肘に負担をかけない打剣/(手裏剣術)
- 2015/05/31(Sun) -
 新陰流の前田英樹師範と能楽師の安田登氏の対談本『からだで作る<芸>の思想 』の中で、体調がすこぶる悪いときに、それでも稽古に出ると不思議と調子が良くなる・・・、というような話があった。

 昨日の稽古は、夏風邪の病み上がりということもあり、また丁度稽古をしている時間帯が、30度を超える暑さでもあったため、無理せず慎重に、そろりそろりといった心持ちで始めた。

 稽古を始めてしばらくの間、手裏剣の打剣では、さすがに身体のだるさなどあったものの、1時間ほどたち、剣術の形稽古に移るころには、気持ちが稽古に没入し、身体の不調ということそのものが意識から消え去る。

 その後、居合、そして再び手裏剣の打剣と、いつも通りの一刻の稽古を終える頃には、病み上がりの身体の不快感は、ほとんど消失してしまった。
 
 当然のことながら、病気やケガの療養の真っ最中に、身体に負担をかける武術の稽古を行うというのは考えものだが、病後の回復期においては、むしろ体調の様子をみながら可能な範囲で積極的に身体を動かすほうが、回復が早まるように感じられる。

 これはまさに、リハビリテーションということなのだろう。

 上記の対談本で指摘されていたように、古流の形稽古というのは、それを正しく行うことによって、ある意味で身体をアジャストメントする効果があるのかもしれない。


 一方で私の手裏剣術なぞは、己の肘をぶっ壊してしまうお恥ずかしいレベルである(苦笑)。

 この点で、最近気づいたのは、座打ちでの腕の振り下ろしの影響だ。

 最近は、「腕を振り下ろす際、ある位置で、その腕を急激に止めることは、肘に大きな負担をかける。ゆえに腕を振り下ろす時には、そのまま自然な動きで自分の膝のあたりまで手を振り下ろした方がいい」、という点を念頭に置いている。

 このため立打ちの際、刀法併用の時などは特に、打剣後に柄に手をかけるために振り下ろした手を臍のあたりでかなり強制的に止めていたものを、最近は自然に膝の辺りにまで振り下ろすようにしている。

 こうすることで、翌日に残るような肘の痛みや違和感を感じることが少なくなった。単純なことだが、なかなか効果的である。

 なお、打剣後の抜刀動作については、打剣後、無理に帯刀している柄の辺りで腕(手)を止めずとも、運足と鯉口を押さえている左手の鞘遣いで、下まで振り下ろした右手の自然な動作の流れに合わせることができ、これによって違和感や拍子の遅れなく抜刀することができることも分かってきた。

 ただし1つだけ、この肘に負担をかけない腕を完全に下まで振り下ろす打ち方に難点があるとすると、刺中の精度という点だ。振り下ろした手を、的の目当ての位置辺りで止める打ち方に比べると、いささかコントロールが難しいように感じるのである。これについては、今後の検討課題としておこう。


 さて、こうして立打ちの際に肘にかかる負担はそれなりに軽減できるようになったわけだが、問題はまだある。

 稽古場での定例稽古では広々とした場所ゆえ、立打ちでばんばん打剣ができるわけだが、日常の稽古では、私は団地暮らしのため、室内で2間の距離しかとれない。しかも、欄間がある関係で立打ちができないので、座打ちのみの稽古となる。

 そして座打ちでは、立打ちに比べて、振り下ろした腕を自然な動きでフォロースルーすることが難しいのだ。このため、実際のところ最近は、稽古場での定例稽古の後は肘の痛みはあまり感じないのだけれど、自宅での座打ちの稽古をした翌日は、かなり明確に肘の痛みや違和感を感じることが多い。

 さしあたっては正座での座打ちではなく、跪坐の座打ちあるいは折敷からの打剣として腕を振り下ろせる距離を少しでもとれるようにするか、あるいはなんとか環境を工夫して、自宅でも立打ちができるようにするか・・・、などと思案している。

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 いずれにしても、手裏剣術者にとっては利き腕の肘は命。

 「無事、これ名馬」の故事ではないが、できるだけ負担のかからない打ち方、稽古法をこれからも検討していこうと思う。

 (了)
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