まさかこんな時代が来るとはねえ・・・/(時評)
- 2015/06/28(Sun) -

日本国憲法第21条第1項
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。



 まったく、自分が生きている間に、こんな時代が来るとは思わなかったのは、場末のロートルとは言え取材記者としての自分の先見性の無さを恥じる。

 議会制民主主義に基づいて、国民の負託を得た政府や政権与党が、これほどあからさまに言論弾圧をする時代が到来するとは、いやまったく驚きである。


 1990年代後半から2000年代の初めにかけて、私は中東の民族紛争を自分の取材テーマとして、彼の地で何度か金にならない自腹での取材活動をしたり、38度線を越えて北朝鮮で取材したりもした。

 たとえば当時のシリアは、先代のアサド大統領が健在の時代だったが、言論の自由などまったくなく、とにかく行く先行く先で秘密警察の監視が厳しく、取材どころか世間話をするにも緊張感が必要だった。

 あるいは北朝鮮では、基本的に外国人記者が滞在する宿泊施設には、すべてに盗聴器が仕掛けられているので、自室内で外国人記者同士といえども、自由に会話をすることもはばかられたし、当然ながら一般市民の自由な言葉など、聞くことさえできなかった。それどころか、国境を越える前に通訳から「絶対に金正日と呼び捨てで呼ばないでください。自分の部屋の中ででも、独り言ででも絶対にだめです。必ず、金正日将軍と呼んでください!」と、本気で忠告された。

 イラク北部のクルドゲリラの解放区への潜入を試みた際には、トルコの秘密警察に国境でたいへん紳士的に軟禁され、丁寧にトルコ領内に連れ戻されたことがあった。その際、ジュントルネスな警官氏に、「なんでオレのこと知ってんの?」と聞いたところ、「ずっと監視してたんだよ。あんた、イスタンブールで反政府系の新聞社にいただろう」と、私の取材活動はすべて監視されていたのだった。

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▲中東をうろうろしていたころのパスポート。いまはどうか知らないが、当時は独裁国家ほど、ビザのスタンプがでかかった・・・



 とまあ言論の自由がない国というのは、ことほどさように陰鬱で暗い社会であり、それは必ず権力による監視社会につながるんだが・・・。


●大西英男衆院議員(東京16区、当選2回)

 「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番。政治家には言えないことで、安倍晋三首相も言えないことだが、不買運動じゃないが、日本を過つ企業に広告料を支払うなんてとんでもないと、経団連などに働きかけしてほしい」

●井上貴博衆院議員(福岡1区、当選2回)

 「福岡の青年会議所理事長の時、マスコミをたたいたことがある。日本全体でやらなきゃいけないことだが、スポンサーにならないことが一番(マスコミは)こたえることが分かった」

●長尾敬衆院議員(比例近畿ブロック、当選2回)

 「沖縄の特殊なメディア構造をつくったのは戦後保守の堕落だ。先生なら沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか。左翼勢力に完全に乗っ取られている」

●百田尚樹氏

 「本当に沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかん。沖縄県人がどう目を覚ますか。あってはいけないことだが、沖縄のどっかの島でも中国にとられてしまえば目を覚ますはずだ」
 



 とりあえず、この議員たちに投票した人や、この作家の本を買った人たちというのは、言論の自由や表現の自由をどう考えとるんだろうね。

 これら若手議員の発言だけでなく、政府自民党は先の選挙前に報道各社に「通達」という形式で圧力をかけるなど、とにかく言論統制や弾圧があまりにもあからさまだ。

 また、これは地方のニュースなので関東圏でない人はあまり知らないと思うけれど、埼玉県さいたま市の公民館・教育委員会が、護憲派のデモをテーマにした俳句の公民館だよりへの掲載を拒否して裁判となっている。

 往々にして行政の人間というのは、時の政府与党や地元の権力者の動きに敏感なので、頼まれてもいないのに政治家の意向を「忖度(そんたく)」したがるものなのである。

 ゆえに、このさいたま市の公民館・教育委員会のように、簡単に言論統制を始めてしまうのだ。

 埼玉といえば、明治政府の圧制に叛旗を翻し自由自治元年を謳った「秩父事件」で、その名を歴史にとどめている場所にもかかわらず、この体たらくである。

 草葉の陰で井上伝蔵が泣いていると思うのは、私だけではあるまい。


 護憲にせよ改憲にせよ、集団的自衛権に賛成にせよ反対にせよ、それらの議論とそれに基づいた政策決定、民主主義の根幹を担保しているのが、言論の自由であることを忘れてはならない。

 あんまりこういう政治向きの話題は、ここでは書きたくないのだが、あまりにも最近、言論統制や言論弾圧があからさまなので、場末の記者として思わず書き連ねた次第。

 (了)
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