下、悪質例については同じ)や、医療や環境に関する陰謀論を煽ることをメシの種にしている、記者の風上にも置けないエセジャーナリスト(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%B9%E7%80%AC%E4%BF%8A%E4%BB%8B)、反医学を標榜するホメオパシーを信じる人々などは、毎日の生活の中で真面目に医療に携わる医療関係者やジャーナリストに比べると、はるかに一般の人向けのデマ宣伝に熱心なので(なぜなら、それが彼らの商売=お金になるから!!)、異常な熱意で、デマを拡散させる。

 ゆえに、ネットや三流ジャーナリスムの世界では、悪質なデマの情報量が圧倒的に多数となり、こうした間違った情報を信じてしまう人が後を断たないのである。

 これは何度でも繰り返すけれど、

 このような悪質なデマを信じてまともな医療(標準医療)を拒否することは、結果として医療ネグレクトにつながり、助かるはずの命が失われてしまう危険性が高い。

 そして、こうした医療ネグレクトの被害者になるのは、多くの場合、子供や高齢者などの社会的弱者である。大切な人たちの命を守るためにも、まともな大人は、医療や健康に関する悪質なデマや陰謀論に惑わされてはならない。

 ことに子供を持つ両親は、適切で標準的な科学・医療の知識を持って、子供たちの成育を担っていく義務がある。


 さて、ワクチンに含まれるエチル水銀と発達障害の関連については、1980年代後半からアメリカで取りざたされたため、その後、多くの科学者や医師が調査と検討を重ねた。

 その結果、最終的に2004年、米国科学アカデミー医学協議会は、「チメロサール(エチル水銀)を含むワクチンの接種を受けることと自閉症との間の因果関係については、否認することが根拠によって支持される」、つまりエチル水銀を含んだワクチン接種と子供の発達障害には、関連性はないと発表した。

 このように、ワクチンに含まれるエチル水銀は人体には無害なのだが、近年、水銀を含まなくても細菌汚染のリスクが少ないワクチン摂取ができるようになってきた。

 そこでWHOも厚生労働省も、米国や欧州でも、「今後はなるべく、エチル水銀入りのワクチンは使わないようにしていくのがベストでしょう」という方向性になっているのである。

 現在、病院や診療所によっては、エチル水銀を含まないワクチンを接種してくれるところもあるので、「エチル水銀は無害と言われても、どうしても気になる」という人は、かかりつけの医師とよく相談するとよいだろう。


 最後に蛇足だが、まめ知識をひとつ。

 体重20kgの6歳の子どもに投与される、エチル水銀入りのインフルエンザワクチン1回分には、多く見積もって2μg/kgのエチル水銀が含まれている。

 これに対して、天然クロマグロの握りずし1貫には、その4倍以上(!)の8.25μgのメチル水銀が含まれているのである。

 つまり天然マグロの握り寿司を1個食べると、インフルエンザワクチンに含まれるエチル水銀よりも、はるかに危険なメチル水銀を、しかも4倍も摂取することになるのだ。

 (野暮を承知で書いておくが、いうまでもないことだが天然マグロの握り寿司を食べても、人体に害はない!)

 ワクチンと水銀のデマを信じる人は、きっと天然マグロの握り寿司は絶対に食べないのだろうし、もちろん自分の子供にも食べさせないんだろうな(苦笑)。

 なんてったって、エチル水銀よりも遥かに毒性の高いメチル水銀が、握り1個に4倍も含まれているのだからね。桶で食ったら、それこそ大変なことになりますぜ(嘘)。

 ちなみに私なら、天然マグロの握り、20個でも30個でも食べるぜ。誰かが、奢ってくれるならね。

1502_マグロ
▲個人的には、大トロよりも赤身の方が好き・・・


(出典)
■保存剤(チメロサール等)が添加されている新型インフルエンザワクチンの使用について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090918-04.pdf

■チメロサールとワクチンについて(横浜市衛生研究所)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/thimerosal1.html

■チメロサールについて(ふくはらこどもクリニック)
http://fukuhara-kodomo.com/yobo11.html

(了)
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