三和無敵流和力の伝書を読む(その3)-柳剛流長刀と免許口伝に関する考察/(柳剛流)
- 2016/10/26(Wed) -
 これまで2回に渡り、三和無敵流和力の伝書を読みながら、同流と柳剛流の突杖や居合についての関連性について考察した。

 今回は一連の考察の最終回として、表題の通り長刀と免許の口伝について触れてみようと思う。


 柳剛流の長刀は、免許の階梯で伝授される当流の秘伝であり、流祖自ら、 

 「秘伝の長刀を伝授の上の者は、諸流剣術多しと雖も負くる事これ有るまじく候」

 と記しているものである。

 それでは流祖・岡田惣右衛門奇良は、どのような経緯で長刀を学び、それを基に柳剛流の秘伝たる長刀術を編み出したのだろうか? 

 その経緯については、文章はもちろん口伝・口承の類にも詳しくは伝えられていない。ただ、その形=術が伝えられているのみである。

 そこで突杖や居合と同様に、長刀においても三和無敵流の影響を考えたいのだが、残念なことに三和無敵流の薙刀表・裏合計26本は失伝しており、その実技を柳剛流長刀と比較することができない。

 また伝書に記されている形の名称を見ても、柳剛流との明らかな共通点を見出すことはできなかった。

1610_三和無敵流長刀
▲三和無敵流の伝書に記された、薙刀の形名


 この点について、今回、三和無敵流の伝書をはじめとした各種の史料を提供してくださった研究家のA氏は、

 「岡田惣右衛門が三和無敵流以外から長刀や杖・棒を学んだ形跡がないことから、柳剛流の長刀と突杖は、ほぼそのまま三和無敵流から継承されていると思われる」

 と指摘してれくた。

 これについては私もそのように思うのだが、なにしろ突杖や居合のように伝書の記述に両流の関係を感じさせる共通点があるというわけでもなく、実技も検証のしようがないので、確固たる根拠がないのが残念である。



 その上でもう1つ、今回、三和無敵流の伝書を読んで驚いたのは、柳剛流の免許伝書に記されている口伝とまったく同じ記述が三和無敵流にあり、しかもその口伝の内容が伝書に事細かに解説されているということであった。

 古流武術の多くには、口伝を伝授されなけれなまったく理解不能な言葉や図象がよく見られる。

 柳剛流においてもそれは同様であり、その1つに、

 「虚實品別縦屈伸」

 という、いささか謎めいた口伝がある。

1610_免許1
▲流祖直筆と伝えられる、石川家伝来の伝書(写し)に記された免許口伝 「虚實品別縦屈伸」


 この口伝は免許の伝授に際して授けられるもので、仙台藩角田伝柳剛流の免許伝書はもとより、岡田十内派の免許伝書、さらには現存する唯一の流祖直筆の伝書と言われる宮前華表太が石川良助に出した免許巻にもはっきりと記されている。

 一方で、岡田十内派と並んで武州随一の勢力を誇った岡安派の免許伝書には(私が見た限りでは)、この口伝は記されていないようだ。

1610_免許3
▲仙台藩角田伝柳剛流の免許伝書に記された「虚實品別縦屈伸」


1610_免許2
▲岡田十内派の免許伝書に記された「虚實品別縦屈伸」


 この口伝が、『三和無敵流諸術詳解巻』の「詳解口訣」という一節に記されており、しかもその内容がこと細かに解説されているのである。

 「虚實品別縦屈伸」の具体的な内容については、やはりこれも師伝のためあえて秘するが、それにしても柳剛流の免許口伝とまったく同じ文言が三和無敵流にあり、あまつさえそれについての詳しい解説が残されていたというのは、大変興味深いことであった。

 その経緯を常識的に考えれば、岡田惣右衛門は三和無敵流を学ぶ中で、その教えである 「虚實品別縦屈伸」という口伝に深く感じることがあり、それをそのまま自分が興した流儀である柳剛流の免許口伝としたのであろう。

 この事実ひとつをとっても、三和無敵流が柳剛流に極めて大きな影響を与えたことが分かる。

1610_三和無敵流諸術詳解
▲三和無敵流の伝書に記されている、「虚實品別縦屈伸」についての解説


 これもやはりA氏から寄贈していただいた、『盛岡藩 改定増補 古武道史』(米内包方著/昭和33年)を紐解くと、「各県に現存する諸流」として、宮城県には柳剛流・沼倉清八先生(登米伝)の名前があり、神奈川県には三和無敵流・鈴木時次郎師範の名前がある。

 それから58年が過ぎた平成の今、我が柳剛流はかろうじて命脈を保っているものの、その親流儀のひとつである三和無敵流は断絶してしまったというのは、重ね重ね残念である。
 
  
 ■引用・参考文献
  『幸手剣術古武道史』(辻淳/剣術流派調査研究会)
  『戸田剣術古武道史』(辻淳/剣術流派調査研究会)
  『増補・改訂 宮城県 角田地方と柳剛流剣術-日本剣道史に残る郷土の足跡-』(南部修哉)
  『日本剣道史 第十号 柳剛流研究(その1)』(森田栄)

 (了) 
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