映画『ICHI』の逆手一文字斬り/(武術・武道)
- 2009/04/29(Wed) -
 「おう市村、ちょっと忙しくなったからって、急にブログの更新が減ってんじゃん」
 「なんだよ、GWで久々に会ったと思ったら、いきなりクレームか?」
 「いやいや、オレはアンタの手裏剣道場のいちファンとしてだなあ・・・」
 「うちは道場じゃなくて、稽古場だ」
 「まあ、そういうアンタの、どうでもいいこだわりはきらいじゃあねえが、最近、ちょっとウザイぞ」
 「いいんだよ、この世界は頭んなか筋肉なやつばっかだから、オレくらい教養が香る人間も、業界には必要なんだ」
 「また、そういう上から目線で毒をはくから、嫌われるんだよ」
 「いいんだよ、オレは。こっちの世界では、こういうキャラ設定なんだ」
 「キャラかよ」
 「で、今日はなんだよ。また弟子が大声で『うぁ~~~』とか叫びながら、自分勝手に投飛ばされてくれる、インチキ合気柔術の解説でもしろってか? それとも電話で『気』をいれちゃう、ナゾの空手家のネタとか?」
 「いやいや、そうじゃあなくってさ・・・。アンタ『ICHI』は見た?」
 「おお、ちょっと前にな。綾瀬はるかちゃんは、なかなか・・・・・・良いではないか! 不幸そうでさ」
 「まあ、アンタの好みはどうでもいいんだが・・・。で、あれってさ、居合ってああいう斬り方すんの?」
 「ああいいうのって、どんなよ」
 「いやだから、あれだよ。座頭一の逆手一文字斬り!」

 


 「・・・」
 「あ、今、オレのことバカにしただろ」
 「いやいや、そうじゃあねえけどさ、10代の頃からフルコンでならしてるアンタでも、ヤットウについての理解はそのレベルなんだなあと」
 「そんな、アンタみたいなマニアな稽古はしてねえからよ。で、どうなのよ」
 「う~ん、まあオレがすべての古流の剣術や居合を知っているわけじゃあねえから、断言はしないけどさ。少なくとも、ああいう斬り方は合理的じゃあねえよな」
 「なんで? かっこいいじゃん」
 「じゃあアンタは、かっこうがいいから、いつも試合のときには飛び後ろ回し蹴りをするのか? それとも、いまや懐かしのホリベー直伝・奈良時代のなぞの武術・骨●の必殺浴びせ蹴りとかやんのか? お前、試合の時は、ローキックと下突きばっかじゃん」
 「そりゃあそうだ。男のロマンは、魂のこもった下段蹴りと下突きなんだ。それでいいんだ。だいたい、浴びせ蹴りなんてしたら、地面に転がった瞬間にサッカーボール・キックでフルボッコだぞ」
 「だろ。だからそれは剣術も居合も一緒さ。殺陣みたいな太刀筋で斬るひまがあったら、拍子に乗るなりなんなりして、一歩前に出て突くなり斬るなるするだけ。まあ、ぬるい一人稽古しかやってない居合屋さんじゃあムリだろうけども。一刀流系の切落、新陰流系の合撃や改心流のいうところの勝太刀なんか、素人さんがはたから見たら、ただ正面を真っ直ぐ斬ってるだけにしか見えんだろうけど、それが日本剣術の基本であり、かつ極意なんだしね。下段回し蹴りだって同じだろ」
 「ふ~ん、ヤットウも、実際は地味なんだねえ」
 「ローばっか蹴ってるアンタには、言われたかねえけどな(笑)」


 「じゃあ、座頭一のあれは、まったくの嘘かね」
 「いや、まったくのフィクションっていうわけでもない。モチーフはあると思う。古流の剣術や抜刀術・居合なんかでも、逆手で『抜く』というのは結構あるんじゃないかな」
 「たとえば?」
 「じゃあちょっとやってみるか。この型はオレがガキの頃に最初に稽古した抜刀術で『志破剣』という型なんだが。まず納刀状態から両手で鍔元を押さえ持って、右足を踏み込みながら鞘を送って相手の中段に柄頭当て。そのまま鞘引きしつつ、逆手抜刀して左八相に構え。さらに右八相に構え直して袈裟に斬って落す」
 「おお~、逆手一文字斬り!!」
 「いやだから、一文字ってなによ・・・」
 「まあいいから。解説、続けてくれや」
 「つまりは剣を抜く際、状況として普通の抜付はやりにくいが、逆手での抜刀なら抜きやすいという状況もあるわけ。逆手での抜刀というのは、そういう状況としての必然性がある場合のみの抜き方であって、抜いてしまえば、あとは斬る時には普通に持って斬ればいい」
 「ふ~ん。でも今、斬る直前に、逆手から普通の持ち方に握り直したよなあ。逆手から順手に持ち替えるなら、そのまま逆手で斬ればいいじゃん。持ち替え時の、一挙動も減るしさ」
 「まず逆手じゃあ、剣先が伸びないだろ。それに逆手から順手に持ち替える動きには、ほとんどスキはないよ。一拍子で持ち替えられるしね」
 「結局、逆手である必然性がないということか。でも超接近した間合なら、ああいう持ち方のが斬りやすいんじゃね? おれは刀のことはよく知らんけど」
 「映画みたいに逆手で斬るような、自分のヘソと相手のヘソがくっつくような近間でも、鍔元の刃で押斬りするとかその場で上体を半身に捌いて平突とか、柄頭で叩くとか、わざわざ柄の握りを逆手にしなくても、いくらでも斬るなり突くなりする技があるわけよ。普通の握りのままでそれができるのに、わざわざ間合が極近間のみに限定されて、なおかつ刀勢も弱い逆手持ちで斬る必然性はないねえ」


 「ようするに、逆手一文字斬りは、抜くときだけの、しかも特殊な状況のときのみの技ってことか」
 「つうか、一文字ってなんなんだよ」
 「座頭一の映画だと、そういう技の名前なんだって!」
 「ふ~ん。まあ、アンタ向けに言えば、幻の三角蹴りみたいなもんだ。できなくはないが、超特殊な技だと」
 「おい市村、アンタまさか『空●バ●一代』の三角蹴りとか、マジで信じてんの?」
 「え、あれ嘘なの?」
 「アンタ一応、寸止めだけど空手も黒帯だろうが」
 「あっ、お前、今、寸止って、ちょっとバカにしただろ」
 「いやいや・・・。ま、同じ空手家じゃねえか」
 「いや、アンタは『カラテ家』で、オレは『空手家』だ。そこんとこは、区別しろ」
 「まったく意味分かんねぇ・・・」
 「いずれにしても、たぶんできると思うんだよ、オレは。三角蹴りは」
 「ったく、そんなんだから、万年二段なんだよ。アンタもう、5年くらい昇段してねえだろう」
 「うっ・・・。いや、オレは手裏剣とヤットウの稽古や指導やらで忙しいから、空手に関してはやむを得ず、ここ5年間、昇段をしていないのだ。けして、空手の稽古の手を抜いているわけではないのだ・・・」
 「ふ~ん(笑)」
 「ま、そういうことでだ・・・。逆手一文字斬りはフィクションだが、三角蹴りはありえると!」
 「だから、あれもフィクションだって」
 「オレは今でも、『梶原一騎(談)』を信じるぞ」
 「それは『プ●レス スー●ースター列伝』の方だろうが・・・」
 「そういやカブキって、少林寺で修行をつんだ、カンフーの達人なんだってな」
 「おい、プロレスの話になったら、急に懐疑主義的キャラじゃなくなってるじゃねえか」
 「いいんだよ、プロレスはそれで。夢があるんだから。いやしかし、ダイナマイト・キッド対初代タイガーは、ほんと名勝負だったよ、マジで。あと馬場さん対ハンセンのシングルな。あれはスモール・パッケージ・ホールドで、全盛期で敵なしだったハンセンに馬場さんがフォール勝ちしたんだ。いや、やっぱり、さすがのハンセンも社長には勝てなかったなんだなあ。それにしても、あの頃のプロレスには、少年の夢があったね」
 「はいはい・・・」

  (おしまい)

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