『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』を読む(その2)/(柳剛流)
- 2016/03/15(Tue) -
 さて、南部修哉氏の著書『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』は、初版に加えて新たな資料に基づき、仙台藩角田伝柳剛流の祖である柳剛流二代目宗家・岡田(一條)左馬輔信忠の事跡について、さらに正確な記述が加えられた。

 これにより、従来あまり明確ではなかった左馬輔の生涯が一段と鮮明になったのは、本書の大きな功績である。

 左馬輔は柳剛流二代目の襲名後、ふるさとの角田へ帰郷し石川家の剣術師範となるが、その後、遺恨による真剣での立合が原因で角田を出奔、石巻で隠棲することとなる。

 これまで、その後の左馬輔の足跡は明らかではなかったのだが、本書では石巻隠棲後も左馬輔が年に1度角田を訪れ、主家である石川家に贈答品を届けていたことなどが、古文書の調査に基づいて解説されている。

 また本書では、角田における柳剛流稽古の総本山とも言える成教書院や、その流れを受けついだ旧制角田中学校における歴代柳剛流師範の事跡、さらに昭和30年代に著者自身が在籍していた宮城県立角田高等学校(旧制角田中学校)剣道部のことなども詳しく記されており、江戸後期から明治、大正、そして昭和という時代の流れの中で、角田地方の柳剛流が興隆し、しかし次第に剣道に変遷し失われていく様子が詳しく記されている点も非常に興味深く、資料的価値もたいへん高い。

 さらに本書は、著者である南部氏の父君で柳剛流の目録受領者であった南部雄哉氏やその周辺の人々、そして著者自身の歩みも含めた家族史・個人史でもあり、あるいは昭和の角田地方に関する郷土史の面もある。

 こうしたヒューマンな部分の記述も、柳剛流という武術によって著者と縁をいただいた私としては、たいへん興味深く拝読させていただいた。


 このように本書は、ごく近年まで角田地方で継承され、地域で育まれてきた角田伝柳剛流の歴史を俯瞰し、先人の事績を網羅的にたどることのできる、きわめて貴重な剣術史資料である。

 これは個人的な考えだが、これまでの柳剛流研究においては、森田栄著『日本剣道史 第十号 柳剛流研究(その1)』、山本邦夫著『埼玉武芸帳-江戸から明治へ』、辻淳著『幸手剣術古武道史』・『戸田剣術古武道史』、以上の4冊が、流儀研究の基礎的重要資料であった。

 これに加えて、南部氏の『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』は、第五のそして最新の重要資料であると断言できる。

 さらに言えば、実技として仙台藩角田伝の柳剛流を受け継ぎ稽古をしている修行人である私としては、本書は他の基礎資料以上に重要な一冊であり、今後も長く枕頭の書となることが確信できる。

 なお本書は私家版であるが、角田市図書館ほか、関係の資料館などに寄贈されているとのことなので、柳剛流に関心のある方は、必ず一読されることをおすすめする。


 次回は本書に新たに掲載された。、旧制角田中学校剣術師範・斉藤龍三郎が記した『柳剛流剣術免許巻』について紹介する。

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 (本文中、一部敬称略)

 (つづく)
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