兵頭二十八編訳『名将言行録』
- 2008/09/22(Mon) -
ISBN978-4-569-70266-7.jpg


 『兵法家伝書』や『五輪書』に限らず、大の兵法と小の兵法の共通点を探り学ぶというのは、いつの世の武人にとっても重要な稽古である。

 そういう意味で、平成の軍学者・兵頭二十八氏の指摘する「対抗不能性」と「対権力直接アプローチ」は、小の兵法=武術においても、たいへん重要であると考え、私は以前から私淑している。


 そんな同氏の最新刊は、『名将言行録』(岡谷繁実著/兵頭二十八編訳/PHP研究所)である。

 早速、拝読。

 同じシリーズで昨年、兵頭氏の新訳で刊行された『孫子』同様、たいへん読み応えのある作品であった。

 今回の編訳では、原著に記された192人の記述について、兵頭氏が着目した部分を摘録としてまとめている。このため、「なぜこのエピソードを選んだのか?」というところに、同氏の主張したいエッセンスが込められており、兵頭流軍学の市井の門弟としては、そのあたりを推察するのも楽しみでもある。

 また、有名どころの武将のみをチョイスするのではなく、記述の大小は別としても、あえて192人すべてのコメントを採録した点にも、同氏の文献資料・記録に対する誠意が感じられる。


 なお今回の編訳で、武術・武道人が覚えておいて損ではないエピソードとしては、こんな話がある。

 「(剣術初心者が人を斬るには)刀の鍔で相手に撃ちかかるとよい」(柳生宗矩)

 「槍をふるって20回ほど敵の首をとったが、最初の5回は無我夢中でぜんぜん覚えていない。しかし10回を越えると、相手の内兜が実によく見えるようになった」(山中幸盛)

 「(身分を得るまでは大太刀や槍の技が自慢だったが)700石取りになってからは、無名の武士から武芸の試合を申し込まれても、相手にしなかった」(可児吉長)

 「武田信玄の軍は、ヤジリが相手の体内に残るよう、わざと矢の根をゆるくはめていたが、こうした原始部族的旧習を廃止した」(徳川家康)

 「戦場では雑兵たちは頭部が保護されていないと、心理的に持ちこたえられない」(加藤清正)

 etc...。

 秋の夜長の一冊として、おすすめだ。  
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