知新流印可伝授書に見る、打剣の秘伝/(手裏剣術)
- 2015/09/07(Mon) -
 藤田西湖著の『図解 手裏剣術』(名著刊行会)は、手裏剣術を志す者であれば必ず手元に置いておくべき基本資料だ。

 個人的には、本書に掲載されている知新流関連の記述は、二次資料ながらも、武術としての手裏剣術に関してたいへん重要な示唆の数々を与えてくれるという点で、何度となく精読している。


 これはあくまでも現時点での私見だが、根岸流に代表される江戸末期以降の近代的な手裏剣術の打剣が、「弓の形、剣の精神」ということで、逆体での打剣をベーシックにしたことにより、打剣距離を一気に伸ばした一方で、武術としては「剣術の理合との乖離」「居着きやすさ」というマイナス面を抱えてしまったことは、否めないのではなかろうかと推察している。

 一方で順体を基盤とした手裏剣の打剣は、剣術の理合との乖離が少なく、また送り足にせよ歩み足にせよ運足を伴いながらの打剣がより自然で違和感なく居着きにくい。

 こうした点を踏まえた上で、知新流のような古い時代の順体をメインとした手裏剣術の伝書や資料をよく読むと、さまざまな発見や気づきがある。


 ところで順体・逆体についての考察とは異なるが、過日の稽古中、改めて実感したのが『図解 手裏剣術』に記載されている知新流印可伝書に記された“秘伝”だ。

 そこには下記の図を示した上で、

 「此の通りに当たる様に不立様に打たせる事也ケ様教えれば則ち立なり是秘伝なり」

 と記されている。

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▲藤田西湖著の『図解 手裏剣術』(名著刊行会)より。知新流の秘伝の図


 翠月庵では、直打で剣を打つ際のコツとして、初心の段階から「剣を回転させず、的に立ったままぶつける心持ちで打て」と徹底的に指導しているが、この知新流の秘伝の内容も同じ事である。

 また、ある程度熟練した者でも、間合の変化などで剣が刺中しにくくなった場合、動きをリセットする意味で、「あえて的に刺すことを意図せず、剣を立ったまま的にぶつける」ということを推奨している。

 その際に、上記の図のイメージを視覚化しながら打つと、非常に効果的だ。

 ある程度手之内ができ上がり、「板金を打つ心」(フルパワー)での打剣ができるようになると、無意識のうちに手首のスナップに頼ってしまい、首落ちが多くなることがある。そうした場合、上図を意念の上で視覚化しながら打つことで、首落ち=手離れのタイミングを適切に補正することができる。

 過日の稽古中、三間から四間、四間から二間などと、間合を変えながら打つ稽古の際、改めてこの「イメージ化」の重要性を再確認した次第である。

 古人の教えは、奥深いものだ。

 (了)
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