ネット上で示された、柳剛流に関する疑問について/(柳剛流)
- 2016/07/04(Mon) -
 先日、某SNS上で、柳剛流に関する疑問が話題として出ていました。

 そこで以下、当流の実践者の立場から、つらつらと答えられる範囲で回答をまとめてみました。

 ま、余計なおせっかいかもしれませんが、少しでも当流の正しい姿をご理解いただければうれしく存じます。


Q.「脛きりには要訣のようなものがあった?」
A.当然あります。具体的には口伝のためここでは書きませんが、いずれにしても、ただ闇雲に脚を斬ればよいというものではありません。
 どうも皆さん、柳剛流の脚斬り=「断脚之術」について、たとえば双方が見合った状態から先をとって低く踏み込んで片手打ちで相手の脚を斬る・・・・、みたいなイメージがあるのかもしれませんね。しかし当流の「断脚之術」は、それほど単純なものではありません。
 剣術でも柔術でも、業を遣うには必ずそこに「作り」から「掛け」という前提があります。たとえば新陰流の「必勝」という形は左太刀の業としてよく知られていますが、左太刀で斬って勝つために、その前提としての「作り」や「掛け」が、運足や体捌き、拍子や間積もり等の口伝として伝えられています。
 同様に柳剛流の断脚之術にも、脚を斬って勝つための前提としての「作り」と「掛け」が、運足や体捌き、拍子や間積もり等の口伝として伝えられており、それらがあってこそ柳剛流の断脚之術なのです。
 藪から棒に、脚に斬りつけるようなものではありません。
 こうした脚斬りのための「作り」や「掛け」の理合は、門人が最初に学ぶ形である、「右剣」と「左剣」に明確に示されており、初学の段階からそれをみっちりと学びます。
 なおこれらの点については、本ブログの旧記事「いかにして脚を斬るか?」(http://saitamagyoda.blog87.fc2.com/blog-entry-811.html)もご参照ください。


Q.「柳剛流は脛きりで世間に知られているけど、別にそれだけではなかった?」
A.たしかに脚斬り=断脚之術が、当流の真面目であることは疑いがありません。しかし当流の勝口(かちくち)は、脚斬りだけではありません。面、横面(小鬢)、頸部、咽喉部、裏小手、上腕、胴、脇下等への斬撃・打突による勝口が、剣術・居合・突杖・長刀のそれぞれの形で示されています。
 また、往時の竹刀打ちによる試合稽古においても、脛打ちだけでなく、面や横面、小手への打突も含めて勝ったという記録が残されています(図)。
 当流の本旨はあくまでも、 「身體四肢無一所不斬突也」(身体四肢において、斬撃・打突しない部位は無い)なのです。

151020_柳剛流
▲岡田十内派師範家に伝わっていた、慶應年間の「試合帳」(原本は水害で損失とのこと)。トンボ絵状の人体図に、試合での打ち込み部位が記載されている。面に三打、横面に二打、右小手に一打、そして最多が右脚に四打となっている。小林雅助著『雑誌并見聞録』より


Q.「脛きりと柳剛流を結びつけているのは、単に時代小説のせいだったりとか・・・?」
A.そのようなことはありません。流祖岡田惣右衛門奇良自ら、「世の剣術家は皆、斬足之法があることを知らない。このため剣を学ぶ者は足を斬ることを恥としている。しかし戦場において脚を斬らないという理屈があるだろうか。脚を斬ってくることに備えなければならないのは明白であり、そこで私は斬足之法を創案したのである」(三重県多気郡、奉納額より)と語ったと伝えられています。


Q.「有名なのは柳剛流とか三話(ママ)無敵流だけど、案外と他には聞かないが・・・」
A.この疑問は多分、「脚斬りの業があるのは・・・」、というのが主語だと思うのですが、そうであれば当流以外にも脚を斬る業=形を伝えている古流はいくつもありますね。私の知っている限りでも、駒川改心流、直心影流、天然理心流、力信流、柳生心眼流などの形に、脚を斬る業が伝えられています。
 一方で、三和無敵流に脚斬りの業があるというのは、私は初耳でした。もしかしたらこの疑問は、脚斬りの話題ではないのかもしれませんね・・・・・・。


 また巷間、「脚斬りの弱点は、上段に隙ができること」と、よく言われます。

 これはまったくその通りなのですが、柳剛流がそういった弱点を持つ業である脚斬りを流派の真面目としている以上、当然、流祖はそのような弱点攻撃への対策を考案しており、それは業や口伝として現在まで伝えられています。

 それどころか、むしろ脚斬りで隙のできる頭部をあえて斬らせて勝つという勝口まで、業=形として伝えているのは、古流の奥深さの面目躍如といったところでしょう。

 当然ながら、こうした理合を実際に遣いこなすためには、たゆまぬ鍛錬が必要であることは言うまでもありません。


 また「相手が甲冑を着ている場合、脛当てがあるので柳剛流の脚斬りは遣えない」というような指摘も、一部にあるようです。

 これについても口伝のため、ここでは具体的な点は示しませんが、仮に相手が当世具足を着用していたとしても、当流の「断脚之術」は(理合上は)有効な業となります。

 (なお西洋甲冑に対しては、私は不勉強のため分かりません。あしからず)

 そもそも、上記に示した流祖の口承にみられるように、当流の「断脚之術」は戦場での運用を考えて編み出された業ですから、甲冑着用者に無効ということはないのです。

 ただし、これもまた当然ながら、そのような理合を実際に運用して甲冑武者の脚が斬れるかどうかは、個々の修行人のレベル次第であるというのは、これまた言うまでもないでしょう。


 (了)
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