柳剛流の目録口伝-二刀伝について/(柳剛流)
- 2016/01/21(Thu) -
 この記事は、当初は「心形刀流剣術家の著作にみる、真剣刀法中の断脚之術(その4)」として書こうと思っていたのだが、本ブログの前回記事が免許の口伝に関することだったこと、また内容的にも独立させた方がよいと考え、連載記事としてではなく、単独記事とした次第。

 よって、「心形刀流剣術家の著作にみる、真剣刀法中の断脚之術」は、前回の(その3)で最終回となるのであしからず。



 金子愛蔵著『武道教育 剣道二百二拾本勝太刀之法』(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/860492)に示された220本の太刀筋のうち、「後の先」の部最後の13本は対二刀の勝口となっている。

160121_図版
▲後の先の第九十八以降の太刀筋は、対二刀の勝口が示される


 これらの勝口を分類すると、喉・胸・胴・小手への向突きが4本、受け流してからの斬撃が5本、転身して捌いての斬りが3本。そして残る1本は「敵両刀ヲ以ッテ甲手ヘ打込来レハ弛シテ敵ノ頭上ヲ斬ル」とある。

 「弛シテ」というのが分かりにくいが、「弛める」ということであれば、相手の両刀での打込みを構えを弛めて抜き正面を斬るという理解でよいだろう。



 さて、ここで話は柳剛流の二刀伝に移る。

 柳剛流は、その母体となった心形刀流と同様に二刀の勢法が流儀の体系に組み込まれている。当流の二刀勢法は目録の段階で伝授されるものであり、流祖直伝という石川家に伝わる目録を見ると、以下の8本の形が示されている。

■二刀
・上段防
・青光刀
・不乱刀
・青眼破
・車水刀
・利支剣
・心剛刀
・鷹羽剣

 これらの二刀勢法は、田丸伝柳剛流に現在まで伝承されているという。

 ただし、村林正美先生の記した「柳剛流剣術の特色」(武道学研究22-2/1989)を読むと、現在、田丸伝を伝承されている三村幸夫先生は、先代の清水誓一郎先生より二刀や小太刀の技法を伝承していたが、上記二刀の形の名称は伝えられていなかったという。



 柳剛流の伝承において目録での教授内容は、時代を下るとともに簡略化される傾向にあり、またその内容も伝承する諸派によって異同が多いということは、本ブログでもたびたび指摘している通りである。

 その上で全般的な傾向としては、目録での技法体系は「柳剛刀」と称される以下の6本が基本となる。

・飛竜剣
・青眼右足刀(角田伝では青眼右足頭、以下カッコ内は角田伝の表記)
・青眼左足刀(青眼左足頭)
・無心剣
・中合刀(中合剣)
・最合刀(最合剣)

 これに二刀伝、小刀伝、槍・長刀入伝、備十五ヶ条フセギ秘伝が伝授されることが、最も一般的なようだ。

 今回の記事では、この中で二刀伝に注目しているわけだが、先に示したように流祖直伝の伝書では、二刀の勢法は8本の形の名称が明示されているのに対し、たとえば武州で最も多く目にする機会のある岡田十内系や岡安禎輔系などの目録では、二刀については単に「二刀伝」という記述のみであることがほとんどである。

 ここで注意したいのは、武州系の柳剛流において、目録で伝授されていた二刀伝は、勢法=形として伝承されていたのか、あるいは形ではなく純粋な口伝として伝承されていのかが、目録を読むだけでは判然としないということだ。

 たとえば仙台藩角田伝系の最初期の目録伝書を見ると、一條左馬輔が出した複数の目録では、二刀に関しては「二刀伝 青眼破 口伝」とのみ明記されている。

 その上で、現在私が学んでいる一條左馬輔以来の仙台藩角田伝柳剛流の実伝では、現在、目録の二刀伝は口伝としての伝授のみあり、勢法=形としての伝承はない。


 以上の点を整理すると、


■柳剛流の二刀伝について
1.流祖直伝の段階では、目録の二刀伝は、勢法=形8本の伝授であった。
2.田丸伝では、これらの勢法=形がそのまま伝えられ、現在まで伝承されている(ただし名称は一時失伝。本数も8本すべて現存かは不明)。
3.伝播最初期の角田伝では、「二刀伝 青眼破 口伝」として、形の名称は明記されていない。
4.武州系統の伝では、「二刀伝」とのみの記述で、形の名称は伝書に明記されず。
5.現在の角田伝では、「二刀伝」としては口伝のみの伝授で、勢法=形の伝承はない。

 ということである。

 以上の点からひとつ仮説を立ててみると、

 「角田伝の柳剛流では当地に伝播したかなり早い時期から、目録の二刀伝は口伝のみの伝授に収れんされていたのではなかろうか?」

 ということである。

 一方で、田丸伝の柳剛流では、二刀伝の形名称は失いつつも、勢法そのものは現在まで伝承されてきた。

 となると、武州系の柳剛流各派において目録に示された二刀伝は口伝のみの伝授だったのか? はたまた形の伝授も伴ったものであったのか?

 武州系統の柳剛流がことごとく失伝してしまって久しい今、なぞは深まるばかりである・・・・・・。



 さて、現在の仙台藩角田伝柳剛流の「二刀伝(口伝)」では、我が二刀の場合の勝口はもとより、相手が二刀の場合の「フセギ伝」も伝授される。

 これらの具体的な内容については、流儀の口伝のためここでは秘する。

 しかし、冒頭で紹介した心形刀流・金子愛蔵の示す対二刀の勝口の数々を読むと、「なるほど!」と大いに腑に落ちるのであった。


 ■参考文献
 「幸手剣術古武道史」剣術流派調査研究会/辻淳
 「柳剛流剣術の特色」(『武道学研究』第22巻第2号 1989年)/ 村林正美
 「一條家系探訪 柳剛流剣術」私家版/一條昭雄

 (了)
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