心形刀流剣術家の著作にみる、真剣刀法中の断脚之術(その2)/(柳剛流)
- 2016/01/11(Mon) -
 明治36(1903)年発行の金子愛蔵著『武道教育 剣道二百二拾本勝太刀之法』(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/860492)から、まずは「先の先」の勢法に示された脚斬りに関連する太刀筋を見てみよう。

■先々ノ先
第四十  敵ノ足ヲ斬ルト見セテ敵ノ右ノ肩ヲ斬ル
第四十一 敵ノ足ヲ斬ルト見セテ敵ノ左ノ肩ヲ斬ル
第四十二 敵ノ足ヲ斬ルト見セテ敵ノ頭上ヲ斬ル
第四十五 敵ノ足ヲ斬ルト見セテ敵ノ右ノ小鬢ヲ斬ル
第四十六 敵ノ足ヲ斬ルト見セテ敵ノ左ノ小鬢ヲ斬ル
第六十六 敵ノ足ニ隙アリト見トメテ打込際ニ拒(ふせ)ゲハ頭上ヘ斬込ム
第六十七 敵ノ足ニ隙アリト見トメテ打込際ニ拒(ふせ)ゲハ右ノ肩へ斬込ム
第七十五 上段ヨリ足ヘ往クト見セテ小鬢ヘ斬込ム
第七十六 上段ヨリ足ヘ往クト見セテ左ノ小鬢ヘ斬込ム
第七十七 上段ヨリ足ヘ往クト見セテ右ノ肩ヘ斬込ム
第七十八 上段ヨリ足ヘ往クト見セテ左ノ肩ヘ斬込ム
第七十九 上段ヨリ足ヘ往クト見セテ頭上ヘ斬込ム


 まず第40~42、45~46は、いずれも敵の足(脚)を斬ると見せて、左右の肩、正面、左右の横面を斬るとしているが、 「どのように脚を斬ると見せるのか?」についてが判然としない。

 しかし続く75~79が、「上段より足へ行くと見せて・・・」とあるということは、40~42・45~46では、仕太刀の構えは上段ではないと判断できる。

 そこで仮に、仕太刀が中段や下段に構えているとすれば、そこから小袈裟に脚を斬るようにして相手を誘い、その拍子で肩や面、横面などを斬るとすればよいのではなかろうか。

 次に、第66~67では、「敵の足に隙ありと認めて打ち込む際に防げば・・・」とある。これは特に難しい判断は必要なく、脚に打ち込んで相手に受けられたところで、二の太刀で正面または右肩に斬り込むという理解でよいだろう。

 第75~79は、すべて「上段より足へ行くとみせて・・・」となっている。この場合、実際に初動で脚に斬り付けつつ太刀筋の軌道を変えるというのは合理的ではないので、軽い挙動や視線を送るなど「気で誘い」脚を斬ると見せて、その他の部位を斬るという理解が適切ではないか。


 これらはいずれも、体術に転換して考えてみると、より理解しやすいともいえる。

 たとえば、第40の「敵の足を斬ると見せて敵の右の肩を斬る」や45の「敵の足を斬ると見せて右の小鬢を斬る」は、左の下段蹴りからの右逆突き、第41や46は、左下段蹴りからの左刻み突きなどというように応用できる。つまり、打撃における初歩的な対角線攻撃と同様の理合となるわけだ。

 私など伝統派空手道の試合では、左構えから先をとって前拳で相手の前拳を押さえて潰しつつ、左の足払いからの逆突き、あるいは逆ワン・ツウーといったコンビネーションをよく使ったものだが、これらの動きを剣にすれば上記の太刀筋と同じ理合になる。

 もう1つ、ここで留意しておきたいのは、本書で金子が教える太刀筋では、「先の先」の業には最終的に脚を斬ることで勝つものがないということだ。

 一方で、この後で解説する「後の先」の太刀筋では、最終的に相手の脚を斬って勝つ業が複数示されている。

 これについては脚斬りという勝口を考える上で、慎重に検討を加えるべき点であるように私には感じられる。

 (つづく)
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