礼法も、また楽し/(武術・武道)
- 2017/05/12(Fri) -
 時折、一般の人や現代武道をやっている人から、「古武道は、作法や礼法がやかましかったり、面倒そうでねえ・・・」という話しを聴くことがある。

 たしかに古流の武芸には、それぞれに独特の作法・礼法があり、様々な所作や立ち居振る舞いが定められている。

 しかし、それを「つまらない」、「面倒くさい」、「敷居が高い」と敬遠するのは、いささかもったいない。

 私が稽古している武芸でも仙台藩角田伝柳剛流をはじめ、八戸藩伝神道無念流、荒木流抜剣、柳生心眼流、甲陽水月流には、全てに異なる礼法が伝えられており、実技はもとよりそれぞれの礼法も習得しなければならない。

 たとえば柳剛流の礼法では、形を行ずる際に必ず袴の股立ちをとることが定式化されている。

 あるいは神道無念流では、帯刀する際に我が差料の鎺や鯉口を検分する所作が、刀礼に盛り込まれていたりもする。

 こうした各流派特有の礼法や所作、立ち居振る舞いには、それぞれの流祖や先人たちが込めた、武芸としての意味や社会的な意義があり、我々の知的好奇心を多いに刺激する。

 さらにそれを一歩進めて、礼法や作法、立ち居振る舞いを、武人としての行動学や処世の術へと昇華できれば最高であろう。


 礼法や所作を、単なる形式ではなく古人が伝えた活きた行動学として捉え、それを学ぶことで往時の社会や文化に想いを馳せる・・・・・・。

 それは古流を学ぶ者だけが知る、密かな楽しみであり喜びだ。

1705_柳剛流居合における礼法
▲柳剛流居合における刀礼

 (了)
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其殺伐の念慮を驀直端的に敵心へ透徹する/(武術・武道)
- 2017/05/10(Wed) -
 形稽古を中心とした武芸において、演武は何ものにも代えがたい貴重な「真剣勝負」の場のひとつだ。

 神前に奉納する、あるいは来賓や観衆に披露する己の形=業が、単なる手順を追った殺陣のごとき動作ではなく、活きた武技として見事に発露されているかどうかを、常に自省しなければならない。

 そのために、私がまず第一に心掛けているのは、

「夫剣術は敵を殺伐する事也。其殺伐の念慮を驀直端的に敵心へ透徹するを以て最用とすることぞ」(平山子龍『剣説』より)

 という心法だ。

 この「殺伐の念慮」を表に出せば「懸中待」であり、内に秘めれば「待中懸」となる。

 「懸」と「待」は、易における「乾」(陽)と「坤」(陰)のように、常に連環し、時に入り交り、また時には相反し、究極的には宇宙の根源たる太極を生み出す。これすなわち、武芸における「懸待一致」ということか。

 もっとも私ごとき凡俗は、未だ「懸待一致」などという境地にはほど遠く、非才なりに全身全霊を込めて形を打ち技を発して、ひたすら「殺伐の念慮を驀直端的に敵心へ透徹する」ことを志すのみである。



 少なくとも演武においては、それが「懸中待」であろうとあるいは「待中懸」でも、観る人に武技としての「威」を感じさせるような形=業が披露できるよう、心掛けていきたいと思う。

 (了)
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水月塾主催 第32回諏訪明神社奉納演武会/(武術・武道)
- 2017/05/06(Sat) -
 昨日、水月塾主催第32回諏訪明神社奉納演武会がとり行われた。

 私は前日から稽古のため現地入り。

 終日みっちりと稽古をし、夜は師行きつけの酒処で前夜祭を楽しむ。



 そして当日、まず拝殿で参拝を済ませた上で、定刻通り5月5日午後1時から、奉納演武がスタートした。

 警視流居合、神道無念流立居合、力信流居合、荒木流抜剣に続き、私は柳剛流居合を奉納。

 師の2尺7寸の居合刀をお借りして、「向一文字」、「右行」、「左行」、「後詰」、「切上」の5本を抜く。

1705_演武_柳剛流居合
▲柳剛流居合「右行」



 居合演武のトリは、小佐野淳先生による関口流抜刀である。

 その後は、組形の演武が続く。

 柔術澁川一流、力信流剣術、穴澤流薙刀、力信流棒術の後、いよいよ小佐野先生に打太刀を執っていただき、柳剛流剣術・長刀の演武である。

 まずは柳剛流剣術から、「右剣」と「左剣」を演武。

1705_演武_柳剛流剣術
▲柳剛流剣術「左剣」



 次いで、柳剛流の免許秘伝である長刀を奉納する。

 柳剛流長刀について、公開の場での演武は、柳剛流二百有余年の歴史の中でも初めての事であろう。

1705_柳剛流長刀2


1705_演武_柳剛流長刀
▲柳剛流長刀「右首巻」


 この後、演武全体のトリは、小佐野先生と関西支部長・山根章師範による天道流二刀小太刀の妙技で締めくくられた。



 つつがなく奉納演武を終えた後は、門下一同で師のご自宅にお邪魔し、秘蔵のワインの数々をいただきながら武術談義に花が咲く。

 その後さらに場所を移し、宴の楽しいひと時は夜まで続いた。

 充実した2日間であった。

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▲奉納演武終了後、打太刀をとっていただいた小佐野先生と記念撮影

 (了)
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4月の水月塾本部稽古~柳剛流、伝書講義、甲陽水月流柔術/(武術・武道)
- 2017/05/01(Mon) -
 4月、当初は2日に本部での稽古予定だったのだが、当日、体調を崩してしまい、残念ながら行くことができなかった。

 このため昨日、本部にお邪魔し午後からの稽古に参加する。

 まずは柳剛流。

 師に打太刀をとっていただき、剣術、長刀の稽古。次いで居合。抜付の拍子と位、受けや斬りの際のポイントなどをご指導いただく。



 休憩中は、恒例の伝書講義。

 今回は柳剛流の切紙と、宮本武蔵ゆかりの岡本流の伝書を拝見する。

1704_岡本流伝書1
▲岡本流の伝書と、師ご所有の十手、鉤縄、万力。いずれも貴重な、時代の物である



 三つ道具をはじめとした図解が興味深い。また、日本武芸では珍しい、手盾類についての記載も目を引く。伝書の一部を読むと、丸い手盾は、半弓や長道具などを持った籠り者を捕縛する際に用いるとある。

 なるほど、現在の警察や軍における、制圧時の盾やライオットシールドの運用のようなものか。

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▲岡本流の伝書では、各種の手盾についても図解されている



 稽古後半は、水月塾制定の日本柔術である、甲陽水月流柔術の稽古。

 初伝逆取の「七里引」、「横固」、「捩閻魔」、「引落」、「肘落」の5本を復習。

 本部門下で空手道有段者でもある米国人B氏を相手にしての柔術の稽古は、良い意味で気が抜けずやりがいがある。

 剣術や居合などと異なり、柔術は現代的な意味で護身術としての意義も高いだけに、こうした「稽古しがいのある手強い相手」と積極的に組んで、自分の業を磨いていきたいものだ。


 稽古後は、いつものように師に同道させていただき小宴。

 極上の馬モツとにごり酒で、今回はかなり酔ってしまい、千鳥足のまま武州への帰路に着いた。

 (了)
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平成29年度 苗木城武術演武会/(武術・武道)
- 2017/04/10(Mon) -
土曜

 朝からあいにくの雨。

 刀の柄が濡れないように養生し、荷物を担いで朝7時に家を出る。

 「青春18きっぷ」を使い、新宿から塩尻を経由して中津川へ。所要約8時間の各駅停車の旅なり。

 中津川駅で翠月庵のY氏・U氏と合流し、戸山流居合抜刀術美濃羽会中津川稽古会のO先生のご自宅へ向かう。

 本日は午後から、中津川稽古会の皆さんを対象とした恒例の手裏剣術講習会なのだが、こちらも天気は雨。しかもかなりの降りだ。

 講習はO先生のご自宅の庭が会場なので、せっかく皆さんに集まってもらったのに、残念ながら中止かなと思ったのだが、少しずつ雨が小降りになり、また皆さんがブルーシートなどで即席の天幕を張ってくれたこともあって、間合はたった1間半程度しかとれないのだが、せっかくなので講習を実施。

 長剣を使った基本の打剣の後、今回は刀法併用手裏剣術についても手ほどきを行う。

 一刻ほどの稽古の後は、O先生をはじめ中津川稽古会の皆さんと、我々翠月庵一同とで夕食。

 食事とともに、いつも通り武術談義に花が咲く。

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▲長剣を使った基本の打剣。指導は翠月庵筆頭の吉松章氏



 歓談中に電話があり、今日の昼に父が他界したとのこと。

 とはいえ、私が12歳のときに離別して以来、親として担うべき責任を放棄して勝手気ままに生きてきた人なので、人並な悲しみはあまりない。

 ただ、最後は親族のだれにも看取られることなく、施設でひとり死を迎えたという父が、今際の際に己の人生をどう総括したのか、いずれ私が三途の川を渡った後、機会があれば尋ねてみたいと思う。

 野辺の送りその他、もろもろのよしなし事は親族に任せ、私は明日の演武に専念する、ただそれだけだ。


日曜

 残念ながら今日も雨。

 演武の会場は屋根付きの野外ステージなので雨でも中止になることはないのだが、見学者は少なくなってしまうだろう。

 O先生宅で朝食をいただき、最寄りの体育館で1時間ほど稽古。演武内容を確認する。

 その後会場に移動し、10時から苗木城桜まつり武術演武会の開始である。

 今年は、中津川稽古会の皆さんの演武からスタート。

 基本の組太刀から精緻な試斬、小太刀や鑓の演武など、普段のたゆまぬ稽古の成果を感じさせる、見事で安定した演武であった。

 そしていよいよ、我が翠月庵の演武である。

 まずはY氏、そして私による手裏剣の3間直打。

 そして刀法併用手裏剣術。Y氏は「右敵」の形の変化、私は「前後敵」の形を行う。

 続いて、柳剛流の演武。

 まずは仕太刀・U氏、打太刀・私による柳剛流剣術。「右剣」、「左剣」、「無心剣」、「中合剣」、「相合剣」を行う。

 次に、仕杖・Y氏、打太刀・私による柳剛流突杖。「ハジキ」、「ハズシ」、「右留」、「左留」、「抜留」を披露。

 最後はU氏による柳剛流居合。「向一文字」、「右行」、「左行」、「後詰」、「切上」の5本を抜く。

 こうして、我々の演武は終了した。

 今回、翠月庵/国際水月塾武術協会埼玉支部としては、初めての柳剛流の演武であったが、各人が十分な手ごたえと課題を感じることのできた、貴重な体験となった。

 私は手裏剣術以外、今回は柳剛流の指導と打太刀に徹したのだが、Y氏、U氏ともに、気迫のこもった柳剛流の業前を披露してくれたことを、たいへんうれしく思う。

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▲演武終了後、戸山流居合抜刀術中津川稽古会の皆さんと翠月庵一同で記念撮影



 演武終了後は、昼前に解散。

 Y氏とU氏は車で帰京。私はふたたび列車に乗り込み、8時間各駅停車の旅である。

 塩尻で乗り継ぎの合間、キヨスクで買った安ワインで、鬼籍に入った父に献杯した。

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 (了)
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