『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』を読む(その1)/(柳剛流)
- 2016/03/11(Fri) -
 本日は3月11日。

 5年前の震災で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表し、現在も避難生活を強いられている皆さんにお見舞いを申し上げます。



 さて、以前本ブログにて、柳剛流に関する最も新しい資料として、2014年11月に上梓された南部修哉氏著『角田地方と柳剛流剣術-郷土が誇る武とそのこころ-』という書籍を紹介した。

 先日、南部氏から、前著に大幅な加筆を加えた増補・改訂版を上梓したので、当庵にご寄贈くださるとのご連絡をいただいた。

 そして昨日、3月6日に完成したばかりだという、南部氏著の『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』を受け取った。

160311_030028表紙
▲仙台藩角田伝柳剛流の第一級資料である、南部修哉氏著『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』


 本書は、宮城県角田地方に伝承された柳剛流に関する史実や資料を取りまとめた前著の増補・改訂版である。

 内容は、柳剛流宗家二代目である岡田(一條)左馬輔信忠をはじめ、三代目斉藤数衛、四代目泉富次、五代目泉丁三郎など、仙台藩角田伝柳剛流の主な人物の経歴をはじめ、柳剛流の流儀紹介、流祖の事跡、角田・石川家における柳剛流伝承の経緯、明治以降の角田における柳剛流の事跡などがたいへん詳しく記載されており、現状においての角田伝柳剛流の第一級の資料となっている。

160311_030146目次
▲流祖の経歴はもとより、藩政時代の成教書院からはじまり、旧制角田中学校、そして戦後の角田高等学校に至るまでの、仙台藩角田伝柳剛流の事跡がまとめられている


 今回の増補・改訂では、角田伝の祖である岡田左馬輔の事跡について、さらに掘り下げた調査結果が示され、現時点で岡田左馬輔に関する最も信頼できる調査資料となっている。

 また今回、前著の発行後に南部氏が入手された角田伝柳剛流の免許巻・殺活免許巻とその読み下し文の全文が新たに掲載されており、私のような実技の修行を主とする者にとっては、本当に興味深く参考になるものとなっている(詳しくは次回以降で触れる)。

160311_030231免許
▲斉藤龍五郎が昭和14(1939)年に、旧制角田中学校最後の剣術師範であった斉藤龍三郎から受けた柳剛流免許。長刀や五眼伝、七ッ死や一人之剛敵といった口伝のほか、薬物の調合法や使用法も記されている


160311_030526殺活免許
▲上記免許と同様に斉藤龍五郎が受けた殺活免許巻


 さらに今回加筆された、第7章の「大張は柳剛流剣術の里」という一文は、まさに私が学ぶ角田伝についての直接的な記述であり、大張地区には6つの柳剛流剣士の頌徳碑があることなど、じっくりと拝読させていただいた。

 そのほか、今回の増補・改訂版では、日本の戦史や刀剣史についての記述も大幅に加筆され、読み応えのあるものとなっている。


 さて、本書の詳しい内容については次回以降、紹介していくが、まず最初に今回の増補・改訂版で目を引いたのは、柳剛流の呼称についてである。本書の第三章「柳剛流剣術とは」の冒頭には、次のように記されている。


 まず「柳剛流」の呼称であるが、多くの武術書では「りゅうごうりゅう」となっているが、角田地方では、「りゅうこうりゅう」といっていた。
 前回の初版では、武術書に倣って「りゅうごうりゅう」としたが、今回は角田地方の呼称にしたがって、「りゅうこうりゅう」に書き直した。


 本書の筆者である南部修哉氏の父君である南部雄哉氏は、角田伝柳剛流の目録受領者であり、その伝書は本書にも掲載されている。また修哉氏ご自身も、昭和30年代には成教書院の伝統を受け継ぐ宮城県角田高等学校剣道部(前身は旧制角田中学校であり、明治から昭和初期までの歴代剣術師範はすべて柳剛流の免許皆伝者であった)に在籍されていたとのことである。

 このような経歴を持つ南部氏が、本書で明確に「角田地方では、柳剛流を“りゅうこうりゅう”と呼称していた」と記述している事実はたいへん重い。

 これにより、私の師で角田伝を伝承した小佐野淳先生の証言、武州系である岡田十内の末裔から話を聞いたという剣術史家の辻淳先生の証言、故山本邦夫埼玉大学教授の記述、流祖直伝の伝書を伝える石川家文書に記された振り仮名、そして本書の南部氏、以上いずれにおいても、柳剛流の呼称は「りゅうごうりゅう」ではなく「りゅうこうりゅう」であったこととなる。

 以上の点から、少なくとも仙台藩角田伝柳剛流については、その呼称は「ご」とにごらない、「りゅうこうりゅう」であると断言してよいかと思う。

 これで長年の謎がひとつ、氷解した。

 (つづく)
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