手裏剣術指南の条件/(手裏剣術)
- 2016/07/05(Tue) -
 先日、稽古場で手裏剣を打っていたところ、通りすがりのおじさんが、「ちょっと見ていていいですか?」と声をかけてきた。

 見知らぬギャラリーに、しげしげと見られるのはいつものことなので、「どうぞ」と答えてしばらく稽古を続ける。

 ちょっと一息ついたところで、おじさんが話しかけてきた。

 「それは手裏剣ですか」
 (おお、なかなか分かっとるじゃないか!)
 「ええ、そうです」
 「意外に近くから投げるんですね」
 「・・・・・・」

 ちなみにこのとき、私は4間半(約8.1メートル)から直打で4寸的(約12センチ四方)を打っていたのだが・・・・・・。

 それでも素人さんには、「意外に近い」と思われちゃうのネ。

 なお参考までに、欧米の特殊部隊等でナイフ・スローイングの訓練をする場合、反転打か1回転打で、おおむね2間半(約4.5メートル)程度の距離でトレーニングすることが多いとか。

 重量剣を使って板金を打つ心(一打必倒の気概での打剣)で、間合4間半で4寸の的に直打で的中をまとめるのがどんだけ難しいか、できればこのおじさんに小1時間ほど膝突き合わせて話してみたいとも思ったが、芸の難しさを当事者が強調するというのも野暮な話しである。

 そして私も、もう天命を知る歳が間近なのだ。

 そこはにこやかに、「あはははは・・・・・・」と苦笑いして聞き流した次第。

160702_161513.jpg
▲4間半から板金を打つ心で5本を打ち、4寸的から2本を外す。
よっこらしょと「的に置きにいく」ような打剣と違い、一打で相手の
死命を制する気概で打ち込む、「板金を打つ心」では、この間合で
も全剣的中は難しい。我、いまだ未熟なり・・・



 ところで最近、某SNS(最近、このフレーズが多いような・・・)で、手裏剣の稽古会開催を呼びかけている人の記事を見た。

 そこでこの人の打剣の動画を見たのだけれど、なんか半間か1間の間合いから、まったり棒手裏剣を打っていて、ちょっと驚いてしまった。

 「本当は4~5間は通せるのだけれど、撮影の関係でこの間合になっている」、というのならよいのだけど、そうでないなら、ちょっとどうかと思うわけデス。

 ま、エンタメの一環として、受講生にニンジャ気分を楽しんでもらうというようなものであれば、いいのかもしれないけれども・・・・・・。


 私は翠月庵の開庵当初から、「武術としての手裏剣術の間合は2間半以内」と指摘している。

 一方で、手裏剣術指南の看板を掲げ、他人様に手裏剣術を教えるためには、まず打剣距離については、最低でも直打で5間は通せないと、「手裏剣術者」を名乗るには、みっともないのではなかろうか?

 さらに的中と威力に関しては、本ブログでもたびたび紹介しているように、錬士相当・目録(成瀬関次師著『臨戦刀術』より)という実力の目安である、板金を打つ心での打剣で、三間半強(的から10歩)から八寸的に六割以上の的中が必要条件と考えている。


 私のこれまでの、直打での最大間合は8間(約14.4メートル)である。

 といってもお恥ずかしいことに、これは長距離を通しやすい特殊な棒手裏剣を使い、しかも10本打って1~2本程度の刺中という、かなりお寒いレベルであったが・・・・・・。

 ちなみに以前、七間直打の動画を当庵のyoutubeのページで公開していたのだが、この間合での打剣にはあまり武術的な意味がなく、しかも我ながらたいしたレベルの打剣でもなかったため(確か5打中3打刺中であったか・・・)、今は取り下げて公開していない。

 なお現在、翠月庵での手裏剣術の稽古上の間合は最大5間としているので、今はもう8間直打は、10本打ってもたぶん1本も刺さらないのではないかと思う。なぜなら、長距離の打剣は、そのための専用の稽古をしなければならないからだ。

 また精度と威力に関しては、板金を打つ心での打剣で、なんとかぎりぎり「三間半強・八寸的に六割以上の的中」をクリアできるというレベルである。

 ゆえに、さすがに演武会などではそのような経験はないが、時には稽古中、3間5打で全剣失中ということもある。

 ことほどさように、手裏剣術とは、難しく厳しい「武芸」なのだ。

160611_152543.jpg
▲間合5間とは、だいたいこのような距離。しかもこの写真では、順体でかなり深く踏み込んでいるので、実際には間合い4間半弱といったところか(翠月庵門下筆頭・吉松章氏による打剣)


 とまあ、なんだか他人様の商売をクサすようであれだけれど、手裏剣術を表看板にしている者として、ちょっとひっかかったので、一言物申した次第。

 なお、当該の講習会主催の方が、しっかりとした手裏剣術の業前をお持ちなのであれば、ぜひ積極的に指導・普及を行っていただき、日本の伝統的な手裏剣術の魅力をより多くの人に伝えていただきたいと思う。

 そしてそのような場合、この記事は速やかに訂正し、失礼をお詫びする所存だ。

 しかしそうでないのなら、未熟な指導者が殺傷力のある武具を使った武技を初心者へ指南するというのは、安全上も、また武術・武道の倫理上も控えるべきであろう。

 (了)
スポンサーサイト
この記事のURL | 手裏剣術 | ▲ top
| メイン |