みちのく紀行~09初夏(その1)/(旅)
- 2009/05/24(Sun) -
■芭蕉も惹かれた憂いの美女を探して・・・
 (東京~新潟~酒田~秋田)


 「今回の青春18きっぷの旅の取材ですが、秋田から仙台まで、東北を一周してもらおうと思うんですが・・・」

 そんな編集者の誘いに、ここぞとばかりに乗ってしまった私。もちろん、こんなご時世で最近とんと取材仕事が減ってしまい、L.A.のMや新宿・渡辺探偵事務所のSもかくやというほど仕事に窮していることはおくびにも出さず、「ま、もう3年もやっている仕事ですからね。なかなかきつそうですが、引き受けましょう」と答える。

 私立探偵もライターも、やせ我慢が肝心だ・・・。


 誌面上のコースでは、初日、新宿23:10発のムーンライトえちごで新潟に向かうのだが、さみしいことに、日本でも貴重であった特急料金のかからないこの夜行列車も、今や夏休みなど休暇時期のみの臨時列車になってしまったので、やむなく上越新幹線で新潟へ。新幹線に乗ると、「これから仕事だよ~ん」というムードになってしまうので、旅のツールとしてはいささか興ざめなんだがね。

 新潟で前泊し、翌朝4:54新潟発の村上行きに乗車。村上で1度乗り継ぎ、羽越本線をひた走り、最初の目的地である山形県の酒田に到着したのは8:18。普段ならようやくベッドから起きだして、朝飯食いながら『とくダネ!』を見ているところだ。

 酒田では港の市場にある食堂でづけ丼を撮影。その後、市内の旧跡関係を3件ほど取材する。

 酒田といえば、今年のアカデミーで外国語映画賞を取った『おくりびと』のロケ地であり、街中にもロケ場所であることを示す案内板が数多く立っている。この町は、古くから庄内藩の経済の中心として、またみちのく最大の貿易港として栄えてきたということで、なんとなく町の風物も人々の雰囲気も、お武家さんチックというか、どことなく凛とした感じである。まあ、かなり色濃く、私の脳内で藤沢周平フィルターがかかっているせいもあるようだが。

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▲酒田を代表する名所・山居倉庫のケヤキ並木。なかなか旅情あふれる
風景である


 酒田から再び羽越本線を北上し、列車はほどなく秋田県に入る。

 次の目的地は、『奥の細道』で芭蕉が歩いたコースの北限に当たる象潟だ。海辺にある道の駅の取材で、駅には施設の方が向かえに来てくれていた。車で5分ほどで到着したこの道の駅は、日本海を一望する展望露天風呂が人気。さっそく大浴場で風呂、そして食事処で料理を撮影。その後、はれて風呂へはいる。いやいや、これこそ記者冥利というものである。なにしろ実際に入ってみないと、温泉の本当の良さは分かんないからねえ。

 なめると塩気のある琥珀色の湯は、海辺の温泉によくあるナトリウム-塩化物-強塩泉。塩辛いものの、肌ざわりは柔らかい。目の前には、視界いっぱいに広がる日本海。なんとも贅沢である。しかも、これで入浴料が1日500円というのだから、破壊的な良心価格だ。東京の銭湯なんか、今どき450円ですぜ。

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▲塩気のある湯は、肌に滑らか。そして目の前の日本海!


 入浴後は、最上階の展望室から、鳥海山とその麓に点在する九十九島を望む。芭蕉が訪れた当時は、松島のような多島湾だったそうだが、その後、大地震で海面が隆起し、現在は松をいただいたかつての島は丘となり、田んぼや畑に囲まれている。

 芭蕉はこの象潟の風景について、『奥の細道』で次のように記している。

 「松島の風景はまるで微笑むような明るさにあふれていたが、ここ象潟の風景は、どうしたわけかもの悲しい旅情を感じさせる。寂しさに悲しみを加えて、憂いにしずむ古代の美女のような風情といえよう(市村超訳)」

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▲羽越本線の車窓から眺める象潟の九十九島


 たしかに、ここ象潟に限らず、みちのくの旅路からは、どこかもの寂しい旅情を感じるのは、私の脳内に前述の藤沢周平&宮沢賢治フィルターがかかっているからなのだろう・・・。ちなみに、個人的な好みで、太宰フィルターは私にはかかっていない。

 オレは嫌いなんだ、太宰は・・・。

 象潟を後に、再び鈍行列車に乗って北へ進み、今晩の宿は秋田市。

 秋田美人と言われるくらいであり、また私の知り合いの数少ない秋田人女性は、実際にたいがい美人なので、駅から本日最後の取材先である郷土料理店に向かう道すがら、すれ違う地元の女性たちをしげしげと眺める。たしかに、酒田よりも美女が多いような多くないような・・・。ま、私のような“毒”身中年のおっさんからみれば、全国どこでもたいがいの町の妙齢の女性は美人に見えるので、基本的にあてにはなるまいとは自覚している。

 とりあえず、いつまでもじ~っと道行く女性を眺めているのも怪しいので、美女観察は早々に切り上げ、取材先へ。

 桶に山盛り魚介を入れ、これに焼けた石をぶち込んで一気に煮てしまうという豪快な石焼鍋を撮影&試食。会話が弾んで酒好きというのがご主人にばれてしまい、おみやげに秋田の地酒「飛良泉」をいただく。

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▲豪快な味わいの石焼桶鍋と秋田の銘酒


 宿の部屋に戻り、大浴場でホテル自慢の天然温泉と露天風呂を満喫。ここの湯も食塩泉系だ。ゆっくり温泉につかり、部屋に戻って先ほどいただいた酒の封を切り、杯を傾ける。なんとも淡麗で、しかし深みのある味わいだ。これで栗山千明チャン似の秋田美人のお酌でもあれば、もう今生に思い残すことはこれっぽっちもないのだが、そうではなく、しょっぱい中年の一人酒なのは、「ま、もちょっと苦労して生きなはれ」という天命なのであろう。

 人生は過酷だ・・・。

 さて、いよいよ明日は、憬れの五能線の旅である。

 (つづく)
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