同好の士/(身辺雑記)
- 2015/09/24(Thu) -
 普段、和服を着ていることが多いので、外出するときなどはそれなりに目立つのだろうなということは自覚をしている。

 和服中心の生活をしはじめたのは、多分、2004年くらいからか。勤め人ではなく、取材の時以外は身なりにこだわらなくていいことから、「キモノもいいかな・・・」と思ったのがきっかけだ。

 時期的にも、ちょうどその頃が「男の着物」ブームみたいなものの走りだったように記憶している。

 その当時、都内のマンション(という名のアパート)に住んでいたのだが、和服で出歩いても特別目立つというのはそれほどなかった気がする。

 ま、なにしろお江戸は変わり者には寛容な街だから、ピンクのモヒカンにライダースジャケット&トゲトゲリストバンドでギターを抱えたお兄さんと、着流しに長羽織で博多の角帯に鉄扇をぶち込んだ私と、プラダのバッグにテーラードスーツのOLさんが、山手線の車内で並んで座っていても、何の違和感もなく平和な日常が続くわけだ。

 ところが5年ほど前に、都心から北へ電車で40分ほどの武州・中山道のとある町に引っ越してきたところ、まあ、外を歩くたびに、ジロジロと見られることはなはだしい。

 居酒屋の暖簾をくぐれば、昔のマカロニウエスタンのワンシーンのように店内の客が一斉にジロッとこちらにガンを飛ばし、図書館の受付のおばさんはオイラの足の先から頭のてっぺんまでをマジマジと見つめ、コンビニのレジのお姐さんは「咄家・・・!?」と小声でつぶやき、買い物帰りに歩道ですれ違うおばあさんは、人語を話す珍獣に遭遇したようにポカンと口を空けたままその場に立ち尽くす・・・(以上、すべて実話である)。

 ま、そうはいっても、この町での暮らしも幾年月が過ぎ、自分が立ち回る先の居酒屋やスーパーやコンビニなどでは、もう着流しや浴衣で出歩く私の姿が当たり前となり、たまさかにジーパンにB-15DフライトジャケットやM65フィールドジャケットなどを羽織って出歩いていると、顔見知りのお好み焼き屋のおばさんが、「洋服なんて、珍しいわねえ」などと声をかけてくれるようになった。


 そんなある日の稽古帰り、なじみの店とはいわないが、それまで4~5回ほど入ったことのある地元の洋食店で食事をしていたところ、店のおかみさんに「いつも和服なんですねえ」と、声をかけられた。

 「いやいや、道楽でして・・・」などと答えると、私の刀ケース(石神井 宇田川謹製)が気になったらしく、「居合か何かをやってらっしゃるのですか?」と聞かれた。

 説明するのも面倒くさいので、「ええ、まあ・・・」などと曖昧に答えていると、「うちによく来てくださる方で、お客さんみたいにいつも着物で来られる人がもう一人いるんですけどね。その方も、何か武道をやってらっしゃるそうなんですよ」とのこと。

 へえ~っと思い話しを聞いてみると、どうもS流の人らしい。

 その後、最寄り駅の周辺などで、その人物らしき和服姿で刀ケースを肩にかけた若い男性を2~3度見かけた。

 それにしても、こんなたいして大きくもない郊外の町に、古流をやっていて和服を着て出歩いているような変わりモンが、私も含めて2人もいるとは、なんとも奇特な話である。

 その後、くだんの洋食店からは足が遠のいてしまったので、そのS流氏と顔を合わすことはなかったが、同じ町に武芸と和服を愛好する同好の士がいるというのは、なんとなく心うれしく思う。

 (了)
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