ポストアポカリプスの大叙事詩/(書評)
- 2015/06/04(Thu) -
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 スティーブン・キングの小説の中でも、もっとも好きな作品がこの『ザ・スタンド』だ。

 分厚い文庫で全5巻という大叙事詩ながら、毎年1回は読み直している。そしてまたここ数日、いろいろと忙しい生業の合間や、寝る前のベッドの上で読み返しはじめてしまい、止まらない(笑)。

 この物語は、一見、キリスト教的な善悪の二元論のようでいて、実は人はだれでも善の側から悪の側へ魅入られる可能性を持ち、あるいは悪をなしながら結果として善をなすこともあるといった、人生の矛盾や多面性をいきいきと、そして詳細に描いていて興味が尽きない。

 私自身、いつ何時、「闇の男(ウォーキング・デュード)」に魅入られるか分からない、いやすでに魅入られてしまっている哀れな存在なのかもしれない・・・。

 ハロルドの魂が、神に祝福されますように。

 (おしまい)
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『不良少女と呼ばれて』/(書評)
- 2015/05/27(Wed) -
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 以前から読んでみたかったこの本、ヤフオクで落札して読了。

 それにしても、なんでこの原作内容で、「あのドラマ」になるのかが実に不思議である(笑)。作者は、あのドラマを見て「私は、こんな怖ろしいことはしていないのに・・・」と、かなりショックを受けていたという。

 本書には、戦後の混乱期をたくましく生き抜いた少女の心の葛藤が、丁寧にわかりやすく、そして素直に書かれていて好ましい。

 また、舞楽という伝統芸能に出会い、それを極め、普及してゆく姿は、日本武術という伝統芸を嗜む者として、感動的に読むことができた。特に、東京まで出てきて師につき、働きながら舞を覚えるという場面は、同じような経験をしてきた者として、とても共感ができるものだった。

 作者は数年前にお亡くなりになったということだが、今も彼女が受けつぎ、守り、育ててきた舞楽は、後進に受けつがれているという。機会があれば、ぜひ観てみたいと思う。

 (了)
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『逝きし世の面影』/(書評)
- 2015/01/05(Mon) -
 なんとなく体調不良のまま年末年始が過ぎ、週末からすでに仕事始め。今日は午後から、霞ヶ関でインタビューである。

 そんなこんなで、今年の正月は例年に比べると映画も数えるほどしか見ず、酒もあまり飲まず、淡々と時が過ぎた。ま、そんな年もあろう・・・。


 年末年始にじっくり読もうと買っておいた『逝きし世の面影』(渡辺京三著/平凡社ライブラリー)は、新年早々たいへん興味深い読書体験となった。

 武芸をたしなむ者であれば、『剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む 』(永井義男著/朝日選書) と合せて読むと、江戸時代という"特異で幸福な時代”が、たいへん豊かにイメージできるだろう。

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▲「私にとって重要なのは在りし日のこの国の文明が、人間の生存をできうる限り気持のよいものにしようとする合意とそれにもとづく工夫によって成り立っていたという事実だ」。近代に物された、異邦人によるあまたの文献を渉猟し、それからの日本が失ってきたものの意味を根底から問うた大冊。1999年度和辻哲郎文化賞受賞。(以上、アマゾンより引用)

 (了)
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夏休みの図書-『世界の謎と恐怖』/(書評)
- 2014/08/01(Fri) -
 夏になると必ず思い出すのは、小学校3年の夏休みに修善寺駅前にあるN倉書店二階の児童書籍売り場で買った、『世界の謎と恐怖』という本だ・・・。


 当時、昭和50年代前半というのは、昭和40年代後半に始まり、結果として後のオウム事件にまでつながるオカルトブームの真っ只中であった。

 夏休みともなれば、子供たちは「あなたの知らない世界」の再現ドラマに震え上がり、「ルックルクこんにちは」(だったと思う・・・)のオカルト特集で、人間の生き血で描かれた掛け軸の首の絵の目が開く事件に大騒ぎとなった。

 夜になれば、CXの時代劇スペシャルでは怪談系時代劇が毎週放映され、あるいはまだ人間国宝になる前の一龍斎貞水先生の語る「真景累ケ淵」を涙目になりながら聞いたものである。

 そんなオカルトブーム全盛期に読んだ本が、『世界の謎と恐怖』であった。

 あれから幾年月。

 ネッシーもモケーレ・ムベンベも、月の人面岩も人体自然発火も、お岩さんの呪いもノストラダムスの大予言も、みんなガセだと知ってしまい、かつての夢いっぱいの少年は、世の中を斜めに見る、限りなく唯物論者に近い不可知論者の大人になってしまった。

 そこで、少し童心を折り戻そうと、37年ぶりに『世界の謎と恐怖』を買ってみた。

 ちょっと前までは、こうしたニッチな古書は、神田・神保町あたりで気合を入れて探さないと見つからないものだったが、いまやネットの「日本の古本屋」で検索をかければ、1秒もかからずに販売書店がずらっと示され、キーボードをぽちっとするだけで、2~3日後には料金代引きで古書が手元に届くのである。

 便利な時代になったもんだねえ・・・。

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▲この表紙! あまりにも鮮明に記憶に刻まれていたものだ。忍び寄る自縛霊!? そして恐怖の地底人! ああ、昭和だなあ・・・


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▲本書収載のエピソードの中で、当時の私が最も好きだった「悪魔のおどる島」のイラスト。地底人に遭遇した探検家の図


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▲1968(昭和43)年の初版発行から4年で14刷というのだから、かなり売れたんだねえ。なにより、筆者はあの伝説の空手家・真樹日佐夫先生であることに注目!


 この本を開いて、呪いのダイヤや踊る棺おけ、ツタンカーメンの呪いやアマゾンの大蛇の話に胸躍らせていたのは、もう40年近く前のことだ。

 古書特有のしみ臭い匂いが、不思議に懐かしい。昭和は遠くなりにけり・・・。

 (おしまい)
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タイトルに先入観を持たず、武術・武道人にこそ読んでほしい好著 /(書評)
- 2014/06/17(Tue) -
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▲「この「ケンカ術」がすごい! あっさりと勝つ法則10 」(林 悦道著/ BUDO-RA BOOKS)


 タイトルがあまりにもあからさまなので、「ゴシップ系喧嘩自慢本かな・・・」と斜に構えて数ページ目を通したところ、そんな予断がたいへん失礼だったことに襟を正した。

 著者である林師範の指南する「喧嘩術」は、ようするに古流柔術や空手道などの護身(実践)技法であり、そこにはハッタリやケレンはなにもない。純粋に実践で培った「術」が、明快に、そしてきわめて論理的に解説されている。

 本書は武術・武道経験のない一般の人よりも、むしろ現代武道の有段者や古流の目録程度以上の者が読むことで、自流の技や術の「現代的展開」に蒙を開かれ、多いに参考となるであろう。

 なにより「喧嘩術」という好戦的な言葉とは裏腹に、林師はできるだけ争いは避けるべきであることを指摘、そして戦いの回避のために、あるいはそれができない場合に先制主導を取るために、「心法」について非常に分かりやすく解説しているのにも好感がもてた。

 また、「声(気合)の武器化」について林師は本書内で1節を割いて解説されているが、私自身も門下には普段から、「声の武器化」について特に留意して指導してることから、多いに納得できた。

 技術的に見ても、流儀・会派を問わず、伝統派空手道の形の分解や柔術形の応用・解釈に、たいへん参考になる技術解説が多い、学びの多い一冊である。

 定価2300円+税を払う価値は十分にある一冊だ。

 ただし、武術的にきわめて良質な内容に対して、本書のタイトルがあまりにケレン味が強すぎることが残念である。

 もっとも、だからこそ私も本書を手に取ったのだが・・・(苦笑)。

 (了)
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