『日本剣道史 第十号 柳剛流研究(その1)』/(柳剛流)
- 2015/02/25(Wed) -
 現在、私は翠月庵での手裏剣術の稽古と併行し、国際水月塾武術協会の小佐野淳先生に師事し、門下の末席に加えていただいた上で、仙台藩伝柳剛流を学んでいる。

 このため、師からご教授をいただき実技を研鑽すると同時に、関連資料をできるだけ収集し、目を通そうと心がけている。

 その一環として過日、某オークションで入手したのが、森田栄編纂『日本剣道史 第十号 柳剛流研究(その1)』である。いやそれにしても、この資料、落札価格が高かった。当分の間、晩酌の肴が一品減るネ・・・・(涙)。


 本書は、流祖の氏名表記をはじめ、心形刀流から流祖に至る伝系など、従来誤謬の多かった柳剛流に関する記述・伝承を丹念な取材によって正した、近年における柳剛流研究の基礎的資料として非常に価値の高いものである。

 発行は、今から42年前の1973(昭和48)年。

 ちなみにこの時、不肖・市村翠雨は、まだ言葉もおぼつかぬ4歳児である。それがいまや、足腰もおぼつかぬアラウンド・フィフティ。嗚呼、人生不可解・・・。

 閑話休題。

 さて、本書は全68ページの小ぢんまりとした冊子ながらも、流祖・岡田惣右衛門奇良の事績から始まり、目録や免許の写し、各地に点在する流祖顕彰碑の碑文、二代宗家として陸前角田に当流を伝えた岡田左馬之輔信忠以下、角田系柳剛流の主だった伝承者の事績がコンパクトに取りまとめられている。

 流儀の技を実際に学びつつ、こうした史家による研究資料を読み込むことで、一段と学びが深まるというのは、実学たる武術稽古の真面目であり、醍醐味だ。

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▲森田栄編纂『日本剣道史 第十号 柳剛流研究(その1)』。その1となっているが、結局、その2は編纂されなかったようだ。本書は「日本の古本屋」などの検索にはまったくひっかからず、国立国会図書館にも蔵書がなく、宮城県図書館と富山県立図書館にしか収蔵されていないとのことであった。ところが非常に幸運なことに、某ヤフオク(某の意味がないか・・・)でたまたま出品されていたので、私財を投げ打って(笑)落札したものである


 本書は流祖・岡田惣右衛門奇良から二代・左馬之輔信忠と、仙台藩伝・角田系の伝承者の事績を中心に追ったものである。

 一方で当流は、流祖から二代まで宗家を置きながらも、実際には流祖存命の時期から、免許者が各地で積極的かつ自由に門弟を取りたてて流勢を広げていったこと(師家の無制約)が特色であった。

 このため宗家たる二代・左馬之輔信忠が陸前角田へ帰郷した後も、流祖の出生地である武州を中心に多いに隆盛を誇り、その門弟数は北辰一刀流を凌いでいたという。また、流祖の直弟子であった直井勝五郎秀堅の流系が田丸久野家に伝承され、現在も三重県松坂で継承されているという。

 これら武州系統、あるいは田丸系統の柳剛流に関する記述は、本書ではいささか手薄であるが、それにしても纏まった流儀の情報の無かった時代に、手紙と足を使ってこれだけの資料を取材・編纂した著者・森田栄氏のご尽力には頭の下がる思いだ。

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▲本書掲載の、柳剛流目録の写しの一部


 なおちなみに、現在、入手や閲覧が可能な柳剛流関係の資料を、以下にざっとまとめてみた。

柳剛流 資料一覧

1. 「幸手剣術古武道史 柳剛流の研究」辻淳 著/読了
2.「埼玉県の柳剛流(その1)」『埼玉大学紀要(体育学篇)』第14巻、21-35、1979年10月/大保木輝雄/入手
3.「埼玉県の柳剛流(その2)」『埼玉大学紀要(体育学篇)』第15巻、35-47、1980年9月/大保木輝雄/入手
4.「日本剣道史 第10号 柳剛流の研究 その1」、1973年/森田栄/入手
5.「柳剛流剣術の特色」(『武道学研究』第22巻第2号 1989年)/ 村林正美/入手
6.「角田地方と柳剛流剣術 : 宮城県 : 郷土が誇る武とそのこころ」2014年/南部修哉/未見
7.「埼玉の剣術 : 神道無念流・甲源一刀流・柳剛流 第7回特別展」1991年/戸田市立郷土博物館/入手
8.『剣道日本』第3巻第6号 通巻30号「続 剣脈風土記 陸前柳剛流」 スキージャーナル/1978年/未見(手配済)
9.『郷土の剣術柳剛流と日本の武道』村橋正美/多気町郷土資料館特別企画展/2004年/未見
10.『埼玉武芸帳―江戸から明治へ』山本邦夫/さきたま出版会/1981年/未見
11.「柳剛流祖岡田惣右衛門奇良」郷土資料/岡安源一/未見
12.「浦和における柳剛流」『浦和市史研究』第2号、132-158、1987年/山本邦夫/入手



 上記資料の中でも、特に『幸手剣術古武道史 柳剛流の研究』(辻淳 著)は、武州に伝播した柳剛流を中心に、丹念な取材・編纂を行った大作で、『日本剣道史 第十号 柳剛流研究(その1)』以上に価値の高い資料である。

 なかでも、各系統柳剛流の切紙・目録・免許や添え書き・添え状などの写しを非常に多数収載しているのは、私のように実技研鑽を主目的とする者にとっては、実にありがたいものである。また、柳剛流の体術における殺法に関する添え書きなども、たいへん興味深いものであった。

 この、『幸手剣術古武道史 柳剛流の研究』については、項を改めて紹介したいと思う。

 (了)
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