みちのく紀行~09初夏(その2)/(旅)
- 2009/05/26(Tue) -
■オレの津軽はダザイじゃなくて、キタカタなんだよ・・・
(秋田~弘前~青森~盛岡~仙台~池袋)


 五能線のことを知ったのは、今から25年くらい前。北方謙三のエッセイを読んだのがきっかけだった。

 いまや歴史文学の巨匠として文壇の大御所となってしまった北方大先生だが、当時は遅咲きのハードボイルド作家であり、気安いエッセイ集なども出していた。その中で、同氏が若い頃に旅したローカル線として津軽を走る五能線の思い出が記されていたのだ。今となっては、どんな内容であったのかさえも忘れてしまったが、五能線という名前だけは、記憶に強く残ったまま、当時、高校生だった私も今年不惑を迎える。

 だから私の津軽は、太宰ではなく北方なのだ…。

 8:25、秋田駅発青森行きのリゾートしらかみ1号に乗り、まずは途中の不老不死温泉に向かう。リゾートしらかみは、大きく窓を取り展望ラウンジも備えた観光列車なのだが、ゴールデンウィークを過ぎた入梅前だけに、乗客は私も含めて3組ほどと閑散としている。

しらかみ
▲リゾートしらかみ1号 ブナ編成車両


展望デッキ
▲展望デッキ。こういうスペースに、なぜかココロ
がおどる


 秋田を定刻に発車し、田園地帯を進む列車は、東能代からいよいよ五能線に入る。世界遺産・白神山地の玄関口であるあきた白神駅から岩館を過ぎると、車窓の左手には波の飛沫がかかるかと思えるほど間近に日本海の風景が広がる。海岸線の風景の合間に現れる集落の様子もどこか寒々と荒涼としたものに見える。

車窓1
▲灰色の空の下、車窓に飛沫がかかりそうな海岸線を走る


 不老不死温泉の最寄り駅であるウェスパ椿山駅に着いたのは10時半。ここでは温泉と料理の撮影にたっぷり3時間がとってある。青森の不老不死温泉といえば、なんといっても波打ち際の露天風呂で有名だ。以前から、ぜひ一度、はいってみたいと思っていたところでもある。そこで、内湯や露天風呂を撮影したあと、昼食の撮影は12時からということなので、さっそく露天風呂につかってみた。

温泉
▲湯船のへりと海との距離は0cmの不老不死温泉露天風呂


 誇張抜きで湯船のヘリの向こうはすぐに磯。曇り空の下、強風に海水があおられてできる波の花が岩礁を彩る波打ち際、ぬるめの茶褐色の天然温泉に首までつかる。平日だけに、湯坪には私ひとり。時折、雨のぱらつく曇天の下、日本海の波しぶきがほてった頬に心地よい。まったく、これぞ海辺の秘湯である。

 昼からは食事処で料理を撮影。終了後、列車の時間までまだ40分ほどあるので、再び露天風呂でひと風呂浴びて英気を養う。

 13:24、リゾートしらかみ3号に乗り、再び弘前を目指す。途中、列車はビューポイントで徐行したり、景勝地・千畳敷では散策ができるよう10分間停車したりと、旅人向けの心づかいあふれるサービスがうれしい。

車窓2
▲日本海の絶景を車内から堪能できるのが、五
能線の魅力


 鯵ヶ沢駅を過ぎ、列車が日本海沿岸を離れ津軽平野に入ってゆく頃、先頭車両の展望デッキで津軽三味線の生演奏がはじまった。野太く乾いた津軽三味線の音色を聞きながら、車窓から田植えが始まったばかりの津軽平野を望む。土俗的な力を感じさせるじょんがらのメロディが、雨模様の田園風景によく似合う。

 列車が進むごとに、車窓の風景は田園から次第に街らしいものに変わり、ほどなく弘前に到着。ここで五能線の旅に別れを告げ、今度は奥羽本線で青森へ。宿に入る前に、駅前の郷土料理店でじゃっぱ汁を撮影。その後、ご相伴に預かり、ほろ酔い加減で宿へ戻り早々に消灯。


 翌朝、5時過ぎから営業している駅前の海鮮市場で撮影。市場で働く人からも折り紙付きという場内の食堂で、ウニ・イクラ・ホタテの三色丼を撮影し食べる。超絶的にうまい。

三色
▲市場で食べる海鮮は最高!


 青森から八戸までは東北本線。駅で、最近国宝になったばかりの合掌土偶のレプリカを撮影。駅ビルのみやげ店で、同じレプリカがケース入り8000円くらいで販売しており、買おうか買うまいかさんざん迷った挙句、荷物になるので涙を呑んで断念する。ネットで通販とかしてないのだろうか? 

DSC_2182.jpg
▲合掌してます。しかも三角座りで・・・

 さて八戸から盛岡までは、五能線とならんで一度は乗ってみたかったIGRいわて銀河鉄道の路線となる・・・が、編集上のコース設定で、この区間は新幹線に乗車。無念だ。しかし、25年越しで五能線を旅したように、いわて銀河鉄道も、いつの日か必ず旅する機会があるだろう。人生など、えてしてそういうもんだ。Vaya con dios! 

 盛岡から再び東北本線の各駅停車に乗り換え仙台へ。途中、花巻空港駅では、農協の建物の壁に、宮沢賢治の有名な写真が描かれていた。さすがイーハトーブ。「下ノ畑ニ居リマス」。岩手はいつか、時間をかけてじっくりと旅してみたいところだ。

 仙台の駅ビルで牛タン専門店の撮影。さらに駅弁を購入して、駅前の路上で撮影する。はたからみたら、なんとも怪しい姿であろうなあと思うのだが、もう15年もこんな仕事をしているだけに、羞恥心が麻痺しているのでどうとも思わない。そしてこの弁当撮影で、3泊4日の撮影・取材は終了。

 あとは練馬の自宅に帰るだけなのだが、編集部の要望と取材経費の関係で、ここからは取材でもないのに、各駅停車でノコノコ東京まで戻らねばならない。

 ま、ほんの6時間半ほど、列車に乗ってればいいだけなんだがね・・・。

 (おしまい)
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